Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 25
Anselmi-Recioto dei Capitelli 1985 その2
今回で25話目。Anselmiの続き。
彼の一番の目的は、彼が考え得る最高のSoaveを造りつつ、その時代に蔓延していたガブ飲み安Soaveのイメージを業界全体で払拭する事でした。あくまでもReciotoは副産物に過ぎなかったのですが、その見事な出来栄えに驚いたVini d’Italiaのテイスターや我々がこぞって彼のReciotoを称えたというのが事実です。I Capitelliの受けの良さに驚きながらも満更ではなかった彼は、いよいよSoaveの質向上に燃え(結果Soave組合を脱退しましたが)01以降のCapitel CroceでTreBicchieriを連発する様になります。
Recioto dei Capitelli1985~1990
そんな彼がまだSoaveを名乗り啓蒙していた頃の作品です。エティケッタは黒。Ga100。ベースの葡萄には良質なFoscarinoをたっぷり使います。何より彼自身がSoaveのイメージ向上に燃えさかっていた頃のRecioto。バリックも導入し、酸の効かせ方、複雑さ、濃すぎず薄すぎずの割合を模索している最中ですが、美味いに決まっているじゃないですか。そんなI Capitelliが他の甘口ワインと大きく違うのは、
『常に良質な辛口Soaveの延長線上にこのReciotoがある。つまり、甘口ワイン用の別仕込みではなく、更に甘口ワイン用の葡萄品種を使用した仕込みではない。収量がごくわずか』
『Passitoに更に12月の貴腐菌が加わり、両方が作用する。単なる陰干しや遅摘みではないので、貴腐菌がもたらす複雑さが増している』
『225L樽で熟成期間が10カ月のみ。50L等の小容量樽による2年以上の長熟仕込みではないので、活き活きとした酸がたっぷり残っている』
この三つです。
上記がもたらす総合的な効果は『複雑な味わいながらも酸が残る』事。つまり、Ramandolo, Picolit, AlbanaR, Vsanto, MalvasiaL, MoscatoPPが持ち得ない性質、また同じヴェネトで比べるならばDindarelloとTorcolatoとAcininobili全てを足して三で割った様な性質を持っている事です。
85:最高の天候。
86:まずます。
87:他地方では天候に悩まされたがVenetoには貴腐菌が来襲。
88:85に迫る良年。
89:天候不良、貴腐菌来るも弱い菌力。
90:85, 88に迫る良年。
ここで黎明期のVini d’Italiaにありがち、但し採点を売り物とする出版社ではあってはならないエラーが起こります。Vini d’Italia92と93のAnselmiワイン解説内容が同一、しかも手厳しい内容の解説を二度掲載したという事件が発覚しました(私も両文章の同一を確認しています)。彼は92,93の解説使いまわし(Vini d’Italia側はシステムエラーと主張している)に関しては不問に処し、Vini d’Italia側は彼へ謝罪と説明の食事を行った上で、そのエラーが彼の会社業績にダメージを及ぼさなかったと発表しています(Vini d’Italia94の冒頭で釈明しています)。彼は、もしVini d’Italiaの解説が業績に影響を及ぼしたとしても、それよりも大事なミッションだったのは安売りSoaveイメージの払拭であり、Vini d’ItalaとGambero RossoマガジンはSoaveの地位向上の為に必要な存在であると擁護しました。 Anselmi商品への絶対的な自信の元、Vini d’Italiaの明らかなミスを笑顔で許した彼を、私は本当に尊敬しています。
彼がSoaveの反逆児?いいえ、彼こそがSoaveのモラリストだったのです。
政府やSoave組合が正しい判断を行い、態度を改め、彼と和解した上で業界全体を向上していく日が来る事を望んで止みません。そしてこれからも更に美味いReciotoを生産し続けてくれますように。
次回へ