イェルマン:ヴィンテージ トゥニーナ 1986 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 23

 

Vinnaioli Jermann-Vintage Tunina 1986 その2

Vini d’Italia88のTreBicchieri受賞ワインにちなんで書いてます。今回で23話目。Jermann。その2

 

 前回も書きましたが、Jermannの魅力は自由闊達な事です。葡各品種や%を公表しないのは、その束縛から逃れたい為でしょう。『こちとら承知でVdTやIGTで造っているのだから、自由にさせろや』との声が聞こえてくるようです。葡萄品種名明記のワインは真面目な造りですが、彼が言うところの『イマジネーションのネーミング』ワインは自由気ままな造り。なので、品種の解明やキャラクターの固定を求める事は無意味な行為なのです。それを承知でJermannに翻弄されるのが一番良い付き合い方だと思います。

 

 Vintage Tunina1986~1990

スタイルは一貫。年毎によりSB,Ch,RG,MIの%は変わるが、Jermann独特の感覚で毎年微妙に調合されている。いわゆるボルドー赤の構成。薫りは華やかで果実香溢れる。SBの青っぽさ、Chの中庸、RGとMIの華やかさ、更にパイナップル等の熟れた果実や蜂蜜が入り乱れる。リリース当初から単純に親しみやすく、果実の爽快感・凝縮感と骨格の力強さが好ましい。2~3年はChの味覚が強いので人によってはChの含有率が高いと思うのでは。だが、5年目位からSBの青さが落ち着き、Chのキャラが消え、RGとPicolitのキャラが前に出る。つまり86~90のスタイル共通項はPicolit。わずかだが必ず含まれていて、若い時はSB,Chの後ろに隠れるが、落ち着いた頃からRGとPicolitが前に出てくる。薫りに熟成した果実や蜂蜜香を感じ、味の大半を甘さが支配するのはそのせい。白ワインの味覚で長寿なのは(貴腐やVsantoの様に)甘味。熟成したVintage Tuninaは圧倒的に甘い。SBの爽快感とChの骨格が落ち着いてからが、本領発揮。リリース直後と熟成後の劇的な味変の理由がこれ。年毎による各品種の%違いと経年変化による味変。だから(葡萄品種別のワインリストを造り、構成%を知りたがる)私の様なソムリエは困惑する。

 

 栽培方法?グイヨー・カップッチーナ、6000-7000本、resaが4000 – 6000kg。当然フィールドブレンド。

 マロ?彼の気分次第でやったりやらなかったりでしょう。葡萄別でもばらばらかも。

但し上記の事、あまり彼は気にかけていないと思います。でもそれがVintage Tuninaの魅力。

 

 Jermann。まさしくセンスの塊ですね。どうかその独特の感覚を、後世に受け継いで下さい。

 

 彼の言葉としてぴったりだ。

『Don’t think! Feel!』

 そのうち、そんな名前のワインでも造るのでは。

 

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