TU FUI, EGO ERIS.(3/10加筆)
サナの唱えた破滅の魔法によって、土地、住民の大半が失われたリースロット大陸。
”強制瞬間移動術”を使ったのは”バコスタ島”に住むジュノー。
審問を受けるため飛ばされたサナ。
全員を一箇所に集結させるべく、行使された高レベルな”転移術”は、結果、サムソンやリリスたちも救ったことになる。
サナが”バコスタ島”にいるため、ロバート(アダム)に人間の体を借り受けた猫のゴルドも、やはり島へと飛んでいた。
彼女は今、ウィルソンの判断から、バコスタ島の中でも、さらに異なる次元にいる。正確には封じ込まれている。
だがそんなものでサナの力は制御できない。
魔法を行使することでウィルソンへ宣戦布告したといってもいい。
(私はまた失敗をした)
ウィルソンは、サナとその答えのひとつひとつを書き記すための書記係のみを特殊な空間において話を進めていたつもりが、かえってサナに最悪の決断をさせてしまった。
「そこの書記の人、あなたのほうが冷静ね。いいことよ。あなたの使命は”恐怖すること”ではなくわたしの言葉をひとつ残らず記録すること」
書記係はその言葉さえも無言で記録する。
冷えた空気に包まれた空間に、羊皮紙にペンを走らせる音だけが、ただ響いて。
「いつまで頭抱えてるのよ、ウィルソン。あの人魚、覚えてる? あなたがジュノーに復讐されて、老いぼれた姿で半永久的に生きなければならなくなった・・・・」
「やめてくれ!」
「人魚のなかにはわたしのお友達がいるの。だから、どちらにせよこの島にはくる予定だった。あとは・・・・トンネルか。ミザリーの魂ね・・・」
「こんなことが・・・・」
ウィルソンはうなだれた。どうにも、何も考えつかない。思考は止まる。
止まってしまった。
数千を超えるリースロットの民の生命活動もまた、止まったのだろう。
破滅の魔法”TU FUI, EGO ERIS. (トゥー フィー,エゴ エリス)”は、リースロットを破壊するものであり、大陸に属さない”バコスタ島”では無効だった。
それでもいい。
サナの目的はもはやリースロットを新世界に生まれ変わらせることである。
リースロットに唯一残った統治者ミリアムは、魔法を求め、助けを求め・・・・そうやって集まってくるであろう民を石の遺跡で待ち続ける。
その手には、必ず狙う者が現れるであろう”魔術書”をもって。
全員が旧リースロット、新世界となるリースロット、ロバートのすべての想いを宿したままのバコスタ(レグレサス)島、さらに冥界さえも巻き込んでの戦いに直面しなければならない。
魔女じゃない、ただの女として叫ぶわ
昨日食べたスペアリブは最高だったわ
ジャズ、ロック、ラテン、Jポップなんでもありの お気に入りのお店よ
ジントニックは濃いめで頼む
二杯目からは ウェイターをしているミックスの男の子が
「ちょっと強いですか? でもブルッハならOK?」
「It's OK!」
こんな感じよ
そりゃあ わたしだって動物が好き
毛皮なんて寒いならフェイクファーで十分 そんなだわ
ベジタリアンが見ればリブなんて アルコールなんて・・・・・・
あら わたし悪いことした?
今日という日を楽しんで生きるわたしよ
肉も魚も 必要以上とってはならない
そう思う 信じないでしょうけど
食べた時点でアウトというあなたは
一体何様よ?
なら レストランにこないでよね
今日という日に乾杯してるの
ソウルメイトと”SALUD!”て言ってるの
幸せな時間を壊すなら あんたが店を出ることね
わたしは社会のモラルを守って生きているわ 間違っていると言うなら
こそこそしてないで
堂々と真正面からわたしに言ってよね
わたしにとってのことを言うわ しっかり聴いて わたしにとって、よ
人間は食べなけりゃ生きていけない 大事なのは必要以上とらないこと 決して無駄にしないこと
最低限のモラルを守って生きている
なにかあなたに悪いことしました?
してないわね
二度とこない今日って日に
毎日心の底から"SALUD!!!!!!!!"って叫んでるのさ
この生き方って最高なの
いつ死ぬか・・・・なんていってる輩のほうが
覚悟がないって そう思うわ
適度な食事 たまには羽目を外してアルコール
これって人生のスパイス
わたしにとって、ね♪
REAL FIGHTERS (Epilogue)
闘技場は全壊は免れたものの、破損がひどく立ち入りは禁じられている。
いつ崩れてもおかしくない状態だ。
「知っているか? ここで武術家の男と女が闘ったんだってさ」
「男に対して女かよ? 嘘だろ?」
噂を聞きつけた者たちの会話は大体がこんな感じになる。
誰もその場所には近づかない。
話題に出される男女の闘いのあと、興味本位で闘技場に忍び込んだ男がいたのだが。
数日間、行方がわからなくなり、身内が恐る恐る闘技場に入っていくと。
そこに。
家族の許に帰ることのない男の死体が転がっていた。
闘いに敗れた女が身に着けていたという拳法着。そこには蝶の刺繍があったという。
そしてそれとまったく同じ蝶が、実体化して宙を舞ったということまでは”噂話”にあったのだが。
哀れな男の家族はその恐怖を視覚で味わった。
たった一匹の蝶が、男の心臓を貫いて、亡骸と化した男の横で息絶えていた。
倒された女は対戦相手に心臓部を貫かれて倒れたというが。
ただの好奇心で、人と人とが命と誇りを懸けた闘いの場を踏み汚したことへの報いだといって。
その男の死に、同情する者はいなかった。
闘技場は、いつ崩れるとも知れない危うさを抱えたままそこにある。
女は間違いなくそこで死に、魂は蝶と共に天に昇ったといわれる。
「消えたかったんだってさ」
そうやって会話は打ち切られる。
女の亡骸はどこを探しても見当たらず、むしろ再び蘇り、リースロットに生きる者たちすべてを消滅させる魔法を唱えるべく、力を蓄えているのだ。
そんな伝説が残った。






