真説ミリアムの魔術書・武術家たちの誇り (THE REAL FIGHTERS)  -33ページ目

時代を求めて:Cyber Commander


この時代は、わたしの記憶にない。


どこにいるのかもわからない。ただ軍隊であるらしいということ、西暦は2020年で終ったということも知った。


セッシュウは、もう少し休息が必要ということで、ボスはもう何も教えてくれない。


わたしはいつ生まれたのかしら?


荷物はスポーツタイプのショルダーバッグだけだったけども。


プライベートルームに戻り、バッグの中身を再確認した。


私服が2組、下着は1週間分くらいか。予備に、と入れたのかしら? 履物はヒールの高いサンダル。あとは化粧品とかタオルであったり・・・。旅行にでも行くんだったの?


携帯タイプのオーディオ。わたしは”i Pod”というものになじめなくて、結局CDをケースに入れて持ち歩いて、その頃”CDウォークマン”なんて呼ばれていた音楽再生機でいろいろ聴いていたな。


本は・・・ないわね。妙だわ。わたしが一冊も本を持ち歩かないなんて。

どんな軽い外出のときだって何かもって出たものよ。


ハードカバーのやや厚みのあるノートは日記帳。あとはメモ帳。


・・・・・・・・・・。


薄ぼんやりと、あの頃を回想している自分がいる。


何時何処で、何がわたしにあった。

そこまではわからない。


でもこうして私物を改めて確認すると、当たり前のように戻る感覚がある。


音楽、日記。


これは大きいかもしれない。


セッシュウはもう少しで復帰できそうだというから、彼にも聴いてみよう。



”戦闘カプセル”か。


今の時代は、どうも精神戦の時代らしい。

らしい、っていうことは、もともとわたしはこの時代の人間ではなかったのかもしれない。


タイムトリップ? 馬鹿みたい。


・・・・・セッシュウはわたしと年齢も近そうだった。


話してみたいな。


西暦が2020年に終ったのなら、今はいつ?



マリスが見落とした私物には2006年付けの手帳があった。


彼女がこの手帳を確認するのはあともう少し先。



急げ魔女


不思議な夢をよく見る。


寿命や生き方やしなければならないこと。


あと5,6年か。こんなに体は健康なのに。


神様がいるなら、もしわたしの寿命がそんなものなら、この健康な体を病気で苦しんでるような人にあげてくださいね。


それぐらい聞いてくださいよ。


母親を大切に。それから日本にいられる時間がどんどん少なくなるんでしたね。


帰国したら、わたしは次はどこに行くのかしら。


アマチュアでも読んで「面白いよ」って言ってくれる人がいたらずっと書くことはしますね。


でもやりたいことがたくさんあるんです。


5,6年で駆け抜けましょう。



魔女の言葉・・・いくつめかな


”詩”というのは狙って書くのもでもないです。


気がついたら言葉や文字が意識に浮かんでくるんですね。


その瞬間を捕まえて書き記して、人の心を動かすことができたら最高。


それが幸せなわたしはやっぱり幸せ者。


自分で自分を幸せになんて、思考をちょっと変えるだけでいくらでもできるのね。



精神同士の闘い:Cyber Commander


セッシュウ他、ここでの負傷者というか死亡者は、外傷を負っていない。


転がされている寝台で、目を見開いてただ天井だけ眺めて・・・ん・・・・睨んでるのかな。そんな感じだわ。


「頭、イッちゃってる?」

声に出してしまった。

最近こういうの多いな、わたし。


何より失礼よね。戦闘に行ってこうなったんだから。


ボス、怪我はしていないのですか? この方たち、精神は危なくなってるみたいですけど、なんか「闘った」というのがないわ。


「仕方あるまい。お前はここにきて一ヶ月だからまだ知らんだけだ。我々は昔の人間が憧れていたような、戦闘機に乗って出て行くなんて戦闘はしないんだよ。そう思っていたのか?」


「・・・思っていました」


驚いた。だって軍隊でしょう。

もう訳がわからない世界ね。


ここに収監されている人たちには、そう、外傷がない。でも精神は明らかに崩壊している。なんだかここにいることも怖い。

・・・・申し訳ないんだけどさ・・・・。


「ではジムで鍛える必要があるというのは?」


寝かされている人たち、どうやって闘ったのかは知らないけど、そうね体格はかなりいいわ。


「精神の世界に飛び込み、そこで自分の持っている心理上のデータや、運動能力や体力データをメモリーチップに入れて”戦闘カプセル”に入る。だから常に体も精神面も鍛えておく必要がある」


ボスは冷静。わたしは・・・・・。



”戦闘カプセル”? 何? わたしもそれにいずれ入るの?


「お前はセッシュウの代わりになる可能性がもともと高かった。同じアジアンだから、波長が合うと思ってな。女性たちは、ここではどういう戦闘がなされているのかを知らないのが多い。知る必要がないと教え込んでいるから」


「知らなければ幸せだったかもしれないけど、なんか他の女性たちと合わないのがわかった気がします。かわいい子、て思われたいから、仕事と割り切って本当のことを知ろうとしないこと」


「手厳しいがその通りかもな」


ボスは初めて笑ったような気がする。



セッシュウは一番奥の寝台でぴくりとも動かなかった。

まだ生きてはいるらしい。


たしかに彼はアジアンだわ。


でも・・・それがなんだってのかしら。いざ会うとそうなってしまう。


今、セッシュウの目が開いた。



リカバリが済んだようだな。お前の場合は新しいOSのインストールが必要だったけどな」

ボスが言った。

本当の始まり:Cyber Commander


「”面会謝絶”のカードを無視したのはマリスか?」


わたしはセッシュウに会うことに失敗し、まあボスに叱られてる。だからなんだってのよ。


なんだろ、何かにつけて投げやりになるこの気持ち、て?



さらにわたしは反抗する。


「マリスじゃなくて”MARIS.?”ですわ」

胸のネームプレートを、乱暴な仕草で指してみせた。そうよ、自分が誰かもわからないの。


「トレーニングは?」


「そりゃもう毎日。腕も足もパンパンです。御覧になりますか?」


「こなしてるなら構わんから・・・」

呆れと困惑と。

上官をからかうのはなかなか楽しいわ。


そうでもせにゃほんと、ほんっとやってられない。

いつ捨て駒にされるかもしれないんだからね。


・・・・ボス、あんただってそうでしょうが。


セッシュウってどこですか? わたしと同じアジアンなんでしょう?

それぐらい許可してください。


そう言ったら・・・・。


「もう事務仕事には戻れない覚悟なら・・・会わせてやる」


ボスは冷静だけど、哀れむような目をしてる。


でもさ?


だから、何?


こっちはいつまで”MARIS.?”でいろって話よ!