時代を求めて:Cyber Commander
この時代は、わたしの記憶にない。
どこにいるのかもわからない。ただ軍隊であるらしいということ、西暦は2020年で終ったということも知った。
セッシュウは、もう少し休息が必要ということで、ボスはもう何も教えてくれない。
わたしはいつ生まれたのかしら?
荷物はスポーツタイプのショルダーバッグだけだったけども。
プライベートルームに戻り、バッグの中身を再確認した。
私服が2組、下着は1週間分くらいか。予備に、と入れたのかしら? 履物はヒールの高いサンダル。あとは化粧品とかタオルであったり・・・。旅行にでも行くんだったの?
携帯タイプのオーディオ。わたしは”i Pod”というものになじめなくて、結局CDをケースに入れて持ち歩いて、その頃”CDウォークマン”なんて呼ばれていた音楽再生機でいろいろ聴いていたな。
本は・・・ないわね。妙だわ。わたしが一冊も本を持ち歩かないなんて。
どんな軽い外出のときだって何かもって出たものよ。
ハードカバーのやや厚みのあるノートは日記帳。あとはメモ帳。
・・・・・・・・・・。
薄ぼんやりと、あの頃を回想している自分がいる。
何時何処で、何がわたしにあった。
そこまではわからない。
でもこうして私物を改めて確認すると、当たり前のように戻る感覚がある。
音楽、日記。
これは大きいかもしれない。
セッシュウはもう少しで復帰できそうだというから、彼にも聴いてみよう。
”戦闘カプセル”か。
今の時代は、どうも精神戦の時代らしい。
らしい、っていうことは、もともとわたしはこの時代の人間ではなかったのかもしれない。
タイムトリップ? 馬鹿みたい。
・・・・・セッシュウはわたしと年齢も近そうだった。
話してみたいな。
西暦が2020年に終ったのなら、今はいつ?
マリスが見落とした私物には2006年付けの手帳があった。
彼女がこの手帳を確認するのはあともう少し先。
急げ魔女
不思議な夢をよく見る。
寿命や生き方やしなければならないこと。
あと5,6年か。こんなに体は健康なのに。
神様がいるなら、もしわたしの寿命がそんなものなら、この健康な体を病気で苦しんでるような人にあげてくださいね。
それぐらい聞いてくださいよ。
母親を大切に。それから日本にいられる時間がどんどん少なくなるんでしたね。
帰国したら、わたしは次はどこに行くのかしら。
アマチュアでも読んで「面白いよ」って言ってくれる人がいたらずっと書くことはしますね。
でもやりたいことがたくさんあるんです。
5,6年で駆け抜けましょう。
魔女の言葉・・・いくつめかな
”詩”というのは狙って書くのもでもないです。
気がついたら言葉や文字が意識に浮かんでくるんですね。
その瞬間を捕まえて書き記して、人の心を動かすことができたら最高。
それが幸せなわたしはやっぱり幸せ者。
自分で自分を幸せになんて、思考をちょっと変えるだけでいくらでもできるのね。
精神同士の闘い:Cyber Commander
セッシュウ他、ここでの負傷者というか死亡者は、外傷を負っていない。
転がされている寝台で、目を見開いてただ天井だけ眺めて・・・ん・・・・睨んでるのかな。そんな感じだわ。
「頭、イッちゃってる?」
声に出してしまった。
最近こういうの多いな、わたし。
何より失礼よね。戦闘に行ってこうなったんだから。
ボス、怪我はしていないのですか? この方たち、精神は危なくなってるみたいですけど、なんか「闘った」というのがないわ。
「仕方あるまい。お前はここにきて一ヶ月だからまだ知らんだけだ。我々は昔の人間が憧れていたような、戦闘機に乗って出て行くなんて戦闘はしないんだよ。そう思っていたのか?」
「・・・思っていました」
驚いた。だって軍隊でしょう。
もう訳がわからない世界ね。
ここに収監されている人たちには、そう、外傷がない。でも精神は明らかに崩壊している。なんだかここにいることも怖い。
・・・・申し訳ないんだけどさ・・・・。
「ではジムで鍛える必要があるというのは?」
寝かされている人たち、どうやって闘ったのかは知らないけど、そうね体格はかなりいいわ。
「精神の世界に飛び込み、そこで自分の持っている心理上のデータや、運動能力や体力データをメモリーチップに入れて”戦闘カプセル”に入る。だから常に体も精神面も鍛えておく必要がある」
ボスは冷静。わたしは・・・・・。
”戦闘カプセル”? 何? わたしもそれにいずれ入るの?
「お前はセッシュウの代わりになる可能性がもともと高かった。同じアジアンだから、波長が合うと思ってな。女性たちは、ここではどういう戦闘がなされているのかを知らないのが多い。知る必要がないと教え込んでいるから」
「知らなければ幸せだったかもしれないけど、なんか他の女性たちと合わないのがわかった気がします。かわいい子、て思われたいから、仕事と割り切って本当のことを知ろうとしないこと」
「手厳しいがその通りかもな」
ボスは初めて笑ったような気がする。
セッシュウは一番奥の寝台でぴくりとも動かなかった。
まだ生きてはいるらしい。
たしかに彼はアジアンだわ。
でも・・・それがなんだってのかしら。いざ会うとそうなってしまう。
今、セッシュウの目が開いた。
「リカバリが済んだようだな。お前の場合は新しいOSのインストールが必要だったけどな」
ボスが言った。
本当の始まり:Cyber Commander
「”面会謝絶”のカードを無視したのはマリスか?」
わたしはセッシュウに会うことに失敗し、まあボスに叱られてる。だからなんだってのよ。
なんだろ、何かにつけて投げやりになるこの気持ち、て?
さらにわたしは反抗する。
「マリスじゃなくて”MARIS.?”ですわ」
胸のネームプレートを、乱暴な仕草で指してみせた。そうよ、自分が誰かもわからないの。
「トレーニングは?」
「そりゃもう毎日。腕も足もパンパンです。御覧になりますか?」
「こなしてるなら構わんから・・・」
呆れと困惑と。
上官をからかうのはなかなか楽しいわ。
そうでもせにゃほんと、ほんっとやってられない。
いつ捨て駒にされるかもしれないんだからね。
・・・・ボス、あんただってそうでしょうが。
セッシュウってどこですか? わたしと同じアジアンなんでしょう?
それぐらい許可してください。
そう言ったら・・・・。
「もう事務仕事には戻れない覚悟なら・・・会わせてやる」
ボスは冷静だけど、哀れむような目をしてる。
でもさ?
だから、何?
こっちはいつまで”MARIS.?”でいろって話よ!