彼女と京橋で待ち合わせ。
ちょっと珍しい国の料理を食べに行くことにしたのだ。
そのお店は、『京橋 酛』に向かう途中に偶然見つけたクロアチア料理の『ドブロ』。
私がクロアチアを旅したのは、もうずいぶん昔の話、まだユーゴスラビア共和国の時代。
今のセルビアの首都、ベオグラード近郊に3か月滞在し、ベオグラードを基点にして、ハンガリー、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、ギリシャと車で回ったのは、懐かしい想い出。
外壁には、店名と営業時間の銘板。
Dobroは、セルビア・クロアチア語でGoodの意味。
Dobro jutro(ドブロ ユートゥロ):おはよう
Dobar dan(ドバル ダン):こんにちは
Dobao vece(ドブロ ヴェーチェ):こんばんは
といった使い方をする。
店の前に黒板が出され、お薦めメニューが紹介されている。
ドアを入ると、中は半地下の部屋と中二階の二層構造。
中二階はコース料理を楽しむ、『レストラン・ドブロ』。
半地下はアラカルトメニューの、『コノバ・ドブロ』。
今夜は『コノバ』で好きな料理をアラカルトで食べることにする。
Konoba(コノバ)とは、セルビア・クロアチア語で”居酒屋”といった意味。
『コノバ』側からエントランスを見ると、階段が円形劇場のように見える。
テーブル・セッティングはシンプル。
クロアチアの民族柄のテーブルクロスが雰囲気を醸し出している。
最初はロゼをグラスで。
ベンコヴァッツのKORLAT ワイナリーが造る、KORLAT ロゼ、2015年。
フランボワーズ、ストロベリーの香り。
爽やかなボディで、後味には果実の甘み。
ぶどうはグルナッシュ。
六種類の前菜の盛り合わせ。
スモークサーモンと的鯛のカルパッチョ。
的鯛は欧州ではよく食べられる魚で、フランス語でサン・ピエール、イタリア語でサン・ピエートロ、つまり聖ペテロという名前なのだ。
聖書に由来する名前だが、説明すると長くなるので省略。
野菜のカポナータ。
カポナータはイタリア料理だが、クロアチアはアドリア海を隔ててイタリアに向き合っているので、イタリア文化の影響も受けている。
バルカン諸国では、スラブ文化、ラテン文化、トルコ文化が複雑に混ざり合っているのだ。
ダルマチア地方の名物タコサラダ。
鶏のテリーヌと、クロアチアサーディンとクリームチーズのリエット。
このリエット、素晴らしく美味しい。
皿に取り分け、彼女に手渡す。
野菜のカポナータも美味しいが、タコサラダは一段と美味い。
前菜が美味しいのでロゼのグラスをあっという間に飲み干してしまう。
続いて白ワインをグラスで。
バデルが造る、グラシェヴィーナ、クリジェヴィッチ、バリック、2015年。
樽を使ったしっかりとしたボディの白をお願いすると、その名もバリックというワインが出された。
クリジェヴィッチは首都ザグレブ近郊の生産地。
グレープフルーツ、白い花の香り。
強い樽のニュアンスとクリアな酸を持つ、重厚なボディ。
グラシェヴィーナはクロアチアで最もよく飲まれる白ワインのぶどう品種。
オーストリアのヴェルシュ・リースリングと同一品種なのだそうだ。
京橋のクロアチア・レストラン、『ドブロ』で彼女と過ごす楽しい夜は続きます。