
汐留の『パークホテル東京』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
彼女が大好きなワインを、キャリーバッグから取りだす。
保冷剤を入れて持ってきたので、充分に冷えている。
この包み紙を見て中身がお分かりの方は、プロフェッショナルか、ロワール好きの方。
ロワール地方最高峰の白ワイン、バロン・ド・エル、2010年。

包装紙を解き、抜栓する。
バロン・ド・エルを造るのは、ロワール最大の生産者で名門のドゥ・ラドゥセット。
ワイナリーの歴史は、ラドゥセットの先祖のラフォン伯爵が、ルイ15世の娘から「シャトー・ノゼ」と呼ばれる美しい城と、取り囲む250haのぶどう畑を譲り受けたことに始まる。
現当主のパトリック・ドゥ・ラドゥセットが1972年にシャトーを継承すると、ワイン生産の近代化に取り組むとともに、1973年に最高のワインを目指してリリースしたのがバロン・ド・エル。

プイィ・フュメの中の最高の畑の樹齢40年以上のぶどうを用い、良い収穫年にしか生産しないという特別なキュヴェ。
彼女が好きなので以前は良く飲んでいたが、今は価格が上がり、頻繁には飲めなくなってしまった。

ボトルにも”L”の文字が誇らしげに入っている。
折角のバロン・ド・エルなので、小さなグラスでは飲みたくない。
そこで、ブルゴーニュ用のグラスを持参した。

白用とブルゴーニュ用の二種類を持って来れればよかったが、さすがに場所をとりすぎるのでブルゴーニュ用で白も代用することにした。
今夜の赤は、ブルゴーニュのグラン・クリュを持ってきているのだ。
「美味しい。バロン・ド・エルは久し振りね」と彼女も喜んでくれる。
ふくよかな果実香。
素晴らしい凝縮感。
バランスのとれた酸とミネラル。
エレガントで芳醇、それでいて力強い完璧なボディ。
「素晴らしい。まるで君みたいなワインだね」と私。
「私はもう少しスリムだと思うけど」と彼女。

ワイン用のチーズも持参した。
ダナブルー・クラシック。
フランスのロックフォールをお手本にデンマークで造られた青かびタイプのチーズ。
ロックフォールが無殺菌の羊の生乳を使っているのに対し、ダナブルーは殺菌した牛の生乳を使用。
このためクセは少ないが、青かびの刺激は強い出来となっている。

ブルサンの新しい味が出たので、試しに買ってみた。
ブルサン・クランベリー。
結果を先に言うと、ブルサンはガーリックやペッパーの方が美味しいということで二人の意見が一致。

ルームサービスで届けてもらった皿に、チーズとクラッカーを盛り付ける。
チーズをお共に飲むワインは美味い。

今回持参したクラッカーは、イタリア産のコルッシ。
プレーンとソルトがあるが、チーズ用なのでプレーンを選択。
6枚ずつ小分けになっているので、使いやすい。
汐留の『パーク・ホテル東京』で彼女と過ごす楽しい夜は、続きます。