今夜は彼女と銀座の『ブラッスリー・ポールボキューズ』で待ち合わせ。
何時ものように私が先に到着し、彼女を待つ。
待ち合わせの時間に遅れること約20分、彼女が颯爽と現れた。
おや、髪をカットしたようだ。
「遅くなってごめんなさい。カリスマにカットしてもらったんだけど、ちょっと切り過ぎたかしら」
席を立ち、彼女の為に椅子を引く。
「今回もとても素敵。僕は好きだよ」
今夜のアペリティフ・メゾンは、グリオット。
ブラックチェリーのリキュールを、ヴーヴ・アンバルのクレマン・ド・ブルゴーニュで割ったものだ。
グラスの底には、チェリーがひとつ沈んでいる。
チェリーが起点となり、何時も以上に泡立ちが良い。
使われているクレマン・ド・ブルゴーニュは、ヴーヴ・アンバル、ミレジム、2012年。
アンバル未亡人が創業した、シャンパーニュ方式で造られる高品質クレマンの専業のメゾンである。
ヴーヴ・アンバルは『ひらまつ』のハウス・スパークリング。
ミレジムを使うところが、さすが『ひらまつ』。
ポールボキューズのロゴが入ったナプキンを見るだけで、今夜の料理とワインへの期待が膨らむ。
前菜は、フアグラとフリュイ・ルージュのムースリーヌ、ベトラーヴと柑橘のサラダ仕立て。
アペリティフで食欲が掻き立てられた胃袋が歓喜の声を上げる。
白は初めての物。
シャルドネ、レ・ペニタン、2007年。
レ・ペニタンは、サンセールのアルフォンス・メロとブルゴーニュのジャンテ・パンシオのコラボ・ワインで、ブルゴーニュの小さな地区、コトー・シャリトワで造られている。
レ・ペニタンには赤白二つのワインがあり、このシャルドネはアルフォンス・メロが、そしてピノ・ノワールはジャンテ・パンシオが主に造っている。
ところでこの目立つエチケットは、フランスの人気芸術家、ジェラール・ビュヴィスの作品である。
アルフォンス・メロが造るシャルドネと聞いて、ロワールでシャルドネを造っているのかと驚いたが、ブルゴーニュでのコラボ・ワインと聞いて納得。
アルフォンス・メロはサンセールの造り手なので、何となくシャブリを想像していた。
ところが飲んでみると、樽香も感じ、どちらかと言うとモンラッシェ風の味わい。
柑橘系の香りではなく、熟成感のある落ち着いた味わいに驚く。
2007年と、7年余りの熟成を経ていることも影響していうのだろう。
白ワインに合わせる魚料理は、サーモンのポワレ、アーティチョークのバリグール風。
皮がパリッと焼かれたサーモンのポワレは何度食べても美味い。
そして春を告げるアーティチョーク。
欧州ではアーティチョークを使ったメイン料理も春には登場する。
銀座の『ブラッスリー・ポールボキューズ』での楽しい夜の続きは、また明日。