今夜は大手町で仕事の打ち合わせ。
仕事が上手くいった後には、一人で食事をしたくない。
彼女にメールを送ると、丸の内で友人達と食事中とのこと。
彼女は少し怒ったように、「わかったから、待ってて」と答える。
急いで大手町ファースト・スクエアの『マレンマ』に電話をし、テーブルを確保する。
彼女に店の名前をメールすると、先にワインを注文し、飲み始める。
丸の内で食事中だったとすると、一時間は待つことを覚悟しなければならない。
選んだワインは、イタリア、トレンティーノ・アルト・アディジェ州のメッツァコロナが造る、ピノ・グリージョ、リゼルヴァ、2009年。
酸とミネラルのバランスの良い、すっきりとした飲み口の爽やかな白。
ピノ・グリージョは、好きなぶどうなのだ。
料理を選び、一人で白を楽しんでいると、コツコツと階段を上るヒールの音に続き、彼女が現れた。
急いで席を立ち、彼女を迎える。
「早かったね。これは、ピノ・グリージョ」
「白はもう飲んできたからいい。赤を頂戴」
ちょっと不機嫌な彼女も、とても素敵である。
蛸の吸盤のフリット。
コリコリで美味い。
美味しいが、お腹に堪える。
白に良く合う。
イタリア、トスカーナ州の名門、アンテティノリが造る、ヴィラ・アンティノリ、2007年。
急いでテイスティングすると、なんとブショネ。
彼女の機嫌が一層悪くなる。
すぐに別のボトルを出してもらい、再びテイスティング。
これは、大丈夫。
アンティノリがトスカーナに保有する自社畑の高品質のぶどうのみを用いて造られた、バランスの良いフル・ボディ。
ぶどうは、サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー。
「赤を飲む前に出てきたの」
「無理を言ってごめんね。来てくれて、ありがとう」
「ううん、いいの。会えて嬉しい」
彼女の機嫌が直ったと言うことは、この赤が不味くは無いということだ。
焼いた野菜が香ばしい。
アボカドとズワイガニのサラダ。
彼女が食事を食べていたので、軽い野菜料理を中心にオーダーしたのだ。
彼女はあまり料理を食べなかったが、それでもデザートはしっかり食べている。
冷たくて、とても美味い。
外に出ると、店の灯りが眩しく輝く。
店の地下は、大手町ファースト・スクエアの地下街になっている。
急に彼女を呼び出してしまい、少し機嫌を損ねてしまったが、やはり会えて嬉しい。
少し気温が下がった街を、手を繋いで歩いた楽しい夜でした。