埼玉に住む友人から、「美味い酒が手に入ったので、どこかのお店に持ち込んで飲もう」とメールが来た。
三人で集まることにし、三人の位置関係を考え、日本橋の鮨屋、『蛇の市本店』に持ち込みのお願いをした。
『蛇の市本店』は、日本橋で100年以上の伝統を誇る銘店。
創業者の”市さん”が何時も蛇の目傘をさしていたことから、志賀直哉が『蛇の市』と命名したことでも有名。
持ちこんだ酒は、埼玉県蓮田市の神亀酒造が造る、”ひこ孫純米大吟醸”。
神亀の名前は、蔵の裏にあった”天神池”に棲むと言われる”神の使いの亀”に因んで命名したもの。
この酒は、三年以上をかけて低温で熟成させた、限定品。
これは確かに美味い。
クリアで淡麗な、それでいて充分な熟成感を持つ、素晴らしい日本酒である。
とすると、5年間も冷熟されていたことになる。
酒造米は山田錦、精米歩合は40%。
以前、愛媛県の豊稔が造る”三年冷醸吟醸酒”を飲んだことがある。
酒造蔵が切磋琢磨し、素晴らしい酒を造り出していることに感謝するとともに、応援していきたいと思う。
どうやって応援するのかって?
そりゃ、飲むしかないでしょ!
これが酒に良く合うのだ。
やはり酒には刺身が欠かせない。
持ちこんだ酒だけ飲むのではお店に悪いので、乾杯はエビス・ビール。
撮影前にだいぶ飲んでしまったが、この恵比寿の絵が懐かしい。
このプレートが、気が効いていて好きだ。
お店にとっても、小さな器を何度も運ぶ必要が無く、上手く考えた方法だと思う。
日本酒には、この醤油たれが合うのだ。
一升を飲み干してしまったので、若女将に頼んでお勧めの酒を出してもらう。
ここの若女将は、アメブロで素晴らしい日本酒を紹介してくれているので、興味のある方は、”蛇の市 若女将Yuki”に遊びに行って下さいね。
最初の酒は、山口県周南市のはつもみぢが造る、”純米大吟醸原田”。
原田は、社長兼杜氏の原田さんのお名前。
これも実に美味い。
山田錦を用い、精米歩合は40%。
さすが若女将のお見立て。
はつもみぢは、190年の歴史を持ちながら、昭和60年に醸造を中止してしまった。
平成17年になって、20年ぶりに醸造を再開させたのが、原田さんなのだ。
はつもみぢには、”回天大吟醸”と言う酒がある。
国を守るため、人間魚雷回天と共にこの世を去った烈士の意を受け継ぎ、後世に伝えるための酒である。
久し振りに出会った、懐かしい酒に感激。
今夜は2階の部屋で食事をしているが、1階の鮨屋を守る先代の握りが嬉しい。
これで満足のはずなのだが、若女将との話が止まらない。
次に出してくれた酒は、栃木県栃木市にある飯沼銘醸が造る、”姿、純米吟醸五百万石無濾過生原酒あらばしり”。
これは良く飲む酒である。
実は栃木県にもメンバーになっているゴルフ・コースがあるので、帰り道に飯沼銘醸の”杉並木”や”姿”をよく買って帰るのだ。
これも人気が出ている、美味い酒である。
平成23年の12月に製造された、まさに”あらばしり”である。
もう充分に飲み過ぎているが、最後にもう一種類飲んでみることにした。
もう説明の必要もないだろう。
”小笹屋竹鶴(おざさやたけつる)、純米原酒”。
広島県竹原市にある竹鶴酒造は、ニッカウイスキーの創始者、竹鶴政孝氏の実家としても有名。
そして、ここの超有名な石川杜氏は、なんと早稲田大学時代に”神亀”に出会い、そのまま”神亀”の蔵人になった人。
その後、実家のある広島県に戻り、竹鶴酒造に入り、杜氏の大役を継いだのだ。
神亀に始まり、竹鶴で締めくくった、日本橋の素晴らしい夜でした。