洪水はバンコク中心部の北、約5Kmの運河で食い止められているが、街の至る所に土嚢が積まれ、商店の中には入口にセメントやブロックで1m程度の高さの塀を築いているところもある。
店に入るにはこの土嚢や壁を乗り越えなければならず、結構大変。
洪水が去った後、この壁を撤去した瓦礫や、膨大な量の土嚢をどうするのか新たな課題となるのだろう。
それでも、街の中心部に居る限り、土嚢を除けば洪水の影響はほとんど感じることが無い。
強いて言えば、高速道路の路肩に並んだ避難車の列くらいしか異様な光景は無い。
そこで、街の中心を流れるチャオプラヤー川を見に行くことにした。
まずは川沿いの最高級ホテル、『オリエンタル・ホテル』に向かう。
『オリエンタル・ホテル』は何時もの通り、別世界。
優雅に着飾った人たちで溢れている。
ホテルの船着き場に行ってみると、驚くべき光景が目に飛び込んできた。
船着き場への通路は水没し、その上に木の板が敷かれ、そこを恐る恐る渡って浮き桟橋に行かなければならない。
この浮き桟橋には何時もは下って行くのだが、今は登りになっている。
つまり、水面が堤防とほとんど同じ高さにあり、地面の方が低いのだ。
右手のミレニアム・ヒルトン・ホテルを見やると、足元は水面に沈んで見える。
タイの皆さんも大変だが、日本にとっても他人ごとではない。
リーマン・ショックからようやく立ち直りかけて矢先に日本を襲った東日本大震災。
そして出口の見えない福島原発事故。
更に、こんな日本を痛めつける超円高。
円高に対応し、タイを始めとした海外に生産をシフトさせた。
そのタイの日系企業を飲み込んだ大洪水。
「私達の何が悪いのですか」、思わず天を仰いで叫びたくなる。
快晴の抜けるような青空を見ながら、溜息をつきました。