今夜は久し振りに、六本木の『サバティーニ』に行くことにした。
彼女と六本木駅で待ち合わせ、ホテル・アイビスの13階に上る。
席に着くと、すぐに支配人からスプマンテのグラスが届く。
ヴェネト州でカルペネ・マルヴォルティが造る、プロセッコ・ディ・コネリアーノ。
プロセッコ種のぶどうから造られる、キレの良いスパークリング・ワインである。
プロセッコと一緒に、空腹を緩和してくれる。
今夜選んだ白ワインは、トレンティーノ・アルト・アディジェ州のコルテレンツィオが造る、ピノ・グリージョ、2009年。
ふくよかな果実味を持ちながら、すっきり爽やか。
さすがコルテレンツィオ、品質が高く、コスパ抜群である。
コルテレンツィオは1960年に設立された、生産者組合。
今では組合員数は310、ぶどうの栽培面積は300haと広大。
私の前菜は、フレッシュ・フォアグラのソテー、バルサミコ・ソース。
前菜にフォアグラを選ぶなんて、と彼女が眉を顰める。
夏の定番が組み合わさった、美味い一皿。
悩んだ挙句彼女が選んだのは、フォンテルートリ・キャンティ・クラッシコ、2008年。
トスカーナの名門中の名門、カステッロ・ディ・フォンテルートリが造る、高品質のキャンティ・クラッシコなのだ。
オーナーのマッツェイ家は、1435年からこのワイナリーを所有していると言う、長い歴史を持っている。
濃く深く、強いボディ。
サンジョヴェーゼとは、”ジュピターの血”という意味。
それほど濃く強いワインを生み出すぶどうなのだ。
このワインのセパージュは、サンジョヴェーゼ90%、コロリーノ5%、メルロー5%。
熟成は、バリックで12ヶ月、新樽比率は50%。
肉料理は、和牛ロース肉のタリアータ、二種類の黒トリュフ風味。
惜しげも無く掛けられた、トリュフの香りが嬉しい。
今夜は何を選ぼうか。
シチリアのアイスクリーム、カボチャのムース、そしてティラミス。
美味いドルチェを食べたあとは、シンプルな飲み物が心地よい。
これで今夜は満足、のはずだったが、支配人がグラッパを出してくれた。
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州を代表するグラッパ、ベピ・トゾリーニのチヴィディーナ。
グラッパを飲むと、美味い食事で満杯になったお腹がすっきりしてくる。
店の入り口までの回廊を、先を歩く彼女の後姿に見とれてしまう。
彼女と過ごす、果実味が凝縮されたような、六本木の夜でした。