「アモーレパシフィックを買いに行かなくちゃ」
彼女のその一言で、今夜はソウル、江南にあるパーク・ハイアット・ホテルに居ることとなってしまった。
「何故、化粧品を買いにわざわざソウルまで来なければならないのか」、という疑問は今も口に出していない。
彼女の、「アモーレパシフィックが切れたのだからソウルに行くことは当たり前のこと」だという態度に気後れし、今だに口に出せないでいるのだ。
でも、ばたばたではあったが、一緒にソウルに来られて良かった。
それに、クリスマス後のソウルはセールのまっ最中であり、洋服や身の回りの品のショッピングには、最適な時期でもあるのだ。
パーク・ハイアット・ホテルは、東京だけでなく、ソウルでもお気に入りのホテルである。
ホテルのビルには、最上部に小さくホテル名が書いてあるだけで、どこから見ても普通のオフィスビルとしか見えない。
だから、ソウルの住人でもここがホテルだと知っている人は少なく、宿泊者以外がふらっと立ち寄ることもない。
一方で、タクシーにホテル名を告げてもちゃんとたどり着くことは少なく、それが難点とも言える。
部屋からは江南のメイン・ストリート、テヘラン路を行き交う車のライトが美しく流れて見える。
今夜の食事は、ホテルのメイン・ダイニング、『コーナーストーン』。
なかなか良いイタリアンで、ワインも豊富に揃っている。
ただ、韓国は今も輸入税が高く、同じワインでも日本で飲むよりかなり高価である。
最初の白は、シチリアの、マンドラ・ロッサ、シャルドネ、2006年を選ぶ。
濃い麦藁色をしているが、ドライで切れが良い。
彼女の前菜は、サン・ダニエリのプロシュート。
フリウリ州のサン・ダニエリ村のプロシュートは大好きだ。
ピエモンテ州のパロマ産より美味いと思っている。
シャルドネとの相性がとても良い。
昼食に韓国料理を食べ過ぎたので、今夜は前菜の後はメイン一皿で済ませることとする。
でも、ワインはやはり赤も飲みたくなる。
選んだワインは、ピエモンテ州の、ラ・スピノーナ、ランゲ・ネッビオーロ、2004年。
ラ・スピノーナのエチケットに描かれている犬は、ランゲの人々に愛されているスピノーネ(グリフォン犬)である。
ネッビオーロは、サンジョヴェーゼと並んで、イタリアを代表する偉大な赤ワインを生み出すぶどうである。
メインは、二人揃ってテンダーロインのステーキをレアで注文した。
ネッビオーロのタンニンと良く調和し、なかなか美味である。
デザートに変わったティラミスを食べ終わると、ワインにも食事にももう満足。
満ち足りた思いで『コーナーストーン』を後にし、見栄を張って予約したスイート・ルームに引き上げたのでした。


