グラフ・ノワール | ワインは素敵な恋の道しるべ

ワインは素敵な恋の道しるべ

白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。


イタリアではほとんどの州で良いワインが生産されています。


でも、良いワインの生産地としては、トスカーナ州とピエモンテ州、それにヴェネト州やフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州やシチリア州程度しか思い浮かばないのではないでしょうか。


ところが、最近では思わぬ州で素晴らしいワインを生産する醸造家がどんどん現れています。そんなワインを楽しめるお店が、西麻布の『タニーチャ』です。『タニーチャ』ってイタリア語で何と言う意味かご存知ですか?


わからない?それもそのはず、店のオーナー・シェフ、茶谷さんの名前を逆さに読んだ”語本日”なのです!


私は『タニーチャ』で初めてグラフ・ノワールに出会い、すぐにその奥深さに魅了されてしまいました。


テヌータ・パラッツア・グラフ・ノワールは、ドレイ・ドナが生産する多くのワインの最高峰に位置し、まさにエミリア・ロマーニャ州を代表するスーパー・エミリアなのです。バリック(オークの小樽)で24カ月、さらに瓶熟成18カ月を経てリリースされる、少量生産のワインです。


バリックの新樽比率は70%で、樽を効かせながら効かせ過ぎないという絶妙のバランスを保っています。私は、樽を効かせ過ぎたワインは、どんなに一般の評価が高いワインでも、嫌いなのです。ぶどうの自然な凝縮感こそ、醸造家のワイン造りに賭けた執念の賜物だと思っています。


1999年のセパージュは、サンジョヴエーゼ30%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%、ネグレット・ロンガネージ20%、カベルネ・フラン20%と、イタリアのブドウとフランスのブドウが上手くブレンドされています。



ワインは素敵な恋の道しるべ


『タニーチャ』は、私にとっては隠れ家です。西麻布の路地裏にあり、店の中に潜り込むと、シェフの暖かい雰囲気に包まれて何物にも侵されない安心と安らぎを覚えます。季節の食材を惜しみなく使う、独創的な茶谷シェフの料理と合わせるためには、ワインにも自我を確立した存在感が求められます。


グラフ・ノワールは、そんな安らぎと厳しさに応えるワインなのです。


もし貴方が、洗練された女性の尊敬を得たいと願うなら、料理とワインに優れた隠れ家を持つべきです。料理が美味く、高級ワインを揃えた店はいくらでもあります。しかし、貴方を特別な客として迎え、貴方のゲストの前で貴方の尊厳を高め、そして彼女の胃袋と心を魅了できる店は多くはありません。


私も隠れ家をいくつか持っています。今夜はその一つをディスクローズしてしまいました。これからもお教えしますが、あまり利用しないで下さいね。いつも混んでいるお店になってしまえば、隠れ家ではなくなってしまいます・・・。