鄙びた漁港の居酒屋が出す酒肴は食べたい

昨夜は、ひさしぶりの日本映画。

「ヤクザと家族」の藤井道人監督作品。

正直に白状すると監督の名前よりも、全編35ミリフィルムで木村大作による撮影という点に惹かれて観ました。

そして改めて自覚したのが、やはりオレはこの奥行きを感じられるフィルムの映像が好きだってこと。

自宅のブラビアの画像調整も、デジタル補整は弱め、彩度も下げて、暗い所は暗いままピントが合わなくてもかまわない方向で機械まかせにせずチマチマいじっています。

古い映画が当時の記憶のまま再現できるようにね。

それゆえ、たまに知り合いとウチで地上波を見ると、発色が地味とか言われます。

テレビ放送としての視認性のわかりやすさより、肉眼で見た際の色感の再現性を重視してるもんで。

そんなオレにこの映画の映像は何よりのお宝。

もうそれだけでお腹いっぱい胸いっぱい。

ストーリーは、昭和の任侠映画の人情物のエッセンスだけを抽出したかのようなお話。

全体として悪くはないけれど少し乗り切れなかった。

浪花節は嫌いな方じゃないけどさ。

それは主演の舘ひろしに狂気が内包されていないように感じられたから。

どこまで行っても徹頭徹尾いい人なんだもの。

少なくとも元ヤクザでしょ? 

仲間のための斬った張った以外の悪いことをやってきてなかったとしか思えない潔癖さが透けて見える。

確かに過去には専ら刑事ばかりやってたしね。

凄味のある気迫と隣り合わせなはずの、ヤクザだった昔の業のようなモノが稀薄なのよ。

イメージ的に過去の「皮ジャン反抗族」と「薔薇の標的」じゃ、ちと弱い。

思わずこれが高倉健、菅原文太、渡哲也だったらと妄想しかけてしまいました。

本編には能登地震前の撮影もあるようで、富山あたりの漁港の風情もまた貴重に思えます。

あとね。

悪役と脇が豪華で素晴らしい存在感なの。

斎藤工のイカレた容姿。椎名桔平のクズっぷり、ピエール瀧の小物感。MEGUMIの下品さ。市村正親の顔の圧。笹野高史の安定感。そのシーンだけのために出てくる岡田准一の男気。

その誰もが尊い。

Vシネやくざ物ジャンキーのオレからすると、ストーリー的には少しお行儀のよすぎる映画でしたが、その情感あふれる映像の美しさだけでも観て損は一向にないと思いますぜ。

https://eiga.com/movie/100680/