【UPDATE版】直前期の受験戦略(戦略編) | 合格への道のり("3つの道"編)

合格への道のり("3つの道"編)

これまで宅地建物取引士試験、行政書士試験、司法書士試験、海事代理士試験及びマンション管理士試験に一発合格しました。2022年からは受験生、実務家(士業)及び講師の3つの道を歩みますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。

2024.5.19:UPDATE

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皆さん、こんにちは。

リーダーズ総合研究所・講師の板野です。

 

直前期はこれまで以上に受験戦略が重要となりますが、令和5年度に実施したX上のアンケート結果によると、行政書士試験を含む資格試験受験生の約4割の投票者は直前期を約3ヶ月と考えていることがわかりました。

 

実は約1ヶ月、約2ヶ月と投票された方の中にも、本来的には約3ヶ月確保したい旨のメッセージを下さった方もいらっしゃいます。


最近になって、私も受験生から直前期における受験戦略を踏まえた学習計画の立て方について相談を受ける機会が増えてきました。本試験日までのカウントダウンが始まると、受講相談やSNSなどを通じ、受験生の不安や焦りから勉強が手につかない受験生が毎年散見されるように思います。

 

こうした状況から、今回は「直前期の受験戦略(戦略編)」について、これまで受けた受験相談や私の受験経験などを踏まえ、受験生のお悩みに可能な限りお応えする形で、お伝えしたいと思います。

※本記事は、令和5年度にYouTubeで配信した内容(現在は閉鎖)をブログ記事にまとめたものです。

 

 

合格のトリセツ"全体MAP"

直前期の受験戦略は様々ですが、今回は、昨年度実施した対談シリーズ第1弾の副題ともなった"心技体"の観点から体系的に受験戦略をまとめております。

 

直前期に何をすべきか迷っている受験生のために、各項目の冒頭には、これまで多くの受験生から御相談いただいた内容を取りまとめた「受験生あるある」を可能な限り設けていますので、該当する症状などありましたら、その部分だけでもお読みいただけますと幸いです。


 

合格のトリセツ"戦略編(心技体)"

  "心"~(1)平常心を保つ~

 ①直前期は自走する必要(孤独との戦い)

受験生あるある(こんな症状には要注意!)

●基幹講座の受講生は講座の終了とともに学習のペースメーカーを失い、何をどのように勉強して良いのかわからなくなる(受験生自身でペースメークする必要)

⇒ これまでのように講義を受講して復習するという学習サイクルは採れない

 

●自分の勉強に自信が持てなくなり、他の受験生の情報に振り回されてあれこれと手を出してしまうなど、勉強が空回りする(勉強内容の日替わり化)

⇒ 勉強が順調な時ほど落とし穴があって、次の日には勉強法に迷いが生じることになりかねない

 

●SNS等から入手した合格者や成績優秀者の学習法をそのまま真似してしまいがち(自分に合った勉強法か否かの検証が不十分)

 

具体的な対策

○受験生の学習環境や能力、学習進捗等は異なるため、直前期の学習内容は各々異なることを再認識する

⇒ 合格者や成績優秀者の学習法を真似る場合には、それが自分に相応しい勉強法か検証し、自分に合わなければ即時に見切ることが必要

 

○直前期のSNSには受験生にとって有益な情報も含まれるが、それらを選別する精神的余裕はないため、SNSの向き合い方を考える

⇒ SNSを遮断する/受験指導校や講師が発信する情報だけに絞る等

 

○直前期に突入すると最早勉強法を変更している場合ではなく、理想的には、直前期までに試行錯誤して確立した自分の勉強法を最後まで信じて貫徹することが重要

 

※直前期における具体の勉強法については、この後の"技"を御覧になって下さい。ここでは"心"の観点から心理的な対策に絞って整理しています。

 

 ②ブレークスルーポイントの認識

受験生あるある(こんな症状には要注意!)

●これだけ勉強したのに、なぜ模擬試験や答練の成績が伸びないのか考えると落ち込んでしまう(特に民法は勉強をいくらやっても成績が伸びず、悩み・不安のスパイラルにはまり込んだ状態に陥っている)

 

●「成績が伸びない=過去問や肢別本の学習量(解く回数)が少ない」と思い込んで、公務員試験などの他資格の過去問等も含めて問題を解く量を増やそうとする

 

●ブレークスルーポイント(BTP)の存在を認識できていない受験生が多く、BTPの到来まで我慢できず、途中で受験を諦めてしまう

 

BTPって何?

○BTPとは、「現状を変えられたり、成果が上げられたりするターニングポイント」を意味する

 

BTPの意義・対策

○難関試験では、BTPの到来まで辛抱して学習を継続することができるかが合否の分かれ目と言っても過言ではない

 

○成績低迷期間の長短は受験生に応じて個人差があるので、他の受験生の成績が伸びているからと言って、同時期に自分の成績も伸びるとは限らない(受験生によっては試験日の1週間前に訪れることもあり得る)

 

○特に民法は条文数や判例も多く、全体を学習し終わって全体的に知識が定着するまで成績は伸びていかない傾向パンデクテン方式の宿命

⇒ 行政法や商法・会社法は勉強量に比例して成績が伸びやすく、直前期の追い込みが可能

 

 ③心がけたい3つの“あ”

受験生あるある(こんな症状には要注意!)

●模擬試験・答練の成績が思うように伸びていかないし、せっかく記憶した知識もすぐに忘れてしまう。どうしよう!?

 

●過去問や肢別本を何度も繰り返し解いたのに、本試験では一度も解いたことのない問題が出題されてパニックに陥った

 

●周囲の受験生が賢く見えて試験会場の雰囲気にのまれてしまい、勉強が手につかない

 

●試験前あるいは試験中に(周囲で)トラブルが発生し、動揺してしまった

 

●今年はもう諦めた。また来年受験すればいいや!(=悪魔の選択)

 

焦らない/慌てない(心の準備をしておくこと)

焦らない、慌てない受験生はいないと心得る

⇒ 本試験会場独特の緊張感をも加わって、そもそも平常心を保つのは想像以上に困難(=それは他の受験生とて同様、実は他の受験生の方からも皆さんのことが賢く見えている)

 

せっかく記憶した知識もすぐに忘れてしまうのは当然

⇒ エビングハウスの忘却曲線によれば、1日後には学習した内容の74%を忘れる

 

○難関試験では毎年度過去問未出問題が多く出題される

⇒ 行政書士試験における法令科目の過去問出題率は30%前後であり、一度も解いたことがない問題(過去問未出問題)が出題されるのは当然

 

○焦って、あるいは慌てて問題が手につかない場合などはトイレ休憩として一時的に離席するなど、気持ちを落ち着かせることも有効

 

諦めない(悪魔の選択=絶対にやってはダメなこと!)

○今年の受験を途中で諦めると、現在の残日数に365日が加算され、プレッシャーから解放されて気持ちの上では随分と楽になる(また来年に向けてやる気が沸いてくる)

(来年の受験までの残日数)

 = 今年の受験までの残日数 + 365日

 

 

延期した直後はやる気になるものの、長続きしない。今年受験を回避しても根本的な解決とはなっていない(なぜ途中で諦める羽目になったか検証できておらず、来年の同時期にはまた同じ状況に陥る可能性が高い)

 

諦め癖が付いてしまい、来年もまた途中で逃げ出す可能性が高い(一度染みついた諦め癖は簡単には払拭できない)

 

 

○思い通りに勉強が進まなくても、最後まで絶対に諦めないことが肝要!

(そもそも思い通りに勉強が進んで受験している受験生など僅少)

 

 

  "技"~(2)理解・記憶の掘り起こし~

 ④“皿回し暗記術”の実践(記憶の定着)

皿回し暗記術って何?

●1つの科目・分野にいつまでも固執せず、全科目・全分野を満遍なく復習し、全てのコア知識を常に記憶できている状態を作り出す暗記術

⇒ 皿回しに例えると、全ての皿が常に回っている状態を作り上げていくこと

 (行政書士試験の場合、全6科目のコア知識が常に記憶できている状態)

 

●皿回しと同様、記憶は定期的にメンテナンス(再度暗記)する必要

⇒ 記憶がぐらつき始めたら、直前期は定期的にメンテナンスする(1週間に1回程度が理想)

 

「楽々暗記術」など存在しないので地道な努力が必要

⇒ 記憶は時・場所を選ばず、自己の可処分時間内であればできるので、直前期は記憶の作業を疎かにしない

 

具体的活用術

○常に記憶が維持されている状態を作り出すためには、短い時間で全科目・全分野を総復習することが重要

短い時間 × 回転数 × 勉強量 = 記憶力

※同じ科目・分野に固執するあまり当該科目・分野に記憶の時間をかけ過ぎてしまうと、せっかく記憶した他の科目・分野のコア知識を漸次忘れていく

  長い時間 × 勉強量 ≠ 記憶力

 

○記憶の作業は時間・場所を選ばず、受験生の可処分時間内であればいつでもどこでもできるので、隙間時間を活用する。

(司法書士試験の受験時に記憶した時間・場所)

 

 ⑤学習のメリハリ(捨てる勇気)

受験勉強の重要度・優先度(選択と集中)

●A及びB+ランクの重要知識だけでも記憶量は膨大であり、それだけで十分合格ラインを突破できる(=合格者の多くは重要知識をほぼ完璧に記憶している

 

●(資格試験の)受験勉強の意義を取り違えており、上図③④を含む全テーマ・論点を完璧に理解しようとしている受験生が見受けられる

⇒ 出題可能性の高い分野を出題される限度(深さ)で重点的に学習するのが受験勉強であって、大学での法律学の教育・研究とは異なる

 

●試験日当日、受験生の目指すべき状態は図の通りであり、そのためには直前期は皿回し記憶術を駆使して記憶の作業に努めること

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捨て科目の判断

Q 商法・会社法は条文数も多く行政書士試験では捨て科目とする受験生が多いが、捨て科目とすべきか?

 

(私見)

○会社法は出題テーマ・論点に偏り(設立・株式・機関が中心)があって出題予想しやすい

 

○商法は民法の特別法であり、民法(債権編)の復習と併せて学習すると効率的

 

○会社法は行政法と同様、短期間で仕上げることが可能であって、基本的な知識が多く出題されており勉強すれば点数に直結しやすい

 

○近年、憲法(択一式問題)において現場思考型の問題が増えており、安定的に正解するのが困難

 

○会社法は法律実務でも重要である(実務家(士業)になって勉強しようと思っても他に業務があってなかなか手が回らないのがオチ、仕事の機会を失いかねない)

 

 

捨て科目を作るべきではない

 

令和5年度は行政書士試験は私法系(民法、商法・会社法)の難易度を下げる一方、公法系(憲法、行政法)の難易度が上がりました。

 

2024年度の傾向は不明ですが、どのような傾向になっても安定して得点できるよう、捨て科目を作るべきではありません。

 

中でも、会社法は出題傾向が一定(設立、株式及び機関)しており、短期で仕上げることが可能なので決して捨て科目にしないようにしましょう!

 

なお、行政書士試験制度の一部が改正され、令和6年度から戸籍法や住民基本台帳法、行政書士法からの出題が予想されるため、これらの法令についても学習する必要があります。

 

そのため、商法・会社法の学習を敬遠する受験生が益々増えるものと予想されますので、リベンジ組は会社法の学習を早めに進めることをお勧めします。

(出典:一般財団法人行政書士試験研究センターHPより)


記述式対策も怠りなきよう

近年、択一式や多肢選択式の難易度がUPし、記述式抜きで180点を突破するのは困難な状況です。


ついては、対談シリーズ第2弾"具体⇄抽象を変幻自在に操ってサクッと解答"などを活用し、早い段階からしっかり対策する必要があります。



 ⑥模擬試験・答練から学ぶべきことの明確化

受験生あるある(こんな症状には要注意!)

●成績に一喜一憂し、本試験までの貴重な実践の場としての模擬試験を有効活用できていない

 

●模擬試験・答練には未学習の知識も多く出題されるが、それらの重要度・優先度を選別することなく闇雲に全て暗記しようとしてしまう

 

●まだ学習が不十分だからと、模擬試験・答練の受験を回避(若しくは本来の実施日より遅れて受験)する

 

●SNSなどで成績優秀者の記事を閲覧し、精神的に凹んでしまう(最悪の場合、勉強が手につかなくなる)

 

模擬試験・答練の活用術

○模擬試験は本試験の予行演習であって、成績だけでなく“受け方”が重要と心得る(成績<<受け方)

⇒ 成績だけに拘るのは本試験の模擬としての本来的意義を半減させる

 

○模擬試験の場合、座席は自由席の場合が多いので、あえて劣悪な環境(出入り口付近、空気調和器の直下、3人掛けの真ん中等)の席を選んで受験してみる

 

時間配分を確立する(どの順序でどの程度時間をかけて問題を解くか、見直し時間等の確保)

 

⇒ 行政書士試験は資格登用試験であって、合格ラインを突破するための事務処理能力が試されていることを決して忘れないように!

 

○試験毎に科目の難易度や出題形式は異なるので、問題文全体を俯瞰し、最初に受験戦略を立てておくことが望ましい

 

○模擬試験の結果をSNSにUPする受験生が散見されるが、その術中にはまらない

(良い成績を採った場合の他の受験生への優越感?直前期は心理戦でもあります。)

 

(その他、私の取り入れた工夫)

○普段からマスク着用に慣れていないと息苦しかったり、集中力を欠くことになるので、試験時にマスクを着用するのであれば普段から慣れておく

 

試験官が受験票の確認のために見回りするタイミングで、思考を停止して脳を休息

⇒ この時は試験官のことが気になってどうせ集中力が途切れるから、思い切って思考を停止し、脳の休息を図る

 

○問題用紙に用いる蛍光ペンは複数使用可能なので、どこにどう使うかなど、使い方を練習しておく

(私の使い方)

赤マーカー:問題文の末尾(妥当なものはどれか。妥当でないものの組合せはどれか等)をチェック(ケアレスミスの防止)

黄マーカー:各肢のキーワードをチェック

青マーカー:一度解いて確信が持てなかった問題をチェック


 

  "体"~(3)受験体力の鍛錬~

 ⑦受験体力の養成

●受験体力とは、「1日にできる平均の勉強時間」を意味する

 

●これまで長時間勉強に慣れていない受験生が、直前期になって急に長時間集中して勉強するのは困難

(例えば、1日10時間勉強する場合)

せっかくの休日だし、朝から張り切って勉強を始めたものの、脳疲労が蓄積して徐々に集中力が低下する

⇒ 途中で勉強に飽きる、勉強が長続きしない

 

 

初頭効果及び親近効果を意識し、ポモドーロテクニックと併用すると効果は非常に高い

 

Q1 ポモドーロテクニックって何?

A1 勉強中は集中することで、エネルギーを大量に消費するため、脳が疲労を感じやすくなるため、集中力と生産性を高め、効率よく仕事を進めることができる時間管理術で、フランチェスコ・シリロ(伊)によって考案(ちなみに、ポモドーロとはイタリア語でトマトの意味)

(具体的手順)

 ①達成しようとするタスクを選ぶ

 ②キッチンタイマーで25分を設定する

 ③タイマーが鳴るまでタスクに集中する

 ④少し休憩する(5分程度

 ⑤ステップ②~④を4回繰り返したら、少し長めに休憩する

 (目安として15~30分

 

Q2 初頭効果及び親近効果って何?

A2 「初頭効果」とは、最初に提示された情報に強く影響される心理的な傾向をいい、親近効果とは、最後に提示された情報のほうが印象に残りやすいという心理効果をいう

 講義を受講していると最初と最後が記憶に残りやすいという経験をしたことがあると思うが、ポモドーロテクニックと併用することで記憶に残りにくいゾーン(初頭効果と親近効果の間)を減少させる効果がある

 

Q3 集中力が低下したと感じる症状は?

A3 以下の症状が出現したら要注意。身体を動かしたり仮眠するなどして気分転換を図る

   1.勉強に飽きて退屈に感じる

   2.目が疲れて肩が凝り、ボーっとする

   3.集中力が低下すると誘惑に弱くなる

   4.新しい知識を覚えられない

   5.勉強中、不安やイライラを感じる

 

 ⑧身体の健康状態を維持

質の良い睡眠

○直前期は睡眠時間を削って勉強しがちだが、寝不足の状態では集中力や記憶力等の低下につながってしまう(規則正しい生活習慣は容易に崩れてしまう)

 

○直前期は不安や緊張からなかなか寝付くことができないが、早めに勉強を切り上げて就寝するなど、6~8時間睡眠を心がけることが重要

 

「1日(本試験の前日)くらい寝なくても大丈夫!」は詭弁に過ぎない

⇒ やはり睡眠は大切(一睡もしないと午前の試験であれば格別、午後からの試験の場合、睡眠しておかないと集中力が持たない)

 

(私の睡魔誘導策【睡眠学習???】)

普段勉強していると眠くなる"条文素読"を利用して、直前期は民法の条文素読音声を聞きながら寝ていました。私が活用したのは改正民法施行前の音声CDですが、最近はYouTubeなどに改正後の音声動画があると思います。

 

バランスの摂れた食事

○朝食を抜くと午前中はエネルギー不測のまま過ごす羽目になるので、朝食は必ず摂る(最も脳がリフレッシュした状態で最大の効果を発揮する朝の勉強に資する)

 

○脳は相当のエネルギーを消費する器官なので、脳を酷使する受験生はブドウ糖を積極的に摂取する

 

ビタミンB1には糖質をエネルギーに変換する働きがあるので糖質と併せて摂取する(豚肉、豆類、卵黄、牛乳などに多く含まれる)

 

DHAは脳細胞の働きを活発化し、記憶力を高める効果がある(鯖、鰯、鮪などの魚類に多く含まれる)

 

 

適度な運動

○直前期は必然的に机に向かう時間が増えるが、寝つきが悪くなるなどの悪影響が生じるので、勉強の合間などに身体を動かす

 

○学習の合間の適度のストレッチ運動も有効

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上記は受験生からの相談内容や私のこれまでの受験経験などを踏まえて体系的にまとめたものなので、

受験生の皆さんのお役に立てますことを祈念しております。