2024.5.20:UPDATE
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皆さん、こんにちは。
リーダーズ総合研究所・講師の板野です。
資格試験では、直前期の学習期間として3ヶ月を想定している受験生が多いことは前回記事でも触れたとおりです。
ただ、社会人受験生や家事を抱える受験生など専業受験生以外の場合、
●初学者 :1~2ヶ月
●リベンジ組:2~3ヶ月、が現実路線だろうと考えています。
直前期の1日は平常時の3日~5日分に相当すると心得て、"皿回し暗記術"を駆使するなど、コア知識を繰り返し記憶する必要があります。直前期の1日を無駄にしないためにも、前回御提案した学習戦略を踏まえて早期に学習計画を作成し、着実に実行することが重要になります。
そこで、今回の実践編では、昨年度のアンケートで最も回答の多かった直前期:3ヶ月を想定した学習計画を御提案したいと思います。
私自身、2019年度に行政書士試験を初受験した時は直前期を1ヶ月もとることができず、記憶の定着に苦労した経験があります。
必ずしも今回御提案する学習計画に従って実行する必要はありませんが、記憶をキーワードとして、リベンジ組だけでなく、初学者の皆さんも今回取り上げる学習計画を参考に各自で学習計画を立案していただけますと幸いです。
全体計画(学習計画ポリシー)
結論としては、直前期は短すぎるだけでなく長すぎても適切ではなく、試験日に成績のピークを迎える戦略及び学習計画が必要です。
そのように考える根拠として、当時の私の苦い経験を紹介しますと・・・、
行政書士試験の受験時
学習計画
受験勉強の開始が受験年の3月と遅く、10月末くらいまで基幹講座(リーダーズ総合研究所・竹内千佳先生が担当の上級ファンダメンタル講座を受講)の受講に時間を要していたため、直前期学習を開始したのは11月に入ってからとなった
私の失敗談
直前期が短すぎて記憶を定着する時間が圧倒的に足らなかった
例えば、共有に関する問題(令和元年度行政書士試験問題45)で、特別法である区分所有法の知識と混乱し、共有物の管理・変更の要件(管理:持分の価格の過半数、変更:共有者全員の同意)を誤解答してしまった。
⇒ 行政書士試験において区分所有法は学習対象外にもかかわらず手を出した結果、記憶が混乱した悪しき例(あやふやな知識に飲み込まれた例)
司法書士試験の受験時
学習計画
行政書士試験時の反省を活かして、直前期は受験年の2月から7つのフェーズに分けて学習し、1フェーズ毎に全科目・全分野を総復習(1フェーズ=1回転)
①プレフェーズ:2月13日~28日(全16日)
②第1フェーズ:3月 1日~31日(全31日)
③第2フェーズ:4月 1日~30日(全30日)
④第3フェーズ:5月 1日~20日(全20日)
⑤第4フェーズ:5月21日~6月10日(全21日)
⑥第5フェーズ:6月11日~25日(全15日)
⑦第6フェーズ:6月26日~7月2日(全7日)
私の失敗談
第2フェーズから第3フェーズに差し掛かるまでは非常に順調な進捗で、5月に受験指導校で会場受験した模擬試験でも総合評価A(1090人中64位)となり、その後完全に油断してしまった。
⇒ 下がり始めたモチベーションを回復するのは容易ではなく、追いかけてくる受験生の足音が聞こえ始めて焦りを感じ、更に勉強が空回りした(第5フェーズくらいからどうにか回復)
結論
こうした私の経験も踏まえると、試験日当日に自己の成績がピークを迎えることができるよう、学習計画を策定する必要があると考える
○直前期に記憶の定着を図らないと、緊張感のある本試験会場では瞬時に思い出すことができない(その期間が短すぎると記憶が定着しない)
○直前期を長く採ってしまうと、途中で息切れしてモチベーションをリカバリーするのが大変
全体計画(マクロ的視点)
全体計画は、リーダーズ総合研究所の合格メソッド"3ステップ学習法(理解⇒集約(移行)⇒記憶)"をベースとして構成しています。
Q1 3ステップ学習法とは・・・
A1 知識を「理解」⇒「集約」⇒「記憶」の3ステップで学習する学習法。時間のない社会人受験生に配慮して、山田斉明先生が考案された効率的学習法で現在は5ステップ学習法へと進化させている。
なお、理解フェーズでは、葉の知識を記憶することに拘らず、直前期学習の準備として森⇒木⇒枝の知識を体系的に記憶することを優先して下さい。フレームが不安定な状態で闇雲に葉の知識を記憶してもすぐに抜けてしまうし、体系的に整理できていないので(瞬時に)引き出すことができません。
また、移行フェーズ(集約フェーズ)では各自が使用しているテキストと最後まで心中する覚悟でコア知識をまとめていって下さい。
模擬試験や答練を受験すると解説冊子に様々なまとめ図表が掲載されており、自分の使用しているものと異なる場合が多いです。このような場合、受験生の判断で覚えやすい方を記憶すれば良いと思いますが、ある程度記憶が定着した段階であれもこれも記憶するのは混乱する元となります。
ある程度記憶が定着した段階では情報を一元化することが重要となりますので、もし手元のテキストでは不足する情報を入手したのであれば、コピーした情報を貼り付けたり必要な情報を書き込んだりするなど、情報を一元化していきましょう!
最後に、記憶フェーズでは、手元のテキストに一元化した情報をひたすら記憶することになります。記憶は単調な作業なので面白くありませんが、根気よく繰り返していくことが重要です。
なお、理解・移行フェーズ直前期で一気に暗記しようとせず、フレームワーク手法を活用して直前期まではフレーム(森⇒木⇒枝)となる骨格を記憶し、記憶フェーズに突入したら、そのフレームに葉の知識を1つずつ収納していくイメージで記憶に努めましょう!
詳細スケジュール(ミクロ的視点)
理解フェーズ
戦略
受験指導校の受講生は担当講師から日頃の勉強法を教わっていることと思います。
また、独学受験生も直前期までは市販のテキストや過去問題集等を使って理解重視の学習に努めてきたと思いますので、私の方からのアドバイスは最小限度に留めることとし、ここでは基幹講座終了後の学習スケジュール及び具体の学習法についてお示ししたいと思います。
○現時点からお盆休みまでは理解度を上げることを優先する(記憶よりも理解重視)
○社会人受験生は、お盆休みはまとまった勉強時間を確保できる最後の大型連休と心得て、弱点補強など集中して勉強に取り組む
具体的勉強法
○弱点補強に努める。ひとえに弱点と言っても種々考えられるが、自分自身にとって理解度の低い科目・分野を抽出し、この期間に総復習(理解)することを目標とする
○闇雲に学習範囲を拡げず、重要度ランクや出題予想ランクを考慮して学習範囲を絞る
Q2 重要度ランクや出題予想ランクって何?
A2 受験界では様々なランクが散見され定義も異なりますが、ここでは以下の通り位置付けています。
○重要度ランク
出題予想に関係なく学習上重要度の高いテーマ・論点に付するもの
近年では受験指導校の講座テキストに付されている場合がある
○出題予想ランク
過去の出題サイクルや最近の法改正、政府の政策等から、各受験指導校において予想した出題可能性の高いテーマ・論点に付するもの
⇒ 重要度ランクと出題予想ランクの相関関係は下図の通り。重要度ランク及び出題予想ランクとも「高」の問題(下図左上)は正解できなければ、他の受験生と大きな差がつく
Q3 コア知識って何?
A3 コア知識とは、本記事中の定義であって、重要度ランクに出題予想ランクを加味した知識の集合体を呼ぶ。すなわち、重要度ランクの高い基本知識であっても出題頻度や傾向等から考えて出題される見込みが低い知識はコア知識ではありません。
移行フェーズ(集約フェーズ)
①お盆休み以降(記憶学習の幕開け、選択と集中)
戦略
○教材を1つに絞って情報を集中させる(複数の教材を使用すると、どこに書いてあったか検索するのに時間を要する。)
⇒ 心中できる教材を見つけて、情報を一元化し、直前期はテキスト(市販を含む)の読込みに主軸を置く受験生は何度も読み込む。過去問に主軸を置く受験生は当該問題に関連するテキストの図表(周辺知識)を貼り付けておくなど、情報を集中させて問題を解く度に確認する
○この時期は記憶フェーズへの橋渡しであること心得て学習に取り組む(理解が不十分な分野は丸暗記もやむを得ない)
○記憶の対象を闇雲に拡げない(特に、勉強時間がない受験生は闇雲に学習対象を拡げず、下記①②のコア知識に絞る)
具体的勉強法
○SW(シルバーウィーク)までの期間はフレーム(記憶の引き出し)を盤石なものにしつつ、全科目・全分野の記憶度を確認
○記憶学習の準備段階として、出題予想ランクにシンクロさせて記憶度ランクを5に分ける
▼記憶度ランク
①A :ほぼ完ぺきに記憶できている
②B+:記憶が一部不十分(A・B+の基本知識)
③B :記憶が一部不十分(それ以外の知識)
④C+:ほとんど記憶できていない(A・B+の基本知識)
⑤C :ほとんど記憶できていない(それ以外の知識)
Q 記憶度ランクって、重要度ランクや出題予想ランクとは違うの?
A 記憶度ランクは記憶の定着度を示すもので、学習対象に関する重要度ランクや出題予想ランクとは異なり、受験生の記憶の状況に応じて付される主観的なもの
留意事項
○受験指導校の基幹講座等の受講が遅れている場合には、まずは全ての講座を受講することを優先(初学者又は通信講座受講生に多いと思われる)
○独学受験生の場合は、直前期とそれ以外の期間との区別をしづらいと思われるが、直前期には記憶の範囲を明確にし、その範囲を繰り返し記憶
○重要度ランクと出題予想ランクは明確に区別する(学習上重要度の高い分野でも出題予想ランクが低ければ、学習の優先順位を下げても良い)
⇒ 記憶度ランクとシンクロさせるべきなのは、出題予想ランク(≠重要度ランク)の方
②SW期間(記憶の底上げ)
戦略
○①の期間内にマークした記憶度の低い分野(特に、記憶度C+及びB+)を中心に記憶していき、ここまでに一度は全ての科目・論点を記憶する
○理解の不十分な分野についても記憶を重視する(必要に応じて丸暗記もやむを得ない)
具体的勉強法
○学習の優先度は以下の順とし、最低でも記憶度C+及びB+は全て記憶する
C+ > B+ >> C > B
○一度記憶しても忘れることを覚悟しておく(記憶が定着しないからといって決して焦らず、本試験まで繰り返し記憶していけば良い)
○記憶度C+やB+が相当多く勉強が追い付いていない受験生は、思い切ってC及びBを捨てる(この時点で多くの受験生は記憶度Aの知識はほとんどないはず・・・)
記憶フェーズ
①SW以降10月3連休まで(記憶の定着)
戦略
○“皿回し暗記術”の実践
○同じ科目・分野にいつまでも固執せず、回転数を上げて全科目・全分野を全て記憶していくことが重要
○受験生の可処分時間内であれば、朝夜の通勤時の電車内や昼休憩時間など、時・場所を選ばず、しかも隙間時間を活用して記憶できるメリットを活かす
具体的勉強法
○記憶を定着させるための下記フォーミュラを意識して、全科目・全分野を1周する(ここまで1周目)
短い時間 × 回転数 × 勉強量 = 記憶力
②10月・11月3連休(学習遅れの挽回)
戦略
○記憶の作業が遅れている場合には10月・11月の3連休を有効活用し、遅れを挽回する
③10月3連休以降(“皿回し暗記術”の実践)
戦略
○本試験までのラスト1ヶ月(ここから記憶を定着させるぞ!)
○全科目・全分野を満遍なく復習し、全ての皿(=コア知識)が回っている(=記憶できている)状態を作り上げていくことが重要(“皿回し暗記術”の実践)
○短期間で全科目・全分野を復習するには、付箋を活用し、復習の度に学習対象(情報量)を減らしていく
具体的勉強法
○初学者は1日1科目ずつ、2回目以降の受験生は1日2~3科目を目安に学習し、最低でも全科目・分野を3回転以上させる(ここまで4周目以上)
○記憶が不十分な箇所に付箋を貼っていく(記憶が定着したらはがし、次回以降は学習対象から除く)
④直前1週間(最後の決戦)
○ラスト1週間!(まだまだ成績は伸びる!伸ばす!)
⇒ 私の経験上もラスト1週間でも成績は伸びます。最後まで自分を信じて勉強する
○当日の持ち物をチェックする
○最後の1週間は不安や緊張から勉強が手につかないことがあるので、社会人受験生の場合、年休を取れるのであれば、その時期を工夫する(前週の3連休に抱き合わせるなど、年休の有効活用)
○勉強も大事だが、しっかり食事や睡眠をとるなどの体調管理を忘れずに(心技体を整える)
具体的勉強法
○全科目・分野を超高速で1回転する(ここまで5周目以上)
○付箋を貼った箇所を中心に記憶する(最終的には、全ての付箋をはがせることが目標)
⇒ ちなみに、私は行政書士試験も司法書士試験も試験日当日まで全ての付箋をはがすことはできませんでした。
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これから学習が進むと心技体の内、心、すなわち精神面でのタフさが求められますが、自己の学習計画に従って着実に進めていくと自信になります。
受験生の皆さんの合格を祈念いたしております!