「THE END OF THE WORLD/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「史上最悪の改悪が行われたtwitter、山手線は止まって遅刻しかけるわ、モバ充は勝手にスイッチオンになって全て切れるわと、色々と散々だった木曜日でした。」

 

どもです、お疲れ様です、今回はMUCCの12ndアルバム「THE END OF THE WORLD」のレビューとなります。久々にメジャーに戻ってのリリースとなった前作は、「カルマ」の賛否点のひとつでもあったデジタル要素を上手く楽曲と融合させ、さらにはこれまでにやったこと無い楽曲にも果敢に挑戦したMUCCの新たな姿を見せてくれたアルバムでした。それに続く今作では、先行シングルの時点で「終わり」というワードが目立ち、どこか不穏さを感じさせます。果たしてこのアルバムでは何が待ち受けているのでしょうか。

 

アルバム「THE END OF THE WORLD」のポイント

 

・終わりの意味合いで使われた「HALO」、そして「World's End」「ENDER ENDER」、先行シングルが全て「終わり」で統一されており、アルバム曲も全ての楽曲に「終わり」が関わるという徹底ぶり。とにかく「終わり」がテーマというアルバムですね。

 

・歌詞もこれまでと比べるとシニカルなリリックが多く、全体的にバラエティさがありますが、さらに懐かしさを感じさせる楽曲も多いため、なんとなくあの頃を思い出す方も多いと思います。最後の気になるあの曲も未だナゾに包まれたまま。何が待ち受けているのでしょうか!

 

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青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「THE END OF THE WORLD」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

アルバムタイトルでもある1曲目はなんとブルースナンバー。いつものような、かなり激しい楽曲が来ると思っていたので、かなり意表を突かれました。バンドサウンドとピアノを交えて退廃した真っ白な世界を演出。どことなくですが、「スーパーペーパーマリオ」の「6-2 ある世界の終わり」にて、崩壊して全てが無と化したモノノフ王国を思い出してしまいます。

 

歌詞は「初老の男の世界が終わった」という出だしから始まり、人間の心と世界の闇への絶望を映した世界が特徴、歌詞を読み解くに、なにもかもをシャットダウンして自らの手で世界を終わらせた「初老の男」こそが実は主人公で、来世への期待を込めてこの現実世界から去ることで、このアルバムは幕を開けるという衝撃が眠っております。

 

歌詞も楽曲の濃密さも、更にはミクスチャーを入れた展開もあるので、あの頃の片鱗を強く感じられるナンバーでした。

 

 

2.「ENDER ENDER」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

31stシングル。1曲目の雰囲気は何だったのか、いやここからが世界の終わりの果てなのでしょう。MUCCらしい荒々しいサウンドを堪能することができる楽曲です。メタルコアとデジタルの融合、降り注ぐ複雑なキメを揃えた音の弾丸…、ライブでもかなり盛り上がりそうなナンバーですよね!!
 

「ENDER」はENDの人称表現がつき「終わらせる者」という意味があります。歌詞は蹴落とされて精神もやられて限界寸前の完璧だった君に一緒にこの世界を終わらせることを提案するシチュエーションでしょうか?

 

3.「Ms.Fear」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

前作「シャングリラ」に収録された「Mr.Lair」の姉妹曲。つまりは荒々しい暴れ曲です。ハードロックとメタル、2つの世界を馬跳びのようにぴょんぴょんと行っては戻るという展開で、哀愁漂うメロが鳴り響くサビでは途中で世界のチェンジを行うという、切り替えのタイミングが予測不可能且つ大胆なのが最大のポイントといっても良いでしょう。掛け声も用意されていてライブで盛り上がるナンバーですね。

 

歌詞はお金で得た関係で性行為を繰り返して堕ちていく内に愛の本当の意味を忘れてしまい、人間としての機能が終わってしまった主人公が映されています。どちらかというと歌詞の世界観は「G.G」の方が近いですね。

 

4.「HALO」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

29thシングル。ガレージロックを中心に進行していくのですが、メタルなど様々な展開が入り混じり、さらにそこにかなり濃いデジタルさを添えたナンバー。さらにメロディラインがキャッチーだったりと一筋縄ではいかないところが、如何にもミヤ楽曲らしいですよね。

 

「HALO」とは挨拶・そして始まりという意味ですがこの曲では「終わり」という意味合いで使われています。恋の終わりを迎え、大切な人を失って壊れてしまった主人公が空元気で無理矢理鼓舞している様が辛いですね。

 

5.「Tell me」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

達瑯のラウドロックナンバー。激しくハード突き進みサビでは一転してズッシリと沈みダークさを醸し出すバンドサウンドの2面性を堪能することができるカッコいい楽曲です。

 

歌詞はどんどん世界が終幕へ進んでいこうとする中で、生きていたいと願う主人公が目の前の孤独から抜け出せばどうすればいいのかと神に問いかける内容となっています。

 

6.「999-21st Centry World-」(作詞:YUKKE 作曲:YUKKE)

 

YUKKE作詞・作曲のギターリフで突き進む激しいハードロックナンバー。ハードに進行しつつ、サビではリズムが四つ打ちになり更にノリノリに拍車を掛けます。響き渡る掛け声はどうやらファンの物らしいですよ!

 

歌詞は不幸なことが起きても、終わりへ向かい世界は廻り続けるということへの不条理と、「999」の通り、銀河鉄道に乗って銀河世界へ自分だけでもと逃亡を図る主人公が描かれています。

 

このアルバムの時点では、YUKKEが作詞を手がけた曲が「心色」「Monroe」しか無かったので、この歌詞も新しい感覚でしたね。しかし、本作のコンセプトでもある「終わり」に合わせて書かれたリリックでもあるため、未だYUKKEの世界は謎が多いです。

 

7.「369-ミロク-」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

3の倍数繋がりで繋がり、再び達瑯のナンバーへ。今度は歌謡ナンバーとなっており、どこか聞き覚えのある独特で複雑なサウンドとなっています。それもそのはず、この曲は70年代の音楽好きなら知らない人はいない程、有名な井上陽水の名曲「氷の世界」を意識して制作されたということで、とにかくコーラスが前へ前へと出てきて駆り立ててくる印象がありますよね。

 

タイトルは弥勒菩薩から取られていますが、歌詞ではミルクと読んでおり、しかも歌詞にはあまり関係ないというパターン。歌詞は主人公の裏切りという最悪な形での恋の終わりが描かれており、「君だけはそんなことない」と信じていても、結局裏切られて終わってしまったという残酷なシチュエーションです。本家「氷の世界」の「寒さしか信じられない」というシチュエーションとも共通点が見受けられて、なんなら、歌詞にそのまま「氷の世界」が出てきたりと達瑯なりの井上陽水へのリスペクトを感じます。

 

8.「JAPANESE」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

さぁ、アルバムもいよいよ終盤へ。まず最初に現れたのはストリングスを交えた壮大なロックバラード。広がる暗黒世界に射した一筋の光へ向けて傷つきながらゆっくりと歩いて行く姿が映されているような壮大な楽曲です。この曲、1曲目同様、久々に初期ムックの面影を強く感じられる楽曲で、歌詞を手掛けたミヤの訴えを達瑯が圧倒的な表現力で歌います。

 

タイトルが「JAPANESE」ということで、普通じゃ無い雰囲気を漂わせるこの楽曲、歌詞は戦後直後とこのアルバムが発売された2014年当時の日本人を比較した内容となっております。「批判・罵倒・中傷 あらゆる激痛が見えない銃が放たれて、打ち抜かれた後に気づくんだ」というリリックが核心を突いてきました。人間は新しい人間の傷付け方を覚えた故、「人間としての終わり」へ向かっており、その惨状に誰にも気づいていないという事実を、ミヤはこの歌詞を通して伝えたかったのかもしれません。

 

訴えも虚しく、この後。この状況は悪化。このような見えない銃によって、実際に命を絶ってしまったり、精神的に殺されてしまい再起不能になってしまう人もさらに多くいる状態になってしまっているのが現代です。最近は人気インフルエンサーに取り上げられてしまったら最期、大量のネットリンチに晒されるという最悪な状況が新たに生まれてしまいました。

 

9.「Hallelujah」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

緊張感があるギターと壮大なコーラスに乗せて駆け抜ける荒々しいラウドロックナンバー。ギターリフにバロックの香りを感じるのは、やはりタイトルに合わせたからでしょうかね。

 

タイトルのハレルヤは「賛美する」という意味ですが、完全に皮肉の意味合いでつかわれており、このパターンは名曲「君に幸あれ」を思い出させますね。歌詞は前曲の内容も踏まえて、身の回りの不条理、世界は1つになることは無いと知った主人公が、この手で人生を終わらせる為に飛び降り自殺をしている瞬間が描かれております。主人公は優しい性格で「平和」について考えて考えて考え抜いて生まれた決断がコレなのでしょう。あまりに辛く残酷です。しかしながらこの主人公が死んでも尚、世界は知らん顔して今日も回り続けるのです。ああ無情。

 

10.「World's End-In its true light-」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

30thシングル。シングルではバンドサウンドのみで構成されていましたが、「-In its true light-とサブタイトルを付け加えた今回はシンセが加わりデジタルさが増しております。サウンド面はロックに元気よく疾走するのに対し、メロディラインに昭和の香りを強く感じられて、懐かしさを感じさせるのが特徴です。ギターソロのメロの浸透力とか本当に好き。

 

歌詞の豪華客船は「地球」でしょうか。船が向かう世界の終わりと我々が迎えたい一日の終わり。辛いことが多いけど、本当に辛くなってしまったら、目の前の状況を終わりにしてしまえば良い(つまり逃げてしまえば良い)というメッセージ性が強い応援歌となっております。

 

11.「死んでほしい人」(作詞:達瑯 作曲:達瑯・ミヤ)

 

濃密だったこのアルバムの最奥地。このタイトル、このアルバムに於けるコレまでの楽曲、さらにはアルバム発売前の音源視聴コーナーではこの曲だけ無音で聴けないという完璧な初期ムックの大復活への伏線を張りまくっていました。が、完璧なまでの大どんでん返しが今、ここで行われます。

 

特筆すべき点は「『死んで欲しい人』なんてこの世界にはいらない言葉」という部分ですよね。初期ムックの集大成ともいえる「朽木の灯」から10年。以降、光の世界へ飛び出したMUCCというバンドは、様々な出逢いを経験をして、ここまで成長した証とも取ることができます。この華麗などんでん返しに、初期ムックの頃から応援してきて、彼らのの音楽性の変化を直で経験してきて、受け入れてファンを続けてきた方は絶対に涙したと思います。

 

終わりを歌ってきた最後の最後に新たな生命の始まりで終えたアルバム、中盤で死んでしまった「あの子」を初期ムックに置き換えると、あの頃の自分たちへの鎮魂歌ともとれるような気がして、かなり深すぎる楽曲です。

 

 

いやぁ、これはこれは驚かされました。さて収録曲の全てを「終わり」で統一して、最後の最後に「始まり」で終わらせた壮大なアルバム、いかがだったでしょうか。全ては「死んでほしい人」に繋げるための完璧な作り方が印象的で、だからこそ、この曲が深く深く感じられました。勿論、他の「終わり」を描いた楽曲にもそれぞれちゃんと楽曲に深い意味があるということも忘れてはいけません。様々な場面で起こる「終わり」、理由も様々でリアリティがありました。

 

さて、次回は「6」以来となるミニアルバム「T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-」のレビューとなります。皆様も今回もありがとうございました!