「Jealousy/X」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

brilliant-memoriesのブログ

ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「金曜日は大学が午後からなので、昼食時に必ずアンパンマンを見るのですが最近ばいきんまんがぶっとばされない回が多くなったような気がします。やはり少し違和感ありますね...」

 

どうもです。今回は1991年に発売されたXの3枚目のアルバムでもある「Jealousy」をレビューしていこう思います。「X JAPAN」改名前のX最後のオリジナルアルバムであり、ミリオンヒットを獲得した今作。あの歴史に残る前作「BLUE BLOOD」を世に放ち、世間からかなりの注目が集まる中で出された今作は、メインコンポーザーであるYOSHIKI様以外のメンバー曲が多く収録されており、Xの音楽性の豊富さを堪能できることが最大の特徴です。どのような世界が広がっているのでしょうか!

アルバム「Jealousy」のポイント

・収録曲はYOSHIKI曲が4曲、HIDE曲が3曲、TOSHI作詞・TAIJI作曲の曲が2曲、PATA曲が1曲。メンバー全員が作詞・作曲に参加しており、メンバー曲もそれぞれの自身のカラー全開、バラエティな世界が映し出されます。また、収録曲の大半が5分越えの大作となっているので、凝縮されたメンバーの個性や嗜好を堪能することができます。

 

・また、前作以降、TAIJIとHIDEが拘っていた「音質」にも大きな変化が生まれました。これも今作を語る上では欠かすことの出来ないポイントです。前作以前では存在感こそ強かったものの、それでも他の楽器達の爆音に埋もれ気味だったベースがハッキリと聴こえるようになり、ドラムとベースが生み出すリズム隊の厚みを堪能することができます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「Es Durのピアノ線」(作曲:YOSHIKI)

 

次曲へ繋がるインスト。YOSHIKI様のピアノとストリングス隊が絡み合い、徐々に緊張感を纏い展開されていきます。そして「Es Dur」(ミ♭)の音階に着いた途端、絶望に崩れ落ちてこのアルバムは幕を開けます。高校時代に音楽の授業を取っていれば、調を学ぶ機会があると思いますが、「Es Dur」のワードが出てニヤリとした人がいたらチャンス!、その人はきっとXのファンでしょう。

 

2.「Silent Jealousy」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

今でもX及びX JAPANを語る上では欠かすことのできないこの曲は、後に6thシングルとしてリカットされます。この曲で「X」としては最初で最後の紅白出場を果たしました。

 

嵐の前の静けさを表現したようなYOSHIKI様のピアノソロのから始まりなだれ込む本編は頭から最後のまで容赦ない殺気が聴き手を支配します。音質改善によってパワーアップしたメタルサウンドに絡み合うスリリングなストリングス。ベースソロ、ピアノソロ、息の合ったツインギターソロが交差する展開に展開を重ねるドラマチックな世界がたまらないです。

 

タイトルを訳すと「静かなる嫉妬」ということで、平然を装う表面とは裏腹、自分を捨てた恋人へ対しての嫉妬に塗れた内面的な世界が描かれており、ついに理性を超えて自分でも制御不能になり錯乱状態に陥る状況が描写されています。今まで愛していたものが突如として絶望となり突き刺さる様と暴力的な暗喩が重なり血生臭さが増幅した歌詞も楽曲を引き立てています。

 

現在でも、「紅」と共に甲子園の応援歌に使われていたり、太鼓の達人にも収録されるなど、現在でもバンドの代表曲の1曲として高い人気を誇る名曲です。

 

3.「Miscast」(作詞:HIDE 作曲:HIDE)

 

ここでHIDEちゃんのロックンロールナンバーが登場。攻撃的なサウンドとは裏腹、展開や歌メロがキャッチーなのが、またギャップですね。メロディアスなBメロから直結するサビは掛け声としてファンが参加できる箇所が多いので、かなり盛り上がれますね。たくさんの技が予測不可能な程に現れるピエロのようなギターソロも必見です。

 

歌詞は人々にヨイショされまくって、有頂天になっている人間に対しての皮肉がこれでもかと炸裂。現代で言うならば、人気()YouTuberをはじめとしたインフルエンサーにも刺さりそうですし、なんなら2024年の社会にもブッ刺さりそうなリリック。これはHIDEちゃんの先見の明なのでしょうか?それとも…

 

4.「Desperate Angel」(作詞:TOSHI 作曲:TAIJI)

 

いきなりの壮大なゴスペルにドキッとされてから本編へ。TAIJIのアメリカンな嗜好がまるごと反映された骨太ハードロックナンバーです。ハーモニカが鳴り響き加速し始めそのままA・Bメロでは疾走、一変してサビではノリの良さを強調して、そこからまた疾走…といった拍の切り替え方が非常にやみつきになります。Aメロのマイケルのような「早口×高音×英語」という鬼のコンボが揃った箇所をサラッと歌い上げたり、曲調からか今までとは少し違うシャウト(B'zのようなシャウト)をかますTOSHIのボーカルに注目して欲しいです。

 

5.「White Wind From Mr.Martin ~Pata's Nap~」(作曲:PATA)

 

次曲に繋がるインストゥルメンタルで、PATAが単独で作曲を手掛けた唯一の楽曲となっており、かなり貴重です。2本のアコギから生まれるこの空間は安眠の世界に連れて行ってくれるような癒やしを持っています。フィーリング音楽として聴くのもオススメですね。

 

6.「Voiceless Screaming」(作詞:TOSHI 作曲:TAIJI)

 

やってまいりました。個人的に、この曲こそがこのアルバムの真骨頂だと思っています。HIDEちゃんとPATAを唸らせたTAIJIの生みだした繊細なギターテクニック、そしてX JAPANに改名以降、現代に至るまで唯一のYOSHIKI様以外のメンバーが作曲したバラードです。TAIJI、TOSHI、クルーの3人のアコギの音色を核に木管楽器やストリングスの音色を取り入れ、深い森林の中にいるような美しいワルツ・バラードに仕上がっています。

 

そしてこの曲のもう一人の主人公はTOSHIです。レコーディングで喉を壊してしまった実話を元に、自身が描いた歌詞を苦しそうに、悲しそうに、そして辛そうに歌うのですが、Xのどの曲よりもTOSHIの歌声に感情表現が曲越しに感じます。特に終盤の絶叫は鳥肌モノです。まさか此処に物凄い名曲が隠れていたとは。。。ライブではPATAとTAIJIが奏でるギターに乗せてTOSHIが歌います。

 

7.「Stab Me In The Back」(作詞:白鳥瞳 作曲:YOSHIKI)

 

「I'll KILL YOU」を超えて「オルガスム」を超え...それでもまだまだ高みを求めたXが辿り着いた史上最速のスラッシュメタルナンバー。前曲とのギャップも相まって研ぎ澄まされたキレッキレの気迫と過去最狂の殺気を生み出します。HIDEちゃん曰く「YOSHIKI殺し」と言われる荒々しいドラムにきっちり応えるTAIJIのベース。リズム隊の上を縦横無尽に駆け回るギター陣と言った、まさにみんなが主役のナンバーですが、その中でもPATAのギターが一際、異彩を放っています。このスピードの中でこれだけの「技」を入れても尚、リズムをキープし続けられる職人術もこの楽曲の見所のひとつです。

 

歌詞も「後ろから突き刺せ」というこのド直球さ、性行為中において、この(ドS)主人公がどれだけ相手に快感を求めているか...が描写されております。こちらも過去最高に生々しいですね。今作には性行為中に快感を求めすぎて欠損プレイにまで発展する「Sadistic Desaire」が再録されて収録される予定だったと聞きますが、入るとしたらおそらくこの後でしょう。

 

ライブの映像を観てみるとファンとの掛け合いは勿論、珍しいPATA・TAIJIのバックコーラス、HIDE語も飛び交い(勿論、良い意味で)地獄絵図と化す客席を観るのも最高ですね。メンバーの体力的にも今後この曲が演奏される機会はほぼ無いと思いますが、スピード面と破壊力の高みを極めた渾身の楽曲、是非聴いて観てください。

 

8.「Love Replica」(作詞:HIDE 作曲:HIDE)

 

ワルツの姿をしたインストゥルメンタル。「HIDEの部屋」に映る景色を反映したような世界観が特徴です。日常に見かけるような様々な「音」をサンプリングしており(例えばゴミ箱を叩いた音とか)、全編において金属音がリズムとなり、バックで流れています。メロディラインはギターが担当。キャッチーなメロが心地よさを生み出しております。このメロはどうやら、サーベルタイガー時代から存在していたらしく、満を持して世に解き放たれたということですね。さらに、そこにナレーションが乗るのですが、全編フランス語。「自分が素敵すぎて自分に嫉妬する」というナルシストなシチュエーションがまたHIDEワールドなんですよね。これらのクセ強要素が一斉に絡み合うのですが、これが絶妙でなんですよ。果たして此処は「ユートピア」なのか、将又「ディストピア」なのか⁉

 

9.「Joker」(作詞:HIDE 作曲:HIDE)

 

前作に収録された「CELEBRATION」の血を引く、HIDEちゃんのポップロックナンバー。後のhideソロにも通じるノリノリなサウンド、2番入りの「パパパパッと見は」の「パパパ」とか特にHIDEちゃんカラー全開ですね。1番の「no!」やサビの「Joker!」、終盤の「loser's loser」などなど!ファンが参加できる掛け合いもたくさん用意されていたりして非常に楽しい楽曲となっております。歌詞は賭け事で負けた人をHIDEちゃんらしいワードをふんだんにチョイスして見事に表現。賭け事において状況を一変させるほどの威力を持つ「切り札」として扱われるジョーカーに期待を膨らませるも無惨に砕け散る…それでもこの主人公は今日も此処はやってくる事でしょう。後に今作に収録できなかった「Standing Sex」と共に、両A面7thシングルとしてリカットされることとなります。

 

10.「Say Anything」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)


後に8thシングルとしてリカットされた、このアルバムのラストを飾るYOSHIKI様のバラードです。ピアノとストリングスを中心としたスタイルの楽曲なのでバンドサウンドはいつもよりバックに徹しているのですが、それでもギターソロでは美しいツインギターソロを奏でてくれます。歌詞は2度と会えなくなってまった人に対しての問いかけと言うことで、悲しさが漂う曲の世界観をさらに際立たせていますね。締め切りが過ぎても尚、かなりギリギリのタイミングまで制作を行って完成したというエピソードがありますが、満足のいかないまま完成してしまった事からYOSHIKI様はこの曲を「失敗作」として扱い、不遇な扱いを受けてしまっている印象があります。それでもこの曲のクライマックス感やドラマチックな展開、吐血したと噂があるほどの連発されるTOSHIのハイトーンの魅力といった様々な要素が映るこの曲はまさに名曲です。終盤にはYOSHIKI様の語りがあり、本来ならここからあの「ART OF LIFE」へ繋がるという構成だったとのことです。

 

というわけで、全10曲聴いてきましたが、改めて思ったのは「X」は全員が主役ということです。それぞれのメンバーにカリスマ性があって、それぞれのバラバラなカラーを活かした幅広い楽曲が制作できるということを全面的に押し出したアルバムだと思いました。前作「BLUE BLOOD」はメタリックに攻めるという「X」らしい音楽性で人気を得たからこそ、今作のようなチャレンジが出来たのだと思いますね。「X」の音楽性のバラエティを堪能したいならこのアルバムがオススメです。(個人的にはTOSHI作曲の曲も聴きたかったなぁ...と思いました。ソロ活動の方ではでは作曲も出掛けているので、XのメンバーでTOSHIの世界観がどう表現されるかが凄く気になります...)


本来このアルバムは2枚組の構想があったようで、今回の収録曲である12曲に「Standing Sex」、「Sadistic Desire」の再録、そしてあの超大作の「ART OF LIFE」を収録予定だったようですが、様々な事情が重なった結果、これらの曲は本作への収録が見送られ、「Standing Sex」は「Joker」と共にシングル化、「Sadistic Desire」は「Silent Jealousy」のカップリングとしてそれぞれリリースされ、「ART OF LIFE」はX JAPAN改名後に1曲のみのフルアルバムとしてリリースされました。

 

今回はここまで。ありがとうございました!、次回もよろしくお願いします!