近年、歯科医療の現場でも患者さん毎にグローブを交換することが求められており、これを実行する医院も少しずつ増加しております。
私の場合、卒業後すぐに大学病院の口腔外科でお世話になりましたので、患者さん毎にグローブを交換することに対して抵抗はありませんでしたが、コスト面や長年の習慣などからグローブの交換は破けてから、という考えの歯科医師が依然多いのも現実であります。
そんな中、国も4月の保険点数改正でついに感染対策に対する取り組みを行っている医院に対して評価をする旨の保険点数を本格的に導入することが決まりました。
また我々医療従事者は、使用しているグローブが医療用グローブ(手術用、歯科用、検査・検診用の3種あり)か作業用グローブ(食品衛生規格品など)かを確認をし、これからは歯科医師や歯科衛生士は皆医療用グローブを使用する時代に入ったと考える方がよいと思っています。
国が言う、「グローブを患者さん毎に替えましょう」というのは前提として、「医療用グローブ」ということであり「作業用グローブ」ではないと考えるのが普通でありましょう。
医療用グローブの品質に関しては、JIS規格で手袋の寸法や水密性(ピンホール試験)、性能値等のAQL(合格品質水準)が明確に定められています。
これは、作業用グローブや家庭用グローブとは異なるものであります。
しかしながら、歯科業界におきましてはこのAQLをクリアしていないグローブが各歯科材料販売業者などから販売されており、医療用グローブと作業用グローブが混在しているのが現状であります。
もちろん、グローブの肌触りや素材の厚み、滑りなどの使用感も重要ではありますが、それよりも医療人として優先すべきことは医療用としての規格をクリアしている製品であることを確認することだと考えております。
しかし、医療用グローブであっても未使用時に既に小さな穴(ピンホール)が存在していることは知っていなければなりません。
JIS規格におけるAQLは、水密性(ピンホール試験)は手術用1.5以下で歯科用2.5以下と規格されています。AQL1.5とは例えば1万枚製造した中から80枚のサンプルを抜き取った場合に不良品が3枚以下だということになります。
また、ピンホールが元々無くとも使用時の化学的劣化や物理的なダメージにより小さな穿孔が起きる可能性も示されております。なお、その対策としてグローブの2重装着が推奨されており、医療従事者に対し行ったアンケートでも2重装着の操作性(装着感)に8割が「違和感なし」と回答をしています。
以上より、我々歯科医療に携わる者は信頼性の高い医療用グローブを使用し、観血的処置などの際には必要に応じてグローブの2重装着を行うのが、SSI(手術部位感染)などから患者さんを守り、同時に術者も守ることに繋がるものであると考えられると考えております。
以上、「そのグローブは、医療用グローブですか?」のお話でした。