※この記事は、『獣医師は国家試験合格し一定水準を超えていればOK 2年前の国家戦略特区WGヒアリング(その2)』
http://ameblo.jp/brendy6m/entry-12284116177.html
の続きです。
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今からほぼ2年前の平成27年6月8日、「国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)」をテーマとして、国家戦略特区WGヒアリングが東京・永田町合同庁舎7階特別会議室おこなわれました。その時の議事要旨が以下のURLで公開されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf
文科省の1階にある職員食堂入り口のメニュー陳列。
http://blog.goo.ne.jp/stanza24/e/d0b57af000c0680c904f0d60bbc713d0
何度か利用したことありますが、まあまあ、「ふつー」の味でリーズナブルな値段です。昔の旧文部省とか旧科学技術庁とかの食堂よりはおいしいと思いますね。特に、旧科学技術庁の職員食堂はまずくて、まずくて、ひどかったはずです。職員がほとんど利用しないという、、、笑 「ふつー」で十分。「ふつー」が一番♪
WG委員として、原英史委員(株式会社政策工房代表取締役社長)、本間正義委員(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)、八代 尚宏委員(国際基督教大学教養学部客員教授、昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授)の3名が出席しています。
関係省庁として、文部科学省高等教育局専門教育課の北山浩士課長、牧野美穂課長補佐、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課の藁田純課長ほか課長補佐2名が出席しています。
さらに、WG事務局として、内閣府地方創生推進室の藤原豊次長、富田育稔参事官ほか2名が出席しています。
2年も前のこのWGヒアリングの議事概要を読むと、初めは、WG委員・事務局に対して強く抵抗する文科省側、それに追従する形で文科省をヨイショする農水省の姿が描かれていますが、
途中で、国家資格試験で一定以上の質が担保された獣医師が増えた場合に何が問題なのか、改めて、繰り返し、その理由をWG委員から問われ、文科省はたまらずに農水省に話を振るが、農水省側から「はしご」を外され、獣医学部新設を文科省の告示で規制するという文科省の既存の枠組みには明確な根拠がないことが明らかになっていく様子、すなわち文科省側の考えが破綻していく様子が見て取れます。
それにも関わらず、ほぼ2年後の2017年年5月25日の記者会見で、前川喜平・前文科事務次官は、次のように述べています。
「本来なら、農林水産省から獣医の人材需要への明確な見通しが示されるべきなのに、それは示されず特例を認めることになってしまった。極めて薄弱な根拠のもと認められた」
2年も前に文科省自身の考えの方が根拠希薄であることが明らかになり、既に瓦解しているのに、多くの国民がその事実を知らないと思ったのか、あるいは、いちいち過去の国家戦略特区WGの議事禄にまで目を通さないとたかをくくったのか。
前川前事務次官は、その事実には触れず、既に瓦解したはずの旧態依然として自省の考えを、さも正論であるかのごとく、公言している、、、、ブログ主はそう感じました。
さて、この議事概要は長いので、今回を含め3つのブログ記事にわけて掲載していきます。前回に引き続き、今回が3つ目で、議事概要の最後の部分になります。なお、読みやすさを考え、文科省関係者の発言を濃い赤茶色で、農水省関係者の発言を濃い緑色で、表現することとします。
○八代委員 獣医師というのは狭い世界であって、例えば極端な話ですけれども、人間の医者がもうからないからペットの医者に行くという人がいたら、かえってレベルの高い人が行くかもしれない。そんなのは別に受験者数がふえたから必ずレベルが下がるなどというものではないわけで、職業はいっぱいあるわけですからね。それはきちっとした質を担保する試験をつくっていけばいいわけで、職業選択の自由というのがあるわけですから。
例えば獣医師の資格を取って別に獣医師にならずに関連の企業に就職する人だっているわけです。結局、既存の団体の権限を守るものとしか我々は理解できないわけです。どこだってギルドの団体というのは競争者がふえないほうがいいから、それを所管官庁が反映して行動されていると(し)かみなせないわけです。
(ブログ主注)()内は追加。
○原委員 まだ根本論として獣医学部の新設についての告示での制約を課していることそのものがまず合理性がないのではないか、そこは見直したほうがいいのではないかということが1つあり、今回、それも含めて見直しをしっかりやっていただいたらいいのだと思いますが、一応時間が切れていますので、確認事項だけ先にさせていただきます。これは配っていただいた構造改革特区を御説明いただけますか。
○富田参事官 御説明します。お配りしました、頭に「別表3 関係府省庁において今後前向きに検討を進める規制改革事項等〔F分類〕」と書いてある紙でございますが、これは昨年の秋でございますが、構造改革特区の26次提案と言われるものでございます。そのときに愛媛県の今治市から大学の獣医学の設置の要請が構造改革特区でなされてございまして、それに対する対応方針の案として文部科学省に求めたところ、今、こういう案をいただいているという状況でございます。まだオーソライズされたものではございません。
○原委員 この検討の概要というところが文科省さんの案ですか。
○富田参事官 はい。この検討の概要というところが文科省の案として今いただいているという状況でございます。
○原委員 あともう一つ教えていただきたいのは、先ほど文科省さんと愛媛県、地元とで直接やりとりをされた中で、大臣から新たなライフサイエンスなどの分野でのことをまずきちんと検討してほしいというようなことをおっしゃられていたと思いますが、一方で、先ほど御説明されたのは、新しい分野は全部やっているのですよという話を個々にずっとお話しされていたと思うのですが、文科省さんから愛媛県さんには正確に何をしてほしいと言われているのですか。
○北山専門教育課長 私どもからは、まさにお手元の検討の概要というところに記させていただいている内容を、まず文部科学省としては愛媛県・今治市にお伝えさせていただき、ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要というのを明らかにしてくださいということをお伝えしております。
○原委員 それに対して、こういうのを提案していくと全部個別にやってみますというお話をされているという理解でよろしいのではないかと思うのですが、先ほど本間先生もおっしゃられた個別の分野について、それぞれ人数規模としてはどれぐらいになっているのかというのは、もし数字がなければ後でも結構なのですけれども、教えていただけますか。
○北山専門教育課長 個別の分野とおっしゃいますと。
○原委員 ライフサイエンスであるとか、越境感染症であるとか、そういった分野の勉強をして卒業されている方というのが毎年何人とかという人数規模がわかるのでしょうか。
○北山専門教育課長 全てモデルコアカリキュラムに基づいて卒業している方というのが定員ベースで930人毎年いるということでございますので、それぞれの分野を専攻している人が何人いるかということについては、情報を今持ち合わせておりません。
○牧野課長補佐 大まかに公衆衛生であればこのぐらいと、公務員獣医師全体としてはこのぐらいとか、そういった大まかな分野としてはわかるのですけれども、個別に食品管理に何人とか、そういうものは本当に個別に聞かないとわからない状況です。
○原委員 最初に伺ったときには、新しい分野のニーズというのは共有された上で、その具体的なプログラムをつくってくださいということを求められているのかと思ったら、そういうことではなくて、文科省さんのお考えとしては新しい分野などは存在しないだろうと、ニーズはないでしょうというようにお考えになっているという。
○牧野課長補佐 そこまでは言っていませんけれども、既存の獣医師養成の分野に関しては少なくとも今足りているというように我々は農水省さんから聞いておりますので、その上で関係者も納得するような、これは新しい構想だというようなものを具体的な需要の数までも示した上でお示しいただければ、こちらとしても一緒に検討していきたいということでございます。
○原委員 挙証責任がひっくり返っている。
○八代委員 それは文科省にとってリスクがあるわけですね。需給の必要性ということについて全部農水省に丸投げしておいて、もし訴えられたりしたらどうなるのか。やはり告示でこのような重要なことをそもそも制約しているというのが問題で、場合によっては、これは獣医の問題だけではなくて、医師、歯科医師も含めて行政手続法みたいな形で問題が広がるリスクは当然あるわけですね。
○原委員 ですから、新しい分野への(需要を提案者側が示して)というところに行く以前に、そもそも告示についての見直しが必要ではないかということがあり、新しい分野の対応というところについては、本当にそのニーズが満たされているのか。
(ブログ主注)()内は補足。
○本間委員 そこは例えばそれぞれの項目について、今、どういう対応をしているか、獣医師の何人がその分野に当たっているかというようなことを示していただかないと、十分足りているということにはならないと思います。
○原委員 なので、そういう根本的な議論が残っている状態なので、そこはまた引き続きやらせていただく必要があると思いますが、一方で、成長戦略の文章というのは早目に決めないといけないのですね。これは拝見している限りでいうと、構造改革特区の文案で示されているのと、そう根本的なずれはないような気がするのですが、もう少し建設的な文章調整をしていただけるといいのではないかなということで、引き続き。
○藤原次長 事務局もそういった認識です。構造特区のほうでも、まさに特区の入り口でございましたが、先ほど申し上げたように全国的見地ということなのかもしれません。そういった御提案を頂戴している中で、これも最終的には総理が本部長であります構造改革特区本部のほうで対応方針として決定しますので、政府決定になり得る文章を文科省さんからいただいている中で、同じ提案を文科省さんはこう考える。
私どもは同じ提案をこの前ヒアリングをさせていただいて、委員の方々の御指示をいただいてこういうように考えるということですので、原先生が今おっしゃっていただいたように、そんなに根本的に違うみたいな話では全くないと思いますし、そこはまさに私どもの案を加除修正、取捨選択していただくということだと思っておりますので、委員の方々に御相談しながら、また調整を早めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○原委員 はい。では、よろしいですね。
どうも遅い時間に済みません。ありがとうございました。
この議事禄を読まれた方なら、現在、国家戦略特区を用いた愛媛県・今治市の獣医学部新設提案に関して、いかに文科省側の言い分に根拠がないかが一目瞭然だと思います。
また、前川前事務次官は次のように主張しています。
「本来なら、農林水産省から獣医の人材需要への明確な見通しが示されるべきなのに、それは示されず特例を認めることになってしまった。極めて薄弱な根拠のもと認められた。行政が歪められた。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052602000138.html
(内閣府に対し)
「文科省に責任をなすりつけるのは言語道断。」
http://www.sankei.com/life/news/170615/lif1706150061-n1.html
ですが、2年前の国家戦略特区WGヒアリングの議事概要から、
「本来なら、農林水産省から獣医の人材需要への明確な見通しが示されるべき」というのは文科省の自分勝手な言い分に過ぎず、
農水省は、あくまで、獣医師試験という基準を用いて、免許を与える獣医師の質を監視するだけであり、獣医学部新設規制は農水省には関わりないという立場を繰り返し述べていたことがわかります。
結局のところ、長年おこなってきた獣医学部新設規制について文科省側は「極めて薄弱な根拠」しか持っていないということが明らかです。
別の視点でこれを捉えるならば、文科省に、内閣府と農水省を言い負かす能力も、明確な根拠も、なかっただけだと思います。
「行政が歪められた。」などと叫ぶ資格が果たして前文科事務次官にあるのでしょうか。いったいどちらが「言語道断」なのか。