私は、トレーニング前、オペラ歌手や役者が、どうしてあのように声が出るのかが、全くわかりませんでした。3年か5年くらいで、ときに、わかったり、できたりした気になったこともありましたが、後からみると全然でした。表向きだけでも、そうした声が身についたのは、ずっとその後のことだと思うのです。
それからは、発声も体も感覚も、それまでとは全く違う感覚のもとに生きています。といっても、世界の一流のオペラ歌手には、さらなる深みがある、その一段目くらいの感覚と声を得られただけだとは思いますが。
ただ、私の目的は、オペラ歌手ではなく、声を自由に扱えるためのベースとしての声をもつことでした。
所詮、素人が予想がつくくらいのものを、何年ものトレーニングを通じて学ぶ必要があるのか、そういう目的、対象になりえるのか。もし、学ぶのなら、そんな程度ではもったいないではありませんか。
不可能を可能にするからこそトレーニングであり、そのために不可欠な基本に私はこだわりたいと思うのです。