本の感想回です。
☆後半、ACIMの話題もあります
今回の一冊は…
進化心理学は、近年隆盛している学問分野です。
そこでの基本的な考え方は、
人間の本性は、生物学的要因に帰される
ヒトもまた、進化の集大成であり動物の一種にすぎない
この観点で、さまざまな研究がなされているのだとか。
いい感じじゃないですか?
早速ですが、この本によると、ヒトの目的は繁殖の成功です。
人間も、生き物ですしね
はるか昔のサバンナ時代から現代にいたるまで、ヒトの目的は突き詰めれば「繁殖」。ひたすらにその一心。
だからこの観点でみれば、人間の行動の大半が読み解けるはず。
かつて人間の研究は、主に「社会科学」と呼ばれる学問が担ってきました。
その基本は、人間の行動のほとんどは環境と社会に影響されたものという考え方。
日常でみられる男女の違いなどは、その典型。
男らしさや女らしさなんてのは、慣習や社会によって形作られた結果だ。
生来、男女に違いなどない。人間はみな同じ。
進化とか関係ないし。
ヒトは、動物とは違ーう!!
百歩譲ってヒトに進化論が及ぶとしても、それは首から下だけの話なの。
要するに、人間の行動原理は「繁殖」みたいな動物的なモンではない!
…そういう視点。
まあそれも、なるほどって感じはする
一方、この本の目次には
「女たちはなぜダイヤモンドに目がないのか」
「なぜ男は結婚すると『落ち着く』のか」
といったタイトルが目白押し。
むむむ?それ、男女差別じゃない?…
いやいや。そんなことはありません。
差別云々以前に、「進化論的」な理由があるらしい。
それがまた、面白い話ばかりです。
なかでも私が特に興味深く読んだのは、「宗教はエラー管理のメカニズム」という仮説。
誤ったときの被害を最小限に食い止めるためのしくみが、「宗教」の起源だと。
その説明は、こんな感じですー
目の前の出来事に、なんらかの「意図」を見て取るか。
それとも単なる偶然と無視するか。
石器時代なら、前者の方が確実に生存率を上げ、繁殖の目的に貢献したでしょう。
もし、すぐ向こうの暗闇でゴソゴソしているものがライオンだったら…?
「たまたま風が吹いたんでしょ」なんて呑気なことじゃ、厳しいサバンナで生き残れません。
はっきりと姿は見えない。
でも、そこはかとない気配…
きっとなにかがいるはずだ
そう察知する方向に進化したのが、われらがご祖先たちだった…という説。
そしてやがてニンゲンは、自然には摩訶不思議な力が宿ると考える「アニミズム」という原始的な宗教をもつに至るーということらしい。
アニミズム的自然信仰の文化を背景にもつ日本人の私は、こんな空想をしました。
……
近所に、大きくて不思議な岩があります。
すんとしてて、ただの岩じゃない雰囲気。
たまに、キラッと輝いて見えたりするし。
この「岩」には、霊妙な力が宿っているのかも?
え。待てよ…
ふとした拍子にご機嫌を損ねて、
岩の神さまに祟り殺されたらどうしよ
いかんいかん。それはまずい。
ここはひとつ、しめ縄でも張ってだな…
もしこの岩に「超自然的な力」がなかったとしても、かかるコストはお手入れと岩の神さまを拝む手間くらいです。
祟り殺されるのに比べれば、そりゃもう全然安上がり。コスパ良し。
私たちの先祖は、こうして「リスク(エラー)管理」をしていたのかな…?
ACIMが語る「神」は、アニミズム的な自然神ではありません。
「あらゆるもののすべてが神である」という、汎神論でもありません。
「汎神論」はけっこう難解で、そう単純に一言で括れないとは思います
ACIMの「神」は、私たちの知覚を越える概念です。
その意味では、人間が直接この神を認知はできないことになる。…はず。
しかしACIMは、人と神との直接の交わりを否定していません。
それどころか「この地上にあっても、直接神に至ることは可能だ」と言います。
表現するのは難しくもありますが、あえて言うなら、ACIMの考える「神」はわれわれ自身と分離していません。
だからこそ直接の交わりが可能ーいえ、むしろ、直接の交わりこそ可能なのです。
この真実は、私たちの側がある一定の条件を満たすまで認識不可能だとされています。
人間の「脳」は、過去一万年変わっていないとか。
石器時代の「脳」のまま、現代生活を送っているのですね。
それでは、いろいろ困ったズレが生じそう。
ちなみにこの本でも、心は脳から派生している前提です。
それが近年のトレンド。というかもはや常識。
もっともACIMはこの考え方を否定していますが。
この「脳」は、「心」と読み替えてもいいような気がしています。
この旧態依然とした人間の「脳」ー
もとい「心」を、学びに向ける。
それが今の私たちの課題なのだろうな、と思いました。
こういうのにロマンを感じるのも
石器時代の名残りかも…