今回のメインの『大塚国際美術館』、その日は嵐だった。あらためて渦潮を前日に組み込んだこと、幸いだった。
「今日はすべてをここの館内に費やせる」
この美術館には陶板にオリジナルを写すという特殊な技法で1,000点余りの世界中から厳選された作品が展示されている。もちろん原寸大だ。私たちはそれなりに前以て世の中の声を聞くという予習をした。
「良かった」
あり。
「入館して30分で出てきちゃった」
「自分がその絵の主人公になって写真を撮ったりできるエリアがあって面白かった」
「ガイドさんがちょいちょい『本物を見ています』話を自慢げに出してくるのがうざかった」
「すごい広さで、歩き疲れて、座れるところを探してばかりだった」
など、知人やSNSから。
入館して、正面の大きな階段に、先ず圧倒される。私たちは
「必ずガイドさんの話を聞こうね」
と決めていた。そうでなければ、ただただ見て回って終わってしまいそう。
ガイドは5種類あった。短いもので20分、長いものになると2時間コースもあった。予約は不要ってことで、組み合わせを考え、できる限り利用させてもらい、結果4人のガイドさんにお世話になった。
最初に入ったシスティーナ礼拝堂は迫力があった。
そこの壁や天井に描かれているミケランジェロの絵画はとても繊細で、その偉業には驚くばかりだった。ガイドさんが、レーザーポインターを使って解説してくださる。
天国へ行かれる者と地獄に堕ちる者の名簿のような本が描かれていることを知る。断然地獄行きが大きくて分厚い。こりゃあ私は、完璧地獄だわ。
他にもたくさんの説明がなされる。 一つ一つに聞き入る。ほんの数分天井を見ていたら、首が痛くなった。ミケランジェロさんはそれでも描き続けたわけだ。 芸術家って人たち、集中力が尋常じゃない。
そこから、有名な『最後の晩餐』『モナリザ』『真珠の耳飾りの少女』『大睡蓮』『ヒマワリ』などたくさんの絵画を見た。最後にピカソの『ゲルニカ』を見た時には目頭が熱くなった。私はこうしたアート作品を見てこんな思いに駆られたことはなかった。
ピカソと言えば、あの顔が正面と横向きの組み合わさったへんてこな絵が有名。はっきり言って
「なんじゃこれ?」
とあまり好きではなかった。が、『ゲルニカ』の説明をガイドさんからお聞きして、そこに戦争に対する大きなメッセージが込められていることを知った。それがなかったら、いつものように
「おかしな絵だ」
で終わっていたと思う。
それでも素人ながらに私が好きな絵はある。人物が描かれた物だ。人がその中にいるだけで温度を感じる。フェルメールの日常的な生活の一部を切り抜いてキャンバスに表したものが好きだ。何とも細かい部分まで描き込まれている。ドレープや布の質感までが伝わってくる。美しい。
それにしてもこれだけの名画を一度に見ることができ、触れて、写真も撮ることができるのは私のような絵画に精通していない人間にとっては十分どころか、贅沢だと思う。
ガイドさんにつれられて回ったあとに、もう一度見たい絵に戻って見たりしているうちに、あっという間に高松行きの高速バスの時間が近づいていた。私たちにとって、ランチを挟んだとはいえ、7時間でも足りなかった。

つづく




