2回ほど行ったクリニックとおさらばしてから、例の痛み?も悪化することもなく、かと言って治まるでもなく、5年ほどが過ぎていた。先生は優しくて、丁寧で、とても良かったけれど、あの待合室の雰囲気はどうにも耐え難かった。
それは突然だった。夜中に目が覚める程の痛みに、私は急に不安になった。かかとに激痛が走った。
「昨日、何か特別なことしたっけ?」
「たくさん歩いたっけ?」
思い当たることはない。
友人がくれた切り抜きには痛みで何日も寝たきりになったり、何もやる気が起こらなくなったりするって書いてあったし‥‥‥。
翌日、今度はペインクリニックではなくて「線維筋痛症」のピンポイントでPCをいじってみた。すると偶然にも弟の仕事関係の病院で専門の先生がいらっしゃることが分かった。だからと言ってすぐに弟に連絡する私でもなく、それだけで安心してしまった。なんと切り替えの早い私だろうか?というか、夜中に目が覚め、心配事が頭に浮かぶと、それは昼間の10倍くらいの重みでやってくる。翌日、問題なく一日が過ぎた。
それから数カ月、久しぶりに会った弟は元気そうだった。昔の思い出話をしたりしてひとしきり笑った後、
「あ、そういえば‥‥‥」
と私は自分の症状と、偶然を弟に話した。
弟はすぐに病院に連絡すると言う。
「え、いいからいいから。そんなにひどいわけじゃない。今後、何かあったらお願いしたい」
という私に
「何かあってからじゃ遅い!」
と言って翌日には
「先生と直接話して」
とラインがあった。こうなったら、甘えるしかない。
「ただ、心療内科になるから、予約通りの時間に診察が受けられることはなかなかないよ。1時間以上待つことも覚悟して」
とあった。
「ありがとう」
と返信した。そうして、弟から指定された時間帯に先生にお電話をし、予約を入れた。
その日、順番がやってきたのは、予約時間よりだいぶ過ぎてはいたが、病院によってこんなに違うかと驚いた。
ホテルのロビーのような場所で受け付けを済ませ、待っていた場所は、長い廊下に点々と置かれた布張りの一人用ソファー。ひじ掛けはいい具合にカーブしている。うっすらと聞こえてくるクラシック音楽。私は用意していった本に夢中になっていた。その間お見かけした人は患者さん、お医者さん、スタッフさん合わせても片手で数えられるほどだった。
さて、そこでも診断はつかなかった。が、血液検査やMRIなどで問題もなく、先生は
「怖い痛みと悪くない痛みと言ったらおかしいけれど、2種類あると思ってください。beachanさんの場合は、悪くない痛みなんです。ただ、血液検査や心電図でもわかりますが、とても緊張してしまうタイプなので、やわらげるお薬を出しましょう。そういう緊張やストレスが悪さをする場合が多いんですよ。精神安定剤や睡眠導入剤ではないですからね。歯を食いしばって生きてきましたね」
最後のひと言は、先生の笑顔もあった。
えっ?私って緊張タイプだったの?歯を食いしばって生きてきたの?まったく記憶にない……。初産の時くらい?
自分のこと、初めて知らされた。
(いつか④に続きます)
