翼が1年生になった冬のことだった。12月に入り、早々にお餅つき大会という子リス幼稚園の恒例行事の準備のために、義父の浩一は倉庫から重たい臼と杵を運んでいる最中に突然倒れた。知らせを受けて急いで病院に駆け付けた時には既に息を引き取っていた。

 

「解剖をすれば死因が明らかになる」

とは言われたが、政子も純子も義父の妹たちもそれを望まなかった。それがわかったところで生き返るわけでもない。脳血管、あるいは心臓のどちらかであろう。純子の祖父はくも膜下出血で命を落としている。遺伝もあるかもしれない。

 

 それからだった。純子は毎日、6時には実家の幼稚園の周りの掃除を始めた。大輔にとっては、彼女が何かにとりつかれたようにさえ感じられた。

 

 そして恐れていたことが現実になった。翼が冬休み明けから学校に行きたがらなくなった。それまでも行き渋りはあったものの、純子がなんとか校門まで付き添い、学校に押し込めるようにしていた。が、子どもであっても7歳ともなれば、抱きかかえてどうにかできるレベルではなくなっていた。朝、なんとか眠りから起こし、バターロールを1個口に入れ、ココアで流し込む。玄関まで連れて行き、靴を履かせても足を振り上げ、靴を飛ばす。布団から出られない日もあるほどだ。そんな様子だって、既に仕事に向かって家を出た大輔は見ることができない。夜、純子から聞くだけだ。

 

「いじめられているのか?」

「勉強が嫌?」

「先生が怖いとか?」

何を聞いても翼は首を横に振るだけだった。

 

 大輔は不安でいっぱいになった。実際に翼と1日中一緒にいる純子の気持ちを想像した。当の本人、翼の気持ちはどうなっているのだろう?仕事が手に付かないときもあった。

 

 これからどうすればよいのだろう?

 

 音符不定期に続きます