ほぼ毎日、夫は父親(私にとっての義父)の様子を見に行く。薬を届けるためだ。認知症になり、義父は管理ができなくなってしまった。その際夫は、熱中症を心配してエアコンをつけるように言うが、
「暑くない。大丈夫」
と言われ、怒っている。
先日は夫が勝手につけ、部屋を出たところで
「こんなものいらない」
と言う声と冷房を消す音が聞こえたらしい。家に戻って
「消しやがった」
と夫は怒り心頭。それにしても育ててもらった父親に対して「○○しやがった」はないんではないかと思うが、夫は義父の言動に最近いつもイライラしている。
このあたりの地域では気温は40℃に達していないが、夫の脳内温度は絶対に酷暑を超えていそう。そして私は
「お義父さんもよっぽどエアコンが嫌なのね。つけたらきっと気持ちいい、って思うでしょうに」
とかなんとか当たり障りのない言葉を返しておく。
「認知症だから仕方がないのよ」
なんて言ったら、
「オレは、そうやって穏やかにできる人間じゃないんだよ」
って言いそう。
「エアコンつけて、リモコン隠しちゃえば?」
って、それもどうなのか?とにかく、これ以上夫を刺激してはいけない。
先日私が買った「コバエとり」が、セットしたその日に隠された事件も解決せず、20日余が経つ。本当は、もっと気になるのは、
「お金がなくなった」
なんだけどね。
その後、娘が
「もしかしたら『お盆の時のお迎えに、ちょうどいい提灯だ』と思っておじいちゃんが大事にどこかにしまっていたりして。お迎えにいきなりそれを持って現れたら絶対に笑えるわ」
と突拍子もない考えを出してきて、その時ばかりは夫に笑顔が見られた。
お盆のお迎え、何事もなく終了。さすがに義父も提灯とは間違えてないかぁ。
送りの日には、みんなでおじいちゃんの家に行くと
「1人で行ってきた」
と玄関も閉まったまま、家の中から大きな声が聞こえた。一瞬夫の顔色が変わった。
「今日の夜、8時に一緒に送りに行くから。ここに来るから」
と何度も夫が義父に伝えたのを私は知っている。
その時は孫たちもいたので、夫は汚い言葉を吐かなかった。むしろみんなに
「せっかく来てくれたのに、ひいおじいちゃん、わけわかんなくなっちゃってるから、ごめん」
なんて謝っていた。
孫の存在と笑いの種は、夫の怒りを静める特効薬だ。
そしたらね、昨日、コバエとり、見つかりました。どこに隠していたのか、ある日突然カーテンレールにぶら下げてありました。娘がそれを見つけ、ササッと写真を撮ってきたと。義父の中ではそれは「風鈴」だったのかぁ……。
そのかわいさに私は笑えました。夫も笑っていました。


