純子へ

 からだの丈夫なところだけが唯一の取柄と思ってきたけれど、そんなママがガンになるなんてね。そうね、今じゃガンは誰でもが罹りうる病気だものね。丈夫、健康、元気な人だって罹るね。

 

 純子が小さい頃、ママは純子が寂しがっていること、気付いていたよ。全部パパに任せて、幼稚園のことばかり。パパにも純子にも悪かったと反省している。パパは優しくて、ママにとっては頼りになる人だった。何があってもいつもママの味方だったもの。そして、ママがおじいちゃんの子リス幼稚園を何とか引き継いでいこうと懸命になっていたことにも理解を示してくれた。感謝してくれた。

 

 純子が幼稚園の先生や保育士の資格を取ったのに、違う道に進んだ時はさすがにがっかりした。驚きの方が近かったかな?それだけ、当然のこととして純子を当てにしていたのかな?

 

 でもそれは、純子の人生だもの、それでいいと思った。ママの生き方に反発している純子だったし。

 

 パパが亡くなった時はショックだったね。突然だったし、若かったよね。そしてそれがいろいろなことを引き起こしてしまったね。ママはやっぱり翼のことが心配。純子はなるべくママに心配をかけまいと多くは語らなかったけれど、ママはわかっていた。秘密になんてできないよ。ママ以上に純子や大輔さんは心を痛めているだろうけれど。

 

 長く子育てや教育に携わってきたママから言わせてもらうけど、決して純子も大輔さんも間違った子育てをしてきたわけじゃない。だから自分たちを責めないで。パパが亡くなった後、純子は自ら進んで毎朝園の周りを掃き清めてくれたね。毎日毎日、続けてくれたね。ありがとう。なにか、パパに翼のことを見守ってほしい、って気持ちが感じられたよ。

 

 純子がいつこの手紙を読むことになるかわからないけれど、自分が肺ガンになるなんて考えてもみなかったよ。タバコなんて吸ったこともないし。余命宣告もされちゃって、先は長くないと思って手紙を書いているの。

 

 純子、自分の思うように生きなさい。ただ、翼のことをしっかり考えて、進みなさい。命があるんだから。辛いこと、それは純子にとっての人生の学び。今後、翼が何ら変わることができなかったとしても、純子と大輔さんが一生懸命考え向き合ったか、それとも何もせずに放っておいたかは、大きく違うのよ。

 

 認定こども園は純子のことを考えて、少しずつ方向転換をしました。幼稚園としての役割と保育園としての役割の両方を持つことは、とても難しいです。仕事も煩雑になり、子どもファーストがうまく実現できません。どちらかに、となると世の中の流れを考えて、保育園に寄せる方が良いと思いました。

 

 でもどのような形にもしていいです。今の純子はママを手伝う、そして何かに没頭していなければ自分がやられてしまう、そんな義務感から園に足を運んでいる気がする。それでもママは助かっている。ありがとう。


 ママは、やってきたことに誇りを持っています。だから、純子もそういう人生を歩んでほしい。必ず子リス保育園をついでほしいという気持ちは今のママにはありません。園は、純子の思うようにしていいからね。

 

 応援しているよ!

 

    ママより

 

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