子リス保育園のきまり事として、子ども同士の争いで、怪我に繋がってしまった場合、看護師の美優が診ることになっている。その時点で救急車を呼ぶ、病院に連れて行く必要がある、となれば、即座に美優が対応する。保護者にも連絡をする。幸いに美優が勤務してからそうした事態になったことはない。そして、消毒などの簡単な処置で済むものは、両方の親に特に連絡をしないことになっている。

 

 昨日、さくら組の保護者が

「子ども間でケガをしたりさせたりした場合は必ず知らせてほしい」

と連絡ノートで伝えてきたという。美優は一瞬それが何のことかも思い出せなかった。それほど些細なことだったのだ。ああ、あのつむぎちゃんの腕の擦り傷のことか‥‥‥。確か、和斗くんだったかしら?しかも争いがあったわけでもないし、わざとやったわけでもなかった。

 

 園長から話があった。

「これからも今まで通りの対応を基本とするけれど、今後は、臨機応変に考えましょう。そして、どんな小さなけがであっても『今日、公園にお散歩に行き、けがをしてしまいました』は、伝えるようにしましょう。そのレベルであれば、相手あっての話には持ち込まないようにしましょう。保護者が子どもに聞いたりして相手がわかったとしても私がきちんと伝えます。『けがの程度が軽ければ、当園ではお互いの名前はお伝えしないことになっています』」

 

 美優にとって頼れる園長だ。以前、親同士のいざこざに繋がってしまった経緯があるらしい。美優の勤務する前のことだ。

 

 もともとつむぎちゃんはおとなしい子でヤンチャなことをするタイプではない。どうか、卒園まで何事もありませんように。

 

 美優は子どもが生まれ、数年は看護師として病院に勤務していた。が、夫と話し合って、保育園看護師として働くようになった。子育て中の夫婦には夜勤の問題が大きかった。それだって続けている元同僚はいるけれど、美優には無理だった。身体がもたない、と思ったのだ。そうなると心がやられてくる。子どもに辛く当たって、後悔することが増えた。あるとき、布団に入ってから涙がとまらなくなったのをきっかけに、夫に相談したのだ。決まった時間に寝て、決まった時間に起きる、それがどれほど大事か。

 

 美優は気になっている。これは仕方のないことだが、パパやママの帰りが遅くなれば、当然子どもたちの寝る時間も遅くなるだろう。その昔、母に

「ほら、8時には寝なさいっていつも言ってるでしょ!」

とベッドに入らされた。それでも目を閉じればすぐに眠れていた。あっという間に朝だった。今、働くパパママが子どもたちを8時に寝かせるのは至難の業だ。そうなると、自然と朝は遅くなり、不機嫌なまま登園する子どもたちも多い。

 

 今、子どもたちにはお昼寝の時間がある。6歳であっても。体力のある陸くんは

「眠れない」

と言って布団の上でゴロゴロしながら目をつぶって過ごす。1時間以上、そうしているのだ。健気な姿に胸が押しつぶされそうだ。仕事柄、美優は1日の過ごし方、食事、睡眠、今の子どもたちがこれでいいのか、気になってしょうがなかった。

 

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