先日川越に行き、思い出したことがある。

 

 

 それは小学生の頃のこと。「児童会」についてだ。いわゆる中学や高校の生徒会のようなもの。私は、まったく興味がなかったので、記憶にはないのだけれど、「選挙」があったから、おそらく存在したのだろうと推測している。

 

 弟に聞いても

「そんなのあったっけ?」

妹に聞いても

「全然覚えてないわ」

と言う。もちろん姉弟妹ですから同じ小学校でした。

 

 私が思い出したのにはそれなりの理由がある。当時、クラスに成績優秀な男子がいた。いろいろなことに積極的に取り組む彼だった。そして、いわゆるお坊ちゃま。でも人を見下したりすることもなく、誰にでも同じように接して、優しかった。お顔立ちもまさしく目の大きなかわいらしいお坊ちゃま顔。太ってはいないけれど、お顔は丸かった。「ぼっちゃん」という音の響きからか、イニシャルからか、顔かたちからか、彼のあだ名は「かぼちゃ」だった。

 

 その彼が、児童会の会長に立候補した。その年、複数の立候補者がいた。そして、投票で決めることになったのだ。まず、体育館だか講堂だかの舞台で、演説があった。私は彼の演説内容、重要部分は忘れたが、最後に加えたあいさつをよく覚えている。

 

 それは

 『クリ(9里)より(4里)うまい13里』というサツマイモにまつわる言葉があるというような話で始まった。川越が東京(江戸)から13里の距離にあり、サツマイモの名産地であったことからそれをアピールする言葉として有名になったらしい。そして、彼、かぼちゃは自分のあだ名がかぼちゃであることを伝えた上で

「クリよりもサツマイモよりも、カボチャはおいしい。だから、かぼちゃが1番!」

確かそんなふうに最後を締めくくった。

 

 そんな言葉、12歳で知っている彼は、やっぱりすごいと思った。読書家でもあった。もしかしたらご両親のアドバイスもあったかもしれないけれど、堂々としていて、クラスメートとして誇らしく思った。私たち4組のメンバーは彼の挨拶が終わると思いっきり拍手した。他のグラスの誰のものより、その音は盛り上がっていた。

 

 そしてその日の夜、彼から電話があった。小学生で電話を使うことなんてないから、受話器を母から受け取って、びっくりした。

 

「beachan?清くなくてもいいから(当時、世の中の選挙では「清き1票を!」と、叫ばれていた)明日はぜひかぼちゃに1票入れてください」

さすが、お坊ちゃんだったな。

 

 結果は言うまでもない。