新年一発目、『見えざる手のある風景』を見る。
高度な文明を持つ宇宙人が地球にやってきた。
そんな宇宙人と協力関係を築いた地球人たちの末路を描いた作品。
宇宙人の高度な文明のおかげで労働の必要がなくなった代わりに、
宇宙人の作った食べ物もどきを食べるだけの底辺の暮らしをしつづける人々。
それは本当に幸せなのか?
ゆるやかな地獄がおそろくしくリアルで、アイロニーに満ちた映画でした。
音楽が『マーズ・アタック』のアレに似ているのも好み。
主人公は黒人の青年。絵を描くのが好きだ。
下界では、比較的裕福な暮らしをしている。
もともと裕福な暮らしをしていない人はその生活を守られ、
比較的裕福な暮らしをしていた人間は宇宙人たちに権利を取られてしまった構造。
そんな黒人家族の家に、家を失った白人家族が共同生活をする。
どことなく『終わらない週末』を想起させる。
《ネタバレ》
なんとか職を得ようと、宇宙人の言語を学ぶ白人家族。
ガサガサ段ボールを擦り合わせたような音に、こんな声どうやって出せばいいんだ?と悩む。
テレビの向こうでは、宇宙人の到来はビジネスチャンスと訴える経済人もいたり、
学校では、宇宙人の歴史を学ぶ地球人。
愛という概念を知らない宇宙人のお偉方は、50年代の古き良きアメリカの家族を描いた地球のドラマのファンだ。
ラスト、黒人青年の描いた絵が”地球芸術”と評価されるが、その行く末が、あまりにも残酷。
それでも彼は描き続ける。
何も変わらないかもしれないが、ほんのわずかな希望のラストに光を見る。
最後に残るのは、愛だけだ。