『すばらしき世界』がすばらしかった件 | ブラジリィー・アン・山田の活動日記『もう少しだけマシな理由』

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脚本家、演出家であるブラジリィー・アン・山田の活動日記です。主に、カレーや映画や変なグルメや宣伝のことを書いております。

 

西川美和監督の最新作『すばらしき世界』をやっとこ見ました。

 

『ゆれる』も『ディア・ドクター』も『夢売るふたり』も最高でしたので、

今回もちゃんと映画館で拝見しました。

 

キャッチには『今をえぐる問題作』とありますが、

奇をてらったところは微塵も感じさせない、実にまっすぐで正しい本物の映画でした。

 

役所広司が「ああこういうおじさんいるいる!」というおじさんをちゃんと演じていました。バイト先にいたな。融通効かなくて、悪い人じゃないんだけど、癇癪持ちで機嫌悪くなるとすぐ怒鳴る人。

そんな役所広司が周囲の優しさに触れて(六角さんが最高!)、成長していくというお話。

 

印象的だったのが電話のシーンがやたら多いこと。それは狙いだとは思うのですが。

電話のシーンには2種類あって、いい電話と悪い電話。

悪い電話では、人と人との埋められない溝を表現するため、

髪を洗いながら、カップラーメンを食べながらなど生活を邪魔するものとして現れます。

いい電話には、そのシーンに風景やネオンの光を重ねることで、

受話器の向こうに夢のような世界をイメージさせる。

対照的な2種類の電話の演出に唸りました。

 

最後、映画としてはああ終わらせるしかないのかな。

”すばらしき世界”がすばらしいまま終わらせるためには。

 

終わった後も色々考えてしまう、すばらしき映画体験でした。