皆さんは「シャボン玉石けん株式会社」という会社を知っていますか。福岡県北九州市に本社を置く、無添加石けんのパイオニアです。この会社のことはなぜか名前だけは知っていましたが、会社の詳細は昨年度受講した人を大切にする経営学会の経営人財塾で知りました。
そして、この会社について学び、その歩みを知ることで、私は日本に誇れる素晴らしい企業の物語と、その経営者の人間としての強い信念を強く感じて心を打たれました。
かつて同社は、合成洗剤を主力商品として順調に業績を伸ばしていました。しかし1974年、先代社長の故・森田光德氏は大きな転換点を迎えます。自らの酷い肌荒れの原因が自社の合成洗剤にあったこと、そしてその排水が環境を汚染している事実に直面したのです。
ここで森田氏が取った行動はまさに異例でした。「体に悪いと分かったものを、売るわけにはいかない」。そう決意して、売上の実に99%を占めていた合成洗剤の製造・販売をすべてやめ、無添加石けん一本へ経営の舵を切ったのです。
当然、事業は順調には行きませんでした。主力商品を失ったことで売上は1/100に激減し、100名いた社員はわずか5名になってしまいました。そしてその後、17年間にわたって厳しい赤字経営が続きました。普通であれば途中で諦め、妥協して利益の出る商品に戻ってしまってもおかしくありません。それでも森田氏は「健康な体ときれいな水を守る」という強い信念を曲げず、伝統のケン化法(釜炊き製法)にこだわり抜きました。そして、その安全安心な石鹸が徐々に世間に知れ渡るようになり、事業も徐々に回復して行くのでした。
さらに同社は、科学的なアプローチで地球環境を守る先進的な試みにも挑んでいます。2021年9月から11月の3か月間、福岡県宗像市にある離島の地島で住民と協力し、島内で使う洗浄剤をすべて無添加石けんに切り替える「島丸ごと無添加せっけん生活」の実証実験を行いました。その結果、下水処理場の水質が劇的に改善し、排水をきれいにする微生物が活性化することが科学的に証明されたのです。日々の暮らしの選択が、海や自然を直接再生させる力を持つことを、彼らは自ら示してみせました。
ところが昨今、化学物質管理の法規制や表示ルールの壁など、国レベルで様々な制度的摩擦を引き起こしています。完全に私的な見解かも知れませんが、国は一部の大企業を守るための法整備や規制を行うのではなく、目先の利益を追わずに社員・顧客・地域社会そして地球環境という「命」を愚直に大切にし続ける企業こそを積極的に支援するべきではないでしょうか。
シャボン玉石鹸のような会社を私たちは決して失ってはなりません。こうした素晴らしい理念を持ち、行動で示してきた企業こそ、国や行政も制度の枠組みを超えて積極的に支援し、その価値を守り育てるべきなのです。
もちろん私たち消費者もこのような企業を応援したいですよね。そのために同社の製品を購入することで継続的な支持をし続けて行きましょう。
シャボン玉石鹸

