世界中のあらゆるモノの価格が上がり続ける中、日本国内に目を向けると相変わらず「安くて良いもの」であふれていますが、その背景にある歴史的な円安と長引くデフレ経済の影響を直視すると、恐ろしい現実が見えてきます。
いま、日本という国、そしてそこで働く日本人そのものが、世界から“お買い得なバーゲン品”として買いたたかれているのです。海外からの旅行者が日本の高級寿司屋やラーメン店を訪れ、「こんなに美味しいのに母国の半額以下だ」と歓喜するニュースをよく目にしますし、日本の優秀な製品やサービスも外貨ベースで見れば驚くほど割安になりました。
世界のインフレに置いていかれ、為替が円安に振れた結果、日本の相対的な購買力は著しく低下し、世界の一等国であったはずの日本が、気付けば世界から見れば物価の安い貧困国へと変貌しつつあります。
そして、この買いやすさの波は製品やサービスだけでなく、人の労働力にまで及んでいます。特に深刻なのが、日本の技術者やITエンジニアたちの置かれた状況です。長年培ってきた高い技術力、真面目で緻密な仕事ぶり、品質へのこだわりを持つ日本のエンジニアは世界的に見ても非常に優秀です。しかし、日本国内の給与水準が長らく横ばいを続ける中で極端な円安が追い打ちをかけ、ドル建てで給料を払える海外企業や外資系企業から見れば、日本の優秀な技術者は信じられないほど低コストで雇える極上人材に映っています。
米国などでエンジニアの平均年収が1,500万円から2,000万円以上に達することも珍しくない中、日本のエンジニアの平均年収は500万円から700万円程度にとどまっており、外資系企業からすれば本国の半額以下のコストでトップクラスのエンジニアを確保できる状態、まさに技術と労働力の買いたたきが起きていると言えます。
海外企業に直接雇用されるエンジニアにとっては外貨建てで高収入を得られるメリットがあるかもしれませんが、国全体として見ればこれは極めて危険な状況です。日本国内の企業は圧倒的な資金力を持つ海外勢に給料で太刀打ちできず、優秀な人材から順番に買いたたかれて奪われてしまい、その結果として国内には技術革新の芽が残らず、さらに経済が停滞するという悪循環に陥ってしまいます。
「日本の技術はすごい」と過去の栄光に浸っている間に、その技術と労働力の価値は世界基準の安売りセールにかけられています。これからの日本の生き残る道は、良い製品を安く作ることではなく、付加価値の高い製品を高く販売することではないでしょうか。それで自分たちの技術と労働力に対しての対価を高めて行かなければ、日本が豊かな国として復活することは到底できないと思います。
