となりの五兄弟☆21 | step and go☆嵐が大好き✩.*˚羽生結弦くん応援!

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現在は主に、羽生くんの事、嵐さんの空想のお話を掲載しております。
(過去の嵐さんの空想のお話は、『Angelique』を再掲中です。他のお話については検討中です。申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ)


ピンク色に地上を散り染めた花の季節が終わる頃。


みずみずしい若葉が、日ごとに増す日差しの強さを受けながら、すくすくと大きくなってゆきます。



昼間は半袖でも十分過ごせる陽気になってきた、そんな今日この頃の昼下がり。



時折強く南風の吹く日でしたが、お日様はキラキラと世界を照らして、五兄弟のマンションのベランダの洗濯物も、明るくひらひらとなびかせていました。


「さとちゃん、さとちゃんっ、こわいよぅ」


泣きべそでさとの制作部屋に駆け込んで来たのは、末っ子のじゅーんです。


「ん?どぉした」


さとは筆をパレットに置き振り向くと、


「おしごと?」


遠慮がちに立ち止まったじゅーんを手招きして、


「ちょうどひと休みするところ。何が怖いのかな?」


と、優しくお膝の上に乗せました。


「あのね、あのね、じゅーんちゃんねっ、ひとりでおといれにいったの」


「そうか、えらいな」


じゅーんのお人形さんのようなくっきりとした目を縁取る長いまつ毛は、涙で濡れるといっそう艶やかで、黒蝶真珠のような瞳を輝かせています。


「あのね、すてっぷにのぼっておみずじゃーしてたらね、こわいおとがきこえたの」


「怖い音?」


じゅーんはこくりと頷きます。


「うん、お、、おばけのおと」


言いながら、プルルッと首をすぼめるじゅーん。


「おばけ?? へぇ。。ちょっくら確かめるか」


「じゅ、じゅーんもいっしょにいくっ」


さとは胸にしがみついてきたじゅーんをそのまま抱っこして立ち上がり、一緒にトイレに向かいました。


「じゅーんちゃん、どうしたですか」


リビングで、習ったばかりのけん玉に夢中になっていた四男のにぃのが、心配して廊下に出てきました。


「おばけ。おといれにみにいくの」


「おばけ?にぃのちゃんはおばけはきらいですよ」


「にぃのは、ここでちょっくら待ってるか?」


「う、ううん、にぃのちゃんもいっしょにいきます」


にぃのはさとのズボンをキュッと掴んで、さとの後ろに続きます。

三人でトイレに入って、パタンとドアを閉めました。


「なぁんにも聞こえな……、あ」


うぉぉぉ…
うおおおおぉん……
びゅおおおおお!


「きゃーーっっ」


「おばけぇぇぇ」


目をつぶって、さとにギュウギュウとしがみつくにぃのとじゅーん。

その怪獣の唸り声のような恐ろしい音は、急にパタリと静かになりました。でも暫くするとまた、


うおおおおぉん
びゅおおおおお!


と、大きな唸り声を立てるのです。


「こわいよぅぅ」


「こわいぃぃ」


にぃのとじゅーんは、さとにギュウギュウし過ぎて、まるで大きなサメにピッタリとくっつく、双子のコバンザメのよう。


「あー、これは、、分かったぞ!
にぃの、じゅーん、この音の正体はおばけじゃないぞ」


「おばけじゃないの?」


「じゃぁなんのおとです?」


さとを見上げる、クルクルきゅるんと澄んだ、よっつの瞳。


「風が鳴らす…、いや、風の歌声だな」


(このマンション、ちょっとばかし古くなってきたからなぁ~。
この窓も、僅かな隙間が出来ちまってんだろな)
と、さとは思いました。


「かぜのうた?」


「かぜがおうたうたうの?」


「そ、今は風が元気に飛び回ってて、だからでっけぇ声で歌ってる」


「そっかぁ、かぜさんのおうたなんだ!
なんてうたってるのかな?」


「もしかして…、にぃのちゃんたちにこんにちはってうたってるのかな?」


「そうだなぁ。
フムフム……。お、今聞こえたぞ。『にぃのちゃん、じゅーんちゃん、お洋服が乾いてるから早く取り込んでください』だって。急げー」


「わーー!」


「いそげぇーー!」


競うように、三人でリビングにまっしぐら。


「よっこいしょっと」


光眩しいリビングの窓を開け放ち、サンダルをつっかけベランダに出たさと。


「おお、ホントによく乾いたなぁ~」


軽くホコリをはたきながら、洗濯物のピンチをひとつづつ外すと、


「ほい、お願いします」


窓辺にお手伝いに出てきた双子に手渡します。


「はぁい!」


「そふぁのうえね!」


双子たちは元気に受け取って、洗濯物をソファーの上に重ねてゆきました。
すると、


「ぅおっ!?」


急に、ビュウッと強い風が吹き付け、窓辺のレースのカーテンをぶわっと膨らませました。


「わァ!」


「たいへん!」


テーブルに広げたままだった色とりどりの折り紙が、風に散らされて、双子たちは慌てて拾い集めました。
ベランダにいたさとは、


「イテテ……風でなんかが…」


どうやら風が吹き付けた時、細かい砂か埃が、さとの目に入ったようです。


「さとちゃん、だいじょぶ?
もう、かぜさんてば!めっ!!」


さとが心配で、ぷんぷん怒るじゅーんと、


「いたい?にぃのちゃんたち、とんでけできるよ」


さとの痛みを癒そうと寄り添うにぃの。

アプローチは違えども、双子なりに精一杯守ろうとしているその姿は、幼いながらも、もう立派なナイトのようです。


「うんっ、じゅーんちゃんもいっしょにやる!」


「せーの、『いたいのいたいの、とんでいけ~!おやまのはてまでとんでいけ!うみのかなたまでとんでいけ!』」


「どうですか?」


「とんでった?」


「うん、、おかげで飛んでったな!ありがとう」


涙目をちょっと擦って、にっこり微笑んで見せるさと。


「やったぁ~」


「すごいねぇ~」


キャッキャと両手を上げて喜ぶ双子たち。


「さ、ほ〜ら、くまちゃんたちもふっかふかだぞ」


さとが手渡したのは、にぃのとじゅーんの大切な大切な、黄色と紫の、くまのぬいぐるみ。
昨日の夜は双子たちと一緒にお風呂に入って体を洗ってもらったので、今日はお外で日光浴をしていたのです。
おひさまと風の力で、毛並みもふっかふかに乾きました。


「わぁ、ふわふわぁ」


「くまちゃん、いいにおいです」


ぎゅうっと抱きしめて、頬ずりして、幸せそうに顔を埋める双子の姿を見ていると、さとの顔にも知らず知らすに、花がほころんだような、誰もが見惚れてしまう柔らかな微笑みが浮かびます。


「さぁって、、ほかのも取り込んじまおう」


さとは洗濯物に向き直して、ン?と気が付きました。


「しょぉくんのお気に入りのパンツも、確か一緒に干したよなぁ…?
あ!?」


ふと見上げた空高くに、見覚えのある派手な色の何か。それは青い空にひらりひらりとはためいて…


「わぁキレイ…。
じゃねぇ!ヤバい!しょぉくんのパンツがぁ!」


「ぱんつ?」


「しょぉさんの?」


くまちゃんを抱きしめたまま、きょとんとする双子。
さとは、残りの洗濯物を一目散に取り込んでソファーに置いて、


「ほら、アレ、見えるか?」


双子たちに分かるように、空を指さしました。


「おそらのうえのほー」


「なにか、とんでますねぇ」


「アレはしょぉくんのパンツだ。風で飛んじまった。
急いで捕まえに行かなきゃなんないんだけど、」


「いこ!」


「みかん、いきますよ!」


「え、みかんも?まぁそうか、どっかに落ちたなら鼻が利くか」


慌てて支度して三人で玄関で靴を履いているその時に、


「たっだぃまぁ~!」


この家の三男の、まぁが小学校から帰ってきて、玄関は大混雑です。


「おかえり、今ね、かくかくしかじかでしょぉくんのパンツを探しに行くとこで」


「オレも行く!」


まぁは、すぐにランドセルを廊下にほおり投げ、代わりに犬のみかんを抱き上げお散歩セットを持ちました。


「じゃぁ、みんなで行くか」


「うん!」


鍵をかけ、四人と一匹は駆け出します。


「お、見つけた!あそこだっ!」


派手な色のおかげで目立つのは良いのですが、上空の風の流れは止まりません。
羊の雲たちも駆け足で、背中に羽が生えているようです。


「おーい、かぜさーーん!」


「それしょぉさんのですよぉー!」


「持ってかないでぇ!」


パンツを追いながら、みかんの散歩道でもある公園の中に入り、さらに追いかける四人と一匹。
いつもは泰然自若とした様子の木々たちも、今日は風に煽られ、その梢と青々と茂った葉をザワザワと揺らしています。
さと達の額の汗も、拭う前にどんどん乾きそうです。


「すごい風だな、、ハァハァ……まさに嵐…」


あまりの風の勢いに、独りごちるさと。

『Springstorm』『Maystorm』、季節の変わり目に吹く嵐はいつも、次の季節・次の景色を連れて来ます。
今日吹き荒れる嵐が連れて来るのは、春の次の季節の、光煌めく景色




「ねぇねぇ、もー、どこまで行くのーーっ」


公園を抜けた所で、ゼェゼェしながら、空で揺らめく次男のパンツに問いかけるまぁ。

四人と一匹が見守る中、次男のパンツは落ちてくるどころか、ぐんぐん上へ上へと登ってゆきます。


「あーーー」


「みえなくなっちゃいます」


「…持ち主と一緒で、下を向くどころか前でもなく上向いちまうんだなぁ…」


「どうしよう、さとちゃん」


まぁも、にぃのもじゅーんも、みかんまで、みんな困った顔でさとを見つめます。


(オイラだけなら、まだ追ってくんだけど。
ま、そんなわけにもいかねぇしな。
もし誰かが転んでケガでもしたら、しょぉくん泣いちまうだろし…)




「あそこまで登っちゃったら、ちょいと難しいな。とりあえずな、折角ここまで来たし、商店街のアイス屋さんに寄ろう」


「わーい!あいす!」


「たべたいです!」


「賛成!」


道中ワイワイはしゃぎながら、みんなで何のアイスにするかをたっぷり悩んで、商店街のアイス屋さんに寄って。
帰り道は、電線に止まる鳥たちが、ピピピッと賑やかにさえずるのを眺めながら、


『ねぇ、しょぉちゃんのパンツも、鳥が見つけるかな?』『とりさんのおふとんになるのかも』『あったかいねぇって』『そうだな、喜ぶかもな』


そんな風に賑やかにおしゃべりしながら、四人と一匹はマンションに戻ってきました。


(しかし、、ほんと申し訳ねぇなぁ。あのパンツ、同じの買おうにもあの一枚きりだったし他に見たことねえしなぁ)

さとがそんなことを思いながら、ドアポストに配達された夕刊をしょんぼりと引き抜いていると、


「あ、兄さんっ、ただいまぁ♪」


ちょうど次男のしょぉが大学から帰ってきました。
楽しい事でもあったのか、ニコニコして声も弾んで、とってもご機嫌です。


「お、おけーりしょぉくん
……あのさ、今日風強かったろ?」


そんなしょぉとは反対に、さとの口調はつい重たくなってしまいます。


「うん、風強かったぁー!聞いてよ、その風でさぁ、チラシとか色んなモンが脚にまとわりついてきてぇ」


「う、うん」


「それでさ、見てよこれ!
この辺で俺の他にもさぁ、このパンツ履きこなせるヤツがいるんだね!兄さんに見せてから交番に届けようって思ってさ、ハハハッ」


玄関先でしょぉが笑いながら、さとに広げて見せたそれは、青・赤・緑・黄・紫の五色が目にも眩しい派手なパンツ。
それは、紛れもなく…
さとはびっくりし過ぎて、目がまん丸です。


「このまま持ってくのもなんだから、茶封筒にでも入れていこうかなって。封筒、確かあったよね?」


「あ、うん、封筒はあるけど。。あのさ、しょぉくんそれね、多分てゆーか絶対、
オイラが洗濯して風で飛ばしちゃった、しょぉくんのパンツだよ」


「えッ!?コレ俺の??ウッソだろ?」


今度はしょぉの目がまん丸になって、もうお顔からこぼれてしまいそうです。


「まぁと双子とみかんと一緒に、随分追っかけたんだけどねぇ。。
カイトみたいに上昇気流って言うの?あれに乗っちゃったのかグングン空高く飛んでっちゃって。…結局見失っちゃった。もうしゃーないなって、オイラたちはみんなでアイス屋寄って帰ってきたんだけど」


「え、じゃぁそのあと、
カイトみたいにグングン空飛んでったあと……結局俺んとこ戻ってきた…ってコト?!」


「そうだね、すっごい運がいいっていうか。持ち主のとこに帰ってくるなんて、スーパーパンツだよね」


「すーぱーぱんつ?」


「わ!見っかったんだ?!しょぉちゃんのパンツ」


「はでですねぇ」


弟たちもわらわらと玄関先にやって来ました。


「みんなで探してくれたんだって?ごめんね」


「あのね、たのしかったーー!」


「おっかけっこしましたよ!」


「アイス、しょぉちゃんのもあるんだよ、食べよーよ」


「エッ俺のも買ってきてくれたの?」


「疲れただろうし、店で食べるのかなって思ったんだけどな。満場一致でお持ち帰り。一緒に食お」


「しょぉちゃんも早く手洗って洗って~」


「ね、とりさんのおふとんじゃなかったねっ」


「そうですねっうふふふっ」


「なになに、鳥のお布団て??」


「あのねぇ……」


明るく光溢れるリビング。
やがて五人兄弟の笑顔と、楽しそうな笑い声に満ちることでしょう。



💙❤️💚💛💜