One~愛を教えて~32 | step and go☆嵐が大好き✩.*˚羽生結弦くん応援!

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現在は主に、羽生くんの事、嵐さんの空想のお話を掲載しております。
(過去の嵐さんの空想のお話は、『Angelique』を再掲中です。他のお話については検討中です。申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ)


「お前さぁ、映画じゃあんなキラッキラのステージに立ってさ、物凄い歓声を浴びて沢山の人を夢中にさせてんのに、実は、普通の男の人でさ。

ニコニコ笑顔を振り撒いてるのに、人知れず悩みを抱えてたりしてさぁ。びっくりしたよ」


「……幻滅、させちゃったよね。
ごめんね」


顔を上げ、力なく微笑む雅紀。


「幻滅なんかしてないぞ」


「え?でも」


「映画で見てた通り、雅紀はカッコよかった!!」


胸を張ってニッコリ笑うと、雅紀は思ってもいなかったのか、ぽかんと口を開けて。
でも、次第に瞳に光が宿って、頬に赤みがさした。


「でね?それどころかさぁ、びっくりする程気さくで、めちゃくちゃ働き者で、真面目で、料理も上手いし!洗濯物はキチンと畳んでくれるし、テキパキ掃除もしてくれて、家の中を清潔に保ってくれてる。気遣い屋さんだし、心根も素直で本当に優しくて」


「ちょっと、、しょーちゃんてば褒めすぎだよ…」


落ち着かないのか、瞳を逸らしてモジモジしてる。


「ハハハッ、まだまだあるぞ?アレの最中だって、、雅紀はほんっとに可愛いしさ。理性をいつも持ってかれて、腰は止まんねーし、つい、やり過ぎちゃう」


「ヤダしょーちゃん!えっち!」


あらら、真っ赤になっちゃった。


「ハハッ、ごめん。
でも、でもね……映画を観て、抱いてた印象通りだったんだよ。

雅紀は本当に、本当に素敵だった…」


俺を真っ直ぐ見て立ちすくむ雅紀を、抱き締めた。


「いやだ。過去形なんて、ヤダよ」


左右に振る頭を、宥めるように何度も撫でた。


「だいすき…大好きだ。
俺は雅紀が大好き。

誰かを好きになるって気持ちを、教えてくれてありがとう」




「ヤダっ。ぐすっ…、しょーちゃんが何を言ったって、オレはぜったい離れないからっ」


ぎゅうって俺にしがみついて、スンスン鼻を啜ってる。

俺はさ、今胸が震えるほどに、雅紀が愛おしくて仕方がないよ。


「はぁ。雅紀が作ってくれたメシ、どれもこれも、全部美味しかったなぁ。
餃子はさ、雅紀のお父さん直伝だって言ってたよな」


「うん…だってオレ、中華屋の息子だもん…」


「お父さんとも、さよならも言わずにこのまま別れるのか?」


「……」


「コンサートはね、雅紀の言うように、雅紀が絶対的信頼を寄せるあの4人が何とかしてくれるかも知れない。
でも…、それだけじゃないってのは、分かるだろ?

雅紀が居なくなったって事になったら、心配しながら帰りを待ってくれるであろう人が、すぐ何人か思い当たるだろ?
でもね、今雅紀が思ってるより、本当はずっとずっと沢山の人が待っているんだよ。
それが、雅紀が元の時代で生まれて、育って、ずっと生きてきたって事なんだから。


雅紀には、帰れる場所があるんだ。

そして、帰れるチャンスは恐らくこの一度きり。

雅紀、ちょっと手、広げて見せて」


「手?」


キョトンとしつつ、手を広げて見せてくれた。

俺はズボンのポケットを探って、さっき引き取ったばかりの物を取り出して、左手の薬指にはめた。


「え……ゆびわ?」


「うん」


キラキラしたリングは、雅紀の細長い指によく似合ってる。


「きれい…それに、ピッタリだ」


光にかざし、何度も反射させてうっとりと眺めてくれている。


「貴金属としての価値は低いかも知れなくて、ゴメンなんだけど…。
実はねこの金属は、この今の、つまり雅紀の時代から後の、未来になってから発見された物質なの。

雅紀が元の時代に戻った時、雅紀が居なくなったその時点からどれだけ時間が流れているのか分からないけど、もし、どこに居たのかって証明しなきゃいけない事態になったとしたら、これがあれば。
このリングを調べてもらえば、
雅紀の言う事が本当の事だってちゃんと信じて貰える筈だから。

ちょっと待ってね、一回はずすね」


ポッケから一緒に作って貰っていた同素材の細いチェーンを出して、指輪に通し、雅紀の首に掛けた。


「しょーちゃん、これは…」


胸元に掛かった指輪を、手の平で大事そうに押さえてくれてる。


「戻った時、もしも居なくなってから殆ど時間が経過してなかったとしたらさ、指輪なんかしてたらまずいだろ?

これなら、チェーンも細いし、首に掛けてても目立たない。
だから……、
どうか、俺の代わりに雅紀を護って下さい」


雅紀の手の甲に、そっと俺の手を重ね、祈った。


「御守りだよ。俺は一緒に行けないから」


「しょー…ちゃん…」


止めどなく溢れる涙と鼻水で、顔をぐしゃぐしゃにしてる雅紀。

あぁもう、可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて、可愛くて可愛くて可愛くて…


「愛してる。ずっと、祈ってる。雅紀の幸せを」


「しょーちゃん…ヒックヒック…
しょーちゃぁん…」


細い肩を抱き締めて、優しく背中をトントンして。


「おばぁちゃんの体調の様子見と、わんちゃん達のお散歩は、俺が引き継いで続けてくから安心してね。
戻るとなると、それが心残りだっただろ?」


「しょーちゃん…ありがとう…。ヒックヒック、だいすき…。オレのしょーちゃん…」


ぎゅってしがみついて来て、シャツに顔を埋めて。

俺の匂い、憶えててくれるかなぁ。。

ううん、忘れちゃってもいいさ
俺の事を思い出して、寂しい思いをするよりは、ずうっと。

そうして暫くして、やがて泣き止んだ雅紀が、決心したように顔を上げた。


「しょーちゃんよりオレの方が年上なのに。
ごめんね」


「ううん、謝ることじゃないさ」


「オレ、顔洗ってくるねっ」


「ン。俺も、フィルムのセットしてくる。
雅紀が戻って来て席に着いたら、暗くして、始めるからね」


「うん、分かった」


雅紀はトイレに、俺は映写室へ向かった。

あの時、フィルムは自動収納されていたままで、中身がどうなっているのか、確認していない…

『ARASHI Anniversary Tour 5×20FILM Record ofMemories』

あった、これだ。

どうか、ちゃんと映りますように。


雅紀がシアターに戻ってきて、座席に座るのが見えた。

俺も、フィルムをセットし、客席に向かった。



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