One〜愛を教えて〜31 | step and go☆嵐が大好き✩.*˚羽生結弦くん応援!

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現在は主に、羽生くんの事、嵐さんの空想のお話を掲載しております。
(過去の嵐さんの空想のお話は、『Angelique』を再掲中です。他のお話については検討中です。申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ)



『目的地ニトウチャクシマシタ』


AIが音声で教えてくれた。


「ありがとう」


『ドウイタシマシテ』


車は静かにパーキングに停車した。


「…まさき、着いたよ」


「ん……うん…」


応えはあるけど、まだ目を閉じたまま。


「眠い?もうちょい寝てるか?」


まだ少し時間はある。


「ん…ううん、着いたんだよね。起きる」


パチっと目を開け、身体を起こした。



「あー、なんかすっかり暗くなってるねぇ…おはよ、しょーちゃん」



「おはよう。じゃぁ、行こっか?まだ雨降ってるけど、走ればすぐだよ」


「雨?あ、ほんとだ。やっぱり雨になっちゃったんだねぇ」


窓の外に、じっと目を凝らしている雅紀。


「少し前までは土砂降りだったけどな。やっと小雨になってきた」


「しょーちゃんオレが寝ちゃった後も起きてたの?」


こっちを振り向いて、小首を傾げた。


「うん。雅紀の寝顔、見ていたくて」


「えぇ?ヤダ恥ずかしいなぁ。ヨダレとか垂らしてなかった?大丈夫?」


「ハハハッ、大丈夫。
めちゃくちゃ綺麗だなって、ずーっと見惚れてた」


ちょっと恥ずかしいけど、素直な気持ちはちゃんと伝えておこう。


「もぉ、しょーちゃん、真顔でゆわないで!」


耳まで赤くして、両手で顔を隠してる。


「なんで?ダメ?」


「ダメ!オレが恥ずかしいから!」


「そっかぁ、ゴメンゴメン。
じゃ、行こっか」


「ぅん…」


まだちょっと赤い顔の雅紀にコートを着せ、
俺も荷物を持って、手を繋いで小雨の中を走った。

すぐに到着し建物の中に入ると、雅紀はキョロキョロしてる。


「ここ、…映画館だよね?」


「ご名答。ここが、俺のお気に入りの、とっておきの場所だよ」


「映画館が?」


「うん。入ろ」


シアターの前に受付があって、


「おじいちゃん、こんにちは」


いつものようにそこに座っているおじいちゃんに声を掛けると、驚いたように顔を上げた。


「お前さん、来たのか」


「うん、雅紀と一緒」


背後にいた雅紀が、こんにちはっておじいちゃんに会釈した。


「そうか…。

少しばかり早いが、誰も来ないし今日はもう店仕舞いするとしようか。
表を閉めてくるから、お前さん方はゆっくりしていくといい。
上にいるから、帰る時は声を掛けてくれ」


「分かった。
おじいちゃん、ありがとう」


「構わんよ」


おじいちゃんは優しい目を少し細めて、笑い皺を刻んだ。


「じゃぁ、行こう、雅紀」


「うん。あの、ありがとうございます」


俺に手を引かれながら頭を下げる雅紀に、おじいちゃんは


「達者でな」


そう言って片手を上げて微笑んだ。


シアターの中は明るく、スクリーンも真っ白だ。


「この辺にしよっか。
雅紀、これ」


あの時と同じ中央の座席を選んで、持ってきた荷物を開き、中身を雅紀に手渡した。


「え、その荷物ってオレの衣装だったの?なんで」


「着て。雅紀の服だよ」


「…しょーちゃんの服、脱いだ方がいいの?」


そんな、迷子の子犬みたいな目をしないで


「俺が見たいから。お願い」


「うん…」


多分納得していないながらも、着替えてくれて。



「…着たよ。これでいい…?」



「ありがとう。

やっぱり、雅紀はこの服が一番似合う。俺の服なんかより、ずっと」



雅紀の手脚の長さや、本来のスタイルの良さがずっと際立つ。

やっぱり、カッコいいなぁ。



「オレは、しょーちゃんの服、好きだったよ…。


ねぇ、

もしかしてオレを、元の世界に帰そうとしているの?」



「…そう、だよ」


鉛のように、言葉が重い。


「しょーちゃんから見てオレはさ、ゆきずりで出会った人と身体を重ねて…、
元の世界に帰れる手筈が整ったら、『じゃぁ帰ります』って、ぜんぶ放り出して居なくなるような男に見えた?」


「う、ううん、ううん違う、そんなんじゃ。
でも、俺から言わなきゃって。雅紀は…優しいから」 

「優しさとかじゃ無くて!

オレは怒ってるんだよ、しょーちゃん」


声を荒げる雅紀、初めて見た
俺、それだけ怒らせちゃった…。
涙が出そうだ


「ねぇ、しょーちゃん。

しょーちゃんがオレの事を好きだと言ってくれて、
心と身体を初めて重ねられたあの時…、
これから先の人生、しょーちゃんと並んで手を繋いで、一緒に前を向いて歩いて行こうって、そう思ったんだよ。

勿論、元の世界を思い出さない日は無いよ。だってコンサートの真っ最中だった。
どれだけの人に、どれだけの迷惑を掛けてしまったんだろうって、ずっと申し訳なく思ってる。

でもね、心配はしてないんだ。
四人なら、絶対何とかしてくれるから。

だから、しょーちゃん、
オレの手を離そうとしないで。
せっかくしょーちゃんと手を繋げたのに…

オレは、絶対この手を離さない。

離さないから!」


俯く雅紀の拳が、真っ白になって震えてる
涙声なのは、本当に悔しいからだ
それだけ、俺のことを真剣に思ってくれてるからだ。

俺と、この世界で生きて行こうと決心してくれていたなんて…
胸の奥が熱くなる。こんなに嬉しい事は無い。


きっと分かってくれるよね。

これは別れなんかじゃないと。
俺たちを本当の意味で引き裂けるものなんて、どこにも存在しないんだから。


「雅紀、聞いて」



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