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(翔Side)
「島国の日本において、キミらの間に芽生えた感情は、タブーなんだろう?
ましてや、二人とも社会的に、とんでもない影響を及ぼしかねない仕事をしている。
君が欲望の赴くまま雅紀君に触れるたび、
あの子がどれほど苦しんでいたのか...考えたことはあるかい?」
「それは、考えて...。」
考えているつもりで、二人で乗り越えてゆくつもりで。
でもそれは、自分の頭の中の、狭い世界の中だけで考え描いていた地図でしかなく。
「この先、キミは沢山のものを失うだろう。中には、もう取り返しのつかないものもあるだろうね。
雅紀君にも、失わせるつもりかい?」
「それは、、」
「このまま、君と結ばれた記憶を無くしていた方が、この子にとっては幸せなんじゃないのかな?」
雅紀をギュッと抱きしめている自分の手が、冷たくこわばっているのが分かる。
「キミが本当に、この子の事を愛しているのなら」
雅紀を離したくないこの気持ちは、俺のエゴ…
では、本当に愛しているのなら...?
「...大丈夫ですか」
「あ、、すみません」
知らぬ間に冷や汗をびっしょりかいていて、雅紀に似たお付きの方が、おしぼりを置いてくれた。
そう、雅紀に似ているんだ
「あの、この方が雅紀によく似てるのは、偶然ですか?」
「うん?あぁ、リューシスのことか。
それはそうだろう、私が造ったのだから」
「つくっ...?」
「亡くなった許嫁と生き写しの姿にね。...死者だけは、どう手を尽くそうが、蘇らせる事は出来なくてね」
じゃぁ、もしかして。
「もしかして、よく似た誰かを...雅紀のことを探してたんですか」
「そうだよ。永い間、ずっと」
偶然ではなく、ましてや、一目惚れでもなかった。
永い間、雅紀を探すのに費やしてきたルーシスさんの諸々のバックグラウンドは、そのまま雅紀への想いの重さになっている。
「分かり...ました。
あなたが、僕らに抱く懸念はとても正しい」
この人の背後の底知れなさに戦慄し、今の俺では太刀打ち出来る術はないと悟って声を絞り出した。
「ほぅ。では、キミはどうするのだ?」
「スッパリと身を引きます。
但しあなたにも、お願いしたい条件があります」
「条件?」
「はい、そうです。
まず、雅紀の忘却の術を解いてください。
僕は、雅紀に事実上の別れの提案をされています。
記憶を戻した方が、雅紀にはむしろ良いはずです。
僕らのグループはスキンシップが多い方ではありますけれど、、僕は今後、その範疇を越える事はありませんから」
桜を見に行った時の。あれは、今すぐというものでもない、雅紀からの俺への思い遣りの提案ではあったのだけれど。
「なるほど」
「それから、あなたの母国に雅紀を連れて行くことについては、僕はもう何かを言える立場ではありません。
ですが、時間が欲しいです。
僕らはグループですし、関係各所と応援してくれているファンを含め、ちゃんと雅紀を見送りたい。
雅紀にとっても、それが出来なかったら一生の悔いが残るはずです」
「良かろう。必要な時間は?」
「出来れば1年」
「1年?!それは無理だよ。1ヶ月。それなら待てるが」
「1ヶ月だけと言うのでしたら、、関係各所の事は考えず、雅紀の為だけの1ヶ月にして頂きたい。
その期間を終えるまでは雅紀に干渉せず、以前のままの日常の暮らしをさせてあげてください。
雅紀がと言うよりも、それは人にとって、大切で必要な時間です」
「フム、まぁいいだろう。文字通り、キミがあの子とスッパリ別れると言うのなら。
私もキミの条件をのむよ」
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