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『目覚めてすぐなら夢を覚えてる...だから束の間だけど...幸せ』
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(翔Side)
ニノの言うとおり、俺達は1カット目から、求められる姿をそれぞれが最適と思われる手段で表現した。
カメラマンも驚くくらい、短時間でオーダー以上のものが撮れたようで、思った以上の早い時間に仕事を終える事が出来た。
急いで四人でホテルに向かい、
交渉はニノが立った。
「相葉がお世話になってます。
丁度少し時間が出来ましたので、遅くなりましたがご挨拶に伺いました」
部屋に通されたけど、昨日と違って
キツイ香りがする。
「ユリ...ですかね」
「香りに酔いそう」
小声で呟きつつ、通された奥の部屋に進んだ。
ソファーに横並びに座る、
雅紀とアイツ。
二人ともバスローブ姿なのは、風呂上がり?
テーブルの上には、ピンク色の液体の入ったシャンパングラスが一つだけ置いてあった。
雅紀はトロンとした顔をしていて、今にも寝てしまいそうだ。
「ルーシスさん、ですよね。
相葉がお世話になっております。ご挨拶が遅れましたが、二宮と申します。櫻井はご存知ですね、こちらから松本、大野です。」
「あぁ、わざわざ御足労を」
「お取り込み中...でした?」
「いや、却って説明の手間が省けて良いだろう。
雅紀君は俺の国に連れて行く。今晩にでも発つよ。
今から契りの儀式をする所さ。
そこで見届けてゆくかい?」
「あなたの国...?今晩?契り?
相葉さんの同意はあるんですか?」
「同意してくれるさ...コレでね」
シャンパングラスをかざした。
ニノが智くんに目配せし、
すぐに智くんが動いたが、次の瞬間に取り押さえられた。
「おーのさん!」
振りほどこうとする智くんの前に、他の黒服達も立ちはだかった。
押し合いしてる最中、ニノが何かに気付いたのか潤くんに耳打ちした。
「...あ、成程。アンタら、俺らを傷付けないように言われてる訳ね?でも俺は容赦しねーよ?」
潤くんが手近の黒服の一人をドカッと蹴り倒す。
それを合図とするように、
智くんとニノも黒服達の手をすり抜け、俺も雅紀の元へと身体が動いていた。
俺たちに手を伸ばしてくる黒服達を、潤くんと智くんが引き受け、次々と薙ぎ払ってゆく。
何とか雅紀に辿り着き、抱き締め、振り返ると
「貸せよ!」
「なんだね君たちは!」
「やめなさいって!」
「君らには関係ない!離したまえ!」
智くんとニノがグラスを奪おうとアイツと揉み合いになっていて、そしてその液体が…
見ている間に、バシャッと智くんとニノに掛かってしまった
「うぇっ...なんか...あまったるぅい...」
「ベタベタする...舐めちゃった、気持ちわりぃ...」
「おい、二人とも、大丈夫か!?」
駆けつけた潤くんに二人の視線が集中し。
「...J...」
「ぇ、ニノ?...え?なんでそんな熱っぽい目で俺を見る?」
「じゅんくん...」
「り、リーダー!なんで顔を赤らめて俺を見んの!...わ!ちょ!来んなって!」
「J...っ」
「うわぁぁぁニノ、近い近い!
リーダー手ぇはなせ!ヤバイヤバイヤバイ!やめてぇ」
二人に両側から抱きつかれ、頬にキスをされ、潤くんは茹でダコみたいに真っ赤っかだ。
「...ルーシスさん、これって」
明らかに、この液体のせいで智くんとニノの行動が...
「舐めた程度だろ、すぐに効果が切れるさ。...王家の宝と言っても遜色の無い、貴重な媚薬だったのだがなぁ。ああ、勿体ないことだ」
ここは舞台の上?ってくらい、大袈裟な身振りでため息を付いて見せた。
何なんだ、この人は。
雅紀を抱いた手にギュッと力が入る。
「舐めた程度であんなですか…
あなたは、随分非道なものを雅紀に飲ませようとしてたんですね」
俺の睨みにも気にもせず、フッて鼻で笑い、
「断言しよう。
この子は 君らとこの日本にいるより、俺といた方が幸せになるからだよ。
とんだ余興になってしまったな。....シガーをくれ。君もいるかい?」
「結構です」
黒服だが、屈強な男性達とは明らかに違う、
細身で黒髪でメガネを掛けた...雅紀に似た、中性的な雰囲気の人が、葉巻をカットし火を付けて渡した。
アイツが紫色の煙をくゆらすと、紙タバコとは別物の、アロマと言って良いくらいの芳醇な香りが辺りに漂う。
さっきの人が手を貸してくれ、俺たちを対面のソファーに座らせてくれた。
「コーヒーでよろしいでしょうか?...雅紀様にも」
「あ、いいえ、お構いなく。あの...」
俺の視線で分かったみたいで、
「お連れ様ですね?ご心配なく。
クスリの効果が切れるまでは、それぞれお部屋を隔離して休んで頂きましょう」
この場に似つかわしくない、穏やかな優しい微笑み。
やっぱり雅紀に似ている。
「ルーシスさん、あなたは、本当の意味で何者なんですか?
あなたが雅紀に何かを施してるのは、誰が見ても明白です。
僕らの旅行の思い出を、雅紀は『思い出せない』って言いました。『思い出そうとすると、頭がぼんやりする』って。
でも、あなたのことは覚えてるみたいです。
どうやったらそんな事が出来るんです?」
「欧州の片隅の小国が、侵略を逃れ今まで生き残ってきているのには それなりの理由があるのさ。
国を護る為に、人道的にタブーとされているクスリや法術も積極的に用いてきた。
...ちょっと紐解くだけで、王家の陰には血なまぐさい話なんぞ幾らでも転がっている。
王家の子孫に極秘裏に伝授されてきた『人には言えぬもの』の数々。それを永い間遣ってきた御先祖達はいつの間にか『人ならざる者』になってしまった。
子孫である俺も然り...ね。
俺の名のMagus、真木もMagi。
古い言葉で魔術師の意味を持つ。
Magus Lucis Primae・Magiという俺の名は、
暁の魔術師という意味だ。
大きな術には大きな対価を払わねばならないが、大抵の事は出来る。
国の未来の予見も。
第五位継承者という意味の無い位置でも、役割はある....だからこそ俺は王族なのさ。
雅紀君の記憶は、キミとの蜜日ゆえに辛さを抱えていたから少々いじった。
だが無くなった訳ではない。この子の意識下に眠って残っているよ、安心したまえ」
「どうしてそんな事を...。元通りにしてください!雅紀は、思い出せずに苦しんでいる」
「それはキミが無理に思い出させようとするからだろ?
忘却の術は、人を、雅紀君を守る術だ」
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