あなたの中の天才脳 | 英語学習雑感ブログ

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高校1年生レベルの理解力

 

 

NHKで、frontiersで扱ったテーマを、ワイドショーのようなスタイルで生まれかわされた番組の1つです。

内容は大変興味深いのですが、説明がずさんな部分がかなりあり、このすばらしい内容に大きなマイナスとなっているのが残念です。

 

 

人間の主に右脳部分に、潜在していると判断されている能力が、左脳部分の後天的障害などが原因で、突然発現すると説明され、後天性サヴァン症候群と名前を付けているみたいです。

すばらしい絵を描く能力や、すばらしい音楽を書く能力が、後天的に左脳に障害が生じたために、突然、開花するものとして説明されます。

 

基本的に、右脳を抑圧する部分として、左脳が理解されるのですが、なぜそのようになっているかというと、我々が文明社会にうまく適応していくために、コミュニケーション能力(基本的に言語を操るのは左脳です)を高度に使いこなす必要があり、円滑なコミュニケーションのために、より直感的・情緒的な右脳を抑圧する必要があるというのが、このテーマの説明の趣旨です。

 

しかし、残念なことに、その後天性サヴァン症候群の例として、多言語習得能力が紹介されてしまっています。実際に、その説明はいい加減で、後天的にどのような障害がきっかけに、多言語を突然習得できるようになったかの説明は全くなされていないのです。

音楽や絵に関しては、きちんとした説明が行われていました。

 

語学に関しては、NHKの定番と言えるくらい、いい加減な説明があり、チコちゃんに叱られる!という番組では、「なぜ同時通訳はうまくいくか」という事実に反する疑問を紹介した上で、それがいかに正しいかをまことしやかにいんちきに説明しています。

正しくは、「なぜ同時通訳はうまくいくと、我々素人は思い込んでいるか」が正しく、「同時通訳は、ほとんどがうまくいかないにもかかわらず、我々が、そうであると思い込んでいる」が正しい説明であるべきです。

 

念のため、この投稿をするために、後天性サヴァン症候群を調べたのですが、言語習得能力が突然発現することを述べたものは、一切ありませんでした。

 

語学に関しては作り話が相変わらず蔓延っていて、これがまことしやかに語られているのは本当に嘆かわしいとしか言えません。

 

 

野口英世が、シェイクスピアの戯曲の台本を読んだだけで英語がペラペラになっているなど、紹介されているインチキな本がたくさんあります。こんなことが嘘なのは、シェイクスピアの時代には、19世紀後半から20世紀初頭にこの世の中に登場したものを、そもそも表現する語彙が使われていないということを確認するだけで、簡単に見破れるのですが、その嘘を止めようとしない本がたくさんあるのは本当に困ったものです。産業革命によって、我々の日常生活に登場するようになったものというのは、山ほどあるので、これらを語彙として持たずに、20世紀初頭に英語の日常会話がペラペラということは絶対にあり得ないはずなのです。

 

 

左脳が抑圧するものが、障害によって突然開花するというのは、後天性サヴァン症候群のメカニズムの基本が分かっていれば、絶対に紹介されるはずがない言語習得能力をあえて紹介しようとするNHKの意図にとても疑問を感じずにはいられません。