オリンピック組織委員会の会長である森氏のJOCでの発言が、世界中を駆け巡って物議を醸している。
一部に、『発言を恣意的に切り取って報道している』という方々が有るようだったので、全文を読んでみた。
以下にリンクを貼っておくので、ご覧いただきたい。
読んでいただければわかると思うが、発言を恣意的に切り取るも何も、前後の脈絡が全く無いので、『恣意的』という指摘は全く当たらないことがはっきりわかる。
この部分の発言は、読んで字の如く、そのままの意図で発言されている。誤解の余地は全く無い。
そして、発言全体を通して、何が言いたいのかさっぱりわからない。
このような無意味な発言を長々とするこの人が、なぜ女性の発言が長いなどと言えるのか、理解に苦しむ。
森氏の、驚くほど人権意識に全く欠ける発言は、今に始まったことではないが、だからといって許されるものではない。
この人の頭の中を書き換えるのは無理だと思うので、辞めていただくしかないだろう。
この発言を読んで思うのは、この人にとってオリンピックとは何なのだろう、ということだ。
どこで読んだか忘れてしまったが、日本の政治家は、『調整役』でしかない、という批判があった。
まさに、その通りだと思う。
現代日本の政治家は、ずっと、経済界の方を向いて調整する中で、様々なことを実現させてきた。
経済が右肩上がりの時は、それで良かっただろう。（その中で失われてきたものもたくさんあると思うが）
森氏の手腕は、そういう中で培われてきた人脈を使って、オリンピックのためにお金を取ってきたり、協力を取り付けたり、そういう部分で発揮されるのだろうと思う。
何かを実現させるのに、そういう力が必要だということは理解できる。物事を実現させる、現実的な対処の能力ということだろう。
森氏にとっては、オリンピックとは、『実現させる』ことだけに意味があって、『何のために』ということはどうでもいいのだと思う。
しかし、今回コロナ禍にあって、そういう現実的手法の限界が、はっきりと示されたのではなかったか。
世界の様々な国の首脳が、自国の国民に向けて、政府がコロナ禍に対してこのように考えて対処していく、という、理念というべき強いメッセージを発信する中で、日本の政府は、全くそんなメッセージを発信する事がなかった。
しかし、今回のような未曾有宇の出来事に対しては、現実的対処は、理念がなければ行き当たりばったりにならざるを得ない。
一つの事に対処すれば、別の所にしわ寄せがくる、その繰り返しになって、政府への不信を高めることになった。
その中での、今回の発言である。
正直、森氏がオリンピックの理念を全く理解されていないのは、明らかだろう。
自分が、女性蔑視をしていることさえ、おわかりではないようだ。発言は、森氏の普段の考えがそのまま表れたものであるのは、明らかなのだから。
オリンピックとは、何なのか。
現状がその理念からかけ離れてしまっているとしても、オリンピックが特別であるのは、その理念のゆえである。
例えそれが幻想であるとしても、その理念が根底にあるからこそ、オリンピックは意味を持つ事が出来る。
オリンピックは、その理念ゆえに、人々に未来への希望を持たせることが出来るのだ。
そのような理念が無くなったオリンピックは、現実が残されるだけになる。
大国の都合に振り回され、国威発揚の場として利用されるだけの、そして開催国には多大な費用がのしかかる現実が残るだけのものになってしまう。
そのようなものに、国民の理解が得られる筈もない。
私が今回大変残念に思うのは、JOCが全くそれを理解していないことである。
もし、その事の重要性に気づいていれば、直ちに森氏に辞任を促す筈だ。
しかし、JOCは、はっきりした非難の声明すら出していない。
IOCがこの件に手を出さないのは、JOCのメンツを潰さない為だろうと思う。
JOCが断固とした対処をしなければ、世界中に日本という国は、この程度の国なのだと示す事になる。
実際には、組織委員会は別組織になり、罷免権はJOCには無いだろうが、要求すべきであると思う。日本において、オリンピックの理念を護るよう働きかけるのは、明らかにJOCの仕事だからである。
国民の多くがコロナ禍の為に経済的に苦境に立たされている中で、多大な経費を使い、しかもコロナに対する対策も明確に示されない為に、国民のオリンピック開催への理解が全く得られていない。その上この事態なのだ。危機感を持つべきだと思うが、そういうものは全く感じられない。
あの場ですぐに森氏をたしなめられれば良かっただろうが、出来なかったのだから、仕方ないのだ。断固たる処置を要求するしか、無いのである。
それにしても、この国はいつまで、こんな情けない状態が続くのだろうか。
女性をはじめ、様々な場で、あまりにも人権が踏みにじられていることが多すぎる。