チェンバー・ミュージック・ガーデン2024
葵トリオ ピアノ三重奏の世界
~7年プロジェクト第4回
ピアノ三重奏:葵トリオ
ピアノ:秋元孝介
ヴァイオリン:小川響子
チェロ:伊東裕
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第4番 変ロ長調 作品11「街の歌」
フォーレ:ピアノ三重奏曲 ニ短調 作品120
スメタナ:ピアノ三重奏曲 ト短調 作品15
(アンコール)
・マルティヌー:ピアノ三重奏曲第1番から第2楽章
・ラヴェル:ピアノ三重奏曲から第2楽章
千葉でゴルフのラウンド後サントリーホールへ直行。行けないかな~と思ってたところ、とんとん拍子でゴルフは終了、反省会の飲みも無く、余裕で到着(日にあたりすぎて疲れてたけど)。
ベートーヴェンの7つのピアノ・トリオを軸にした葵トリオの7年プロジェクトの第4回。
ことしは第4番の「街の歌」。
若きベートーヴェンが朝飯前にサラッと作曲したようなディヴェルティメント風の作品。
葵トリオもいよいよベートーヴェンの全曲録音プロジェクトを始動させたところで、第1弾の2,4,6番が発売されたばかり。
演奏も朝飯前と言った感じで、楽しく、軽やかな演奏ぶりに、聴いている方も楽しめました。
次のフォーレは没後100年のメモリアル。最晩年のピアノ・トリオは、きょうイチ期待していました。
いかにもフォーレの室内楽らしい、悠久の響きに魅了されました。
葵トリオのアンサンブルも、軽やかなベートーヴェンからは一転、フランス風の音のパレットは多彩で、第1楽章は淡い色を次々に塗り重ねていくような、そうした中で時折、主題が明確に立ち上がったかと思うとまた薄れていくような繰り返し。
小川さんのヴァイオリンと、伊東さんのチェロのユニゾンによる響きは秀逸で、ちょっと違う世界にさまよいこんだような気分にさせられました。
繊細なピアノはほぼ全曲休みなく弾かれ、大変そうでしたが秋元さんのタッチはいつも以上に冴えわたっていました。
後半のスメタナは生誕200年でこちらもメモリアル。ブルックナーと同い年だったんですね。
これは葵のメンバーも一段ギアーを上げて、もの凄い演奏でした(とくに第1楽章)。
第1楽章冒頭の小川さんのヴァイオリンソロの気迫たるや、鬼気迫るものがあって思わずのけぞってしまいました。
この何とも、スメタナ自身の悲劇を体現したかのような、第1主題の呪いのような旋律は、第2主題の優し気なメロディーをも飲み込んでしまい、明暗を繰り返しながら曲が進みます。
秋元さんのピアノの迫力も尋常でなく、もの凄く速いパッセージを、もの凄い強靭なタッチで弾くものだから、小川さんも伊東さんも乗せられたかのような気迫あふれるアンサンブルとなりました。
第2楽章、終楽章は、個人的には作品自体の出来が第1楽章ほど良くなく感じることもあって、第1楽章で圧倒され半ば茫然状態のまま過ぎ去ってしまった感もありました。
それでも快速の終楽章でのアンサンブルも葵ならではの精度で、素晴らしかったです。
いつも長めのコンサートになる葵トリオ(と、秋元さんのアンコール前のトークでも言っていた)ですが、きょうはやや早めの20:45頃、本プログラム終了。
ということもあってアンコールは2曲のサービス。
ベートーヴェンにフランスもの、国民楽派と多彩なプログラムで、葵トリオの魅力が存分に発揮された一夜となりました。