東京芸術劇場コンサートオペラvol.9
オッフェンバック/喜歌劇『美しきエレーヌ』
演奏会形式/全3幕/フランス語上演/日本語字幕付
指揮 辻 博之
エレーヌ:砂川涼子
パリス:工藤和真
メネラオス:濱松孝行
アガメムノン:晴 雅彦
オレステス:藤木大地
カルカス:伊藤貴之
アイアスI:反中洋介
アイアスII:堀越俊成
語り(日本語):土屋神葉
合唱:ザ・オペラ・クワイア
管弦楽:ザ・オペラ・バンド
オッフェンバックの傑作オペレッタ「美しきエレーヌ」。プログラムを読むと、日本初演ではないようですが、オーケストラ付き原語上演は初めての様子。
ばかばかしいくらいハチャメチャな筋書きですが、めちゃくちゃ楽しく作品の素晴らしさを体現した見事な公演でした。
シリアスなギリシャ神話を笑い飛ばしてしまおうという感じで、トロイア戦争の要因ともなったと言われる、絶世の美女エレーヌの不倫を楽しく描いたもの。
コンサート形式ですが、出演者は役にあった衣装を着て動き回るし、合唱(20名)も場面にあわせて踊ったり、歓声をあげたり、寝ていたりと、動きが激しかったです。
オケのザ・オペラ・バンドは、寄せ集めですが2005年結成、N響のメンバー(およびOB)が多く、コンマスの永峰高志さん以下、中村洋乃理さん、藤村俊介さん、梶川真歩さん(きょうは1st)、伊藤圭さん、青山聖樹さん、宇賀神さん、久保昌一さん等々。
小ぶりな編成ですが元気いっぱい。序曲から早めのテンポでワクワクさせられました。
きょうは台詞の部分をほとんど、土屋神葉(アクション俳優、声優)が動きを交え、演技にも参加しながら語ります。これは歌手陣の負担軽減にもなりましたし、実質初演という状況下ではまずまず成果を上げていたでしょう(本当は各歌手による語りが欲しいとこですが)。
題名役の砂川さん。絶世の美女役に相応しく、体にピッタリとした美しい衣装で艶めかしく魅了されました。オッサンキラー炸裂。会場の年配諸氏の目をくぎ付けにしていました(わたしも含め)
歌も砂川さんらしく清楚で、長丁場の中いくぶん抑え気味ではありましたが、第2幕の聞かせどころパリスとの二重唱「そうよ、これは夢」は官能的でしたし、第3幕でウィーン公演用に追加されたアリアは、きょう一番力のこもった歌いぶりで実に素敵でした。
パリス役のテノール、工藤氏もよく声が伸びるテナーで、素晴らしかったです。
カウンタテナーの藤木さんも出演。ピカピカのラメをまとったきらびやかな衣装で、第1幕と第3幕それぞれのアリアで喝采を浴びていました。
ほか歌手陣に穴はなく、指揮の辻さんの音楽運びが堂に入っていて見事でした。
各幕クライマックスに向け、加速して盛り上げるところや、冒頭から何度もでてくるキャッチーなメロディーの繰り返しなど、煽り方が見事で、オペレッタの醍醐味を存分に味あわせてくれました。
東京芸術劇場のコンサート・オペラシリーズ、時折珍しいオペラも取り上げ気を吐いていますが、きょうのような質の高い上演ができるなら、日本で中々上演されないオペレッタもどんどん取り上げてもらいたいです。
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