東京都交響楽団 定期演奏会(Bシリーズ)
指揮/サッシャ・ゲッツェル
ヴァイオリン/ネマニャ・ラドゥロヴィチ
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
(アンコール:ヤドランカ・ストヤコヴィッチ「あなたはどこに」)
コルンゴルト:シンフォニエッタ ロ長調 op.5
話題?のネマニャ・ラドロヴィチのベートーヴェン。
見た目のアフロな容貌とは真逆で、繊細で弱音を生かした丁寧な演奏。
背丈もあって大柄なので、ヴァイオリンが子供用みたいに小さく見えました。
とにかく丁寧に丁寧に、繊細に繊細に演奏するスタイルで、これはバックのオケにも強要されていました。
ただでさえ長いベートーヴェンのコンチェルト。集中力に富んだ演奏でしたが、全曲で45分近くの演奏時間はいささか長かったなぁ。
アンコールは、お国ものセルビアの作品ですかね。前半だけで1時間以上。
きょうのお楽しみは、コルンゴルドが15歳のときに書いたという「シンフォニエッタ」。題名からして小ぶりな作品と思いきや、全4楽章40分を超える大作。しかも大編成。コルンゴルドの神童ぶりがいかんなく発揮されます。
これがめちゃくちゃ楽しめました。NMLにある4,5種類ほどの録音を聴きまくっての予習。それでもナマでの楽しさは格別です。
冒頭から出てくる5音のモチーフが、全編いたる所で形を変えて登場します。
20世紀初頭の混沌としたヨーロッパの雰囲気がこれでもかというほど詰め込まれていて、15歳の神童の頭のなかは理解不能ですが、それでも何か、才気闊達な音楽には引き込まれざるを得ません。
全編、全く影はなく、精神的な深みは感じられないのですが、第1楽章での全体の主題の提示・展開、スケルツォ風の第2楽章、ロマン派の果実が熟しきって今にも腐ってしまいそうな香りぷんぷんの第3楽章、すべてがどんちゃん騒ぎで冒頭のテーマが高らかに奏でられて終結する終楽章と、実に楽しめました。
ゲッツェルの音楽作りは、実演の機会が少ないこの作品を、きちんの提示するという意味で妥当なもの。都響も大変な負担だったでしょうが熱演でした。もう少し聴ける機会が多ければ、もっと工夫が成される演奏も出てくるでしょうが、まずは良かったと思います。