今回も3冊。
なくなりそうな世界のことば(吉岡乾 著 西淑 イラスト)
最近しつこくて恐縮なのですが、これも片山さんがブログで紹介していたもの(きょうのNHK気象解説、大活躍でした)。
絵本のような(というか絵本)装丁で、各ことばそれぞれにきれいな絵が描かれていて、ページを繰るごとに、新たな世界が広がり、実に気持ちが安らぐ素敵な構成でした。
構成で面白かったのは、今回選ばれたことばが利用人数順に並んでいたこと。ページごとにだんだん利用人数が減り、最後の「マラミク」はなんとゼロ人。
読む前は、ことばがなくなるとともに文化も喪失していく、と一括りに考えていましたが、もっと日常的な世界で、近所の人とのおしゃべりだったり、農業、漁業、遊牧に関わることだったり、その地域ならではの気候のことだったりと、さりげない日常に結びついたことばがなくなっていくこと。すなわち、それぞれの地域で、昔々から綿々と伝わり続けたことの喪失。
世界にあまたあることばの多さに感心するとともに、やはりその喪失に切なさを禁じえませんね
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210814/18/bqx02601/66/d3/j/o1080081014986798137.jpg?caw=800)
現役引退~プロ野球名選手「最後の1年」(中溝康隆)
長嶋、王、田淵、江川、掛布、原、落合・・・プロ野球界のレジェンド24人の去り際の物語24編。
スポーツライター中溝氏、渾身の1冊だと思いました。
それぞれ、活躍した時代の物語(それぞれ最後に現役時の成績もデータとして記載)を語ったあと、最後の1年につなげるのは、すべて同じパターン。
引退に至る経緯は人それぞれ、みな体力の限界が原因であることは間違いないのだけど、その去り際の物語は実に多彩。
それぞれのレジェンドに対する中溝氏の思い入れは厚く、心打たれるけど、中でも、最後に持ってきた長嶋さんの章は、さすがにウルっと来ました
ここに出てきたレジェンドは、基本的には(バースとかクロマティとかもいるけど)、日本で活躍し日本で引退した方々ばかり。それだけに思い入れが強くなるのかな。
現代に置き換えれば、日本で名声が高まると、すぐ大リーグへ。大谷君の活躍とか見るに、大リーグでの活躍も嬉しいけど、日本球界一筋で全うする選手の物語は、やはり特別なものがあったなと。ぼくは、やはり昭和世代で、古いのかな
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210814/18/bqx02601/aa/4f/j/o0810108014986798142.jpg?caw=800)
雲上雲下(朝井まかて)
最近お気に入りの朝井まかてさん、2018年の作品が文庫化。中央公論文芸賞受賞作。
これはもう、何と言ったらよいか、傑作です。
朝井さんの作品のイメージ(まだ読んだの数冊ですが)は、幕末~明治の歴史上の人物を題材にした作品を書くというものだったけど、この「雲上雲下」は全く違う。
ファンタジーというか、現代の「にほんむかしばなし」というか、日本版SFというか。
かなり不思議ちゃんワールドが展開されるのだけど、徐々に壮大なテーマが浮かび上がってくる。
テーマ自体は、よく取り上げられる(と言っても深刻で重大なテーマ)ものだけど、そこに持っていく展開が凄すぎる。
日本伝統の昔話か、伝承が次々と語られる中、「いったいどういう展開になるのか」全く分からず、それでも、語られる展開が実に面白く、ぐいぐいとクライマックスまで持っていかれる。
しばらく、朝井まかてさんにはまり続けそう。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210814/18/bqx02601/95/b1/j/o0810108014986798151.jpg?caw=800)