PMの検証(第4回)~東芝プレス委託会社の溝径(グラモフォン~ポリドール編) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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PMの検証ならずレーベル溝径の検証の続きです。ビートルズLPの他社への委託プレス盤の数がソニーに次いで多い日本グラモフォン、後のポリドールについて検証します。東芝の他社委託盤24枚の内の5枚にグラモフォン委託盤が確認できます。
 
■ポリドール
グラモフォンはビートルズの発売順では最も古い653月発売のLP「ビートルズ’65」の委託盤をプレスしたメーカーです。溝径が30㎜で当時のグラモフォン自社盤と同じ溝径のLPに関しては、菅田泰治氏も著作「60年代ロックLP図鑑」でグラモフォン委託盤であると解明されています。一方で、本タイトルと翌66年発売のLP「ステレオ!これがビートルズVol.1」、「同Vol.2」委託盤の3枚にはPMがありませんので、これら3タイトルのグラモフォン委託盤のプレス年月は確認できません。
<グラモフォン委託盤「ビートルズ’65>
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<グラモフォン委託盤「ステレオ!これがビートルズVol.1>
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<グラモフォン委託盤「ステレオ!これがビートルズVol.2>
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ほぼ同時期に製作されたと思われるキング及びビクター委託盤が、665月、6月製作の、ビートルズ来日を直前に控えた、東芝にとっては稼ぎ時での委託でしたので、グラモフォン委託盤も同時期プレスではないかと思い、マトリクスによるプレス時期の調査を行いました。多少の逆転はあるものの、PMとマトリクスはほぼ連動しています(基本的にはプレスが後ほど、マトリックスの枝番が増え、マトリックスの後のスタンパー・ナンバーも増加する)ので、マトリクスの内容によりプレス時期が推測できると思ったからです。ここでLP「ビートルズ’65」のグラモフォン委託盤と、東芝プレスのマトリクスの比較表を示します。
<「ビートルズ’65」マトリクス>
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LP「ビートルズ’65」に関しては、委託盤はA面にマトリクス枝番「-3」、B面に枝番「-23」が刻印されています。東芝プレスのマトリクスと比較すると、6711月プレスの盤で枝番がAB面とも「-21」が付いていますので、通常の順序で考えると、委託盤の製作のほうが後となります。しかし、その後再発されたOP-8442のマトリクスの枝番も6711月プレスの枝番と同じ「-21」のままなのです。委託盤が、レコード番号が変更となった再発盤より後の製作ということがあり得るのでしょうか? アップル盤になって、ハイフン(-)なしで「3S」と新たな表記に変更となっています。そこで、残りの2枚、LP「ステレオ!これがビートルズVol.1」、「同Vol.2」のマトリクスも調べてみました。
<「ステレオ!これがビートルズVol.1」マトリクス>
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<「ステレオ!これがビートルズVol.2」マトリクス>
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委託盤では、「Vol.1」では枝番「-3」、「Vol.2」では枝番「-2」が付いています。再発アップル盤も調べてみましたが、アップル盤「Vol.1」のA面の枝番が「-2」、「Vol.2」ではA面の枝番がなしで、委託盤のマトリクスよりも早い製作と思われるマトリクスが刻印されていました。
オデオン委託盤がアップル盤よりも後に製作されることはあり得ませんので、以上のことから、委託盤のスタンパーは別途枝番を付けて製作され、そのスタンパーを貸し出してプレスを委託したのではないかと推測できます。委託盤の製造時期は解明できませんでしたが、上述のようにビートルズ来日時期のプレス委託ではないかと考えています。
 
日本グラモフォンは、7110月に社名をポリドールに変更しています。レーベルの溝径はその後も30㎜で、70年代に発売されたトニー・シェリダンとのポリドール・セッションを収録したLPなどビートルズ関連LPの溝径も30㎜です。その後溝径に変化が現れるのは、80年代に入ってからです。
841月発売のジョンのLP「ミルク・アンド・ハニー」(25MM-0260)、インタビューLP「ハート・プレイ」(20MM-9250)までは溝径30㎜ですが、その後、同年10月発売されたオムニバスLP「エヴリ・マン・ハズ・ア・ウーマン/ジョンとヨーコの仲間たち」(28MM-0390)の溝径が32㎜と変化しているのです。そこでもう少し詳細に変更時期を調査するため、他に84年発売のLPがないか調べると、13枚組LPボックス「50S-60Sゴールデン・ヒット・ポップス」(W-5471-83)が847月発売で、この中に「マイ・ボニー」収録のポリドール製LP PW-5474)が含まれていました。このボックス・セットは東芝とポリドールが共同で製作した通信販売用セットです。このポリドール製LPの溝径は30㎜で、同じボックスの他の東芝製LPPMが「4-6」で846月プレスですので、おそらくポリドール製LPも同じプレス時期だと思われます。以上のことから、846月から10月の間に溝径が変化したことが分かりました。
<13枚組LP50S-60Sゴールデン・ヒット・ポップス」(847月:PW-5474)(溝径30㎜)>
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<LP「エヴリ・マン・ハズ・ア・ウーマン/ジョンとヨーコの仲間たち」(8410月:28MM-0390)(溝径32㎜)>
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その後の877月発売のLP「ビートルズ1961」(18MM-0574)や同年11月発売のLP「ミルク・アンド・ハニー」1800円廉価盤(18MM-0609)でも溝径32㎜ですので、84年からアナログ末期まで、ポリドールの溝径は32㎜であったと推測されます。プレス機の変更があったのでしょうか。次回報告する予定ですが、実は70年代の途中から80年代にかけてのビクターの溝径が32㎜なのです。上記LP「エヴリ・マン・ハズ・ア・ウーマン/ジョンとヨーコの仲間たち」のランオフ部を見ると「V」の刻印が見られます。もしかすると、ビクター委託盤の印なのではないでしょうか。手持ちの84年以降発売された溝径32㎜のポリドール盤にはすべて「V」刻印が見られます。ポリドールは、CDが台頭し始めた84年頃に早くもLPの製造は委託に切り替えたのかもしれません。
残りのキングとビクターについては次回に報告します。

<LP「ミルク・アンド・ハニー」1800円盤(18MM-0609)「V」刻印>

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<グラモフォン~ポリドールの溝径変化>
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