PMの検証(第3回)~東芝プレス委託会社の溝径(ソニー編) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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PMに関する検証の第3回です。PMからは少し外れますが、今回は東芝の委託プレスの委託会社を見極めるポイントとなる溝の直径(溝径)について考察します。
レコード会社によりレコード製作に使用していた機械は異なっていたようで、出来上がりの盤のレーベルに見られる溝も、機械の種類により異なる大きさになったようです。レコード製作の工程や製造機器については詳しくないですが、盤を固定する等に付く跡が機械により異なるためでしょうか。この溝径を調べることで、その盤がどこのメーカーで製造されたのかを推測することができ、書籍「60年代LPロック図鑑」の著書である菅田泰治氏も、この溝径の違いにより、東芝が委託したメーカーを解明しています。
 
60年代から70年代初めにかけて製造されたビートルズ関係のLPの委託プレスは、菅田氏の著作によりピックアップすると19タイトル22枚であることが分かります。それ以外にも2枚確認していまして、LP「ステレオ!これがビートルズVol.2」の日本グラモフォン委託盤(溝径30㎜)、LP「ラバー・ソウル」のCBS・ソニーレコード委託盤(溝径69㎜)が存在し、その2枚を加えた20タイトル、全24枚をプレス年月順に以下の表に示します。
<LP「ステレオ!これがビートルズVol.2」日本グラモフォン委託盤(溝径30㎜)>
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<LP「ラバー・ソウル」CBS・ソニーレコード委託盤(溝径69㎜)>
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<確認できている70年までのビートルズ関係他社委託盤>
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この表によるとソニーへの委託が最も多く、次にグラモフォン、キング、ビクターと続きます。ビートルズ関係では、以上の4社に委託していたことが分かります。この特集の第1回で報告しましたように、70年代中期以降も少ないですが委託盤は存在します。そのときの確認では、同時期製作の手持ちの4社の自社製作盤も調べてみました。その結果、70年代以降、4社の溝径も変化していることが分かりましたので、委託先レコード会社別に報告します。
 
CBS・ソニーレコード
CBS・ソニーレコードは683月に設立された新興レコード会社ですが、当時最新鋭のレコード・カッティング・マシーン、ノイマン社製SX-68を導入したためか、69年から70年にかけて東芝も繁忙期などの自社ではプレスが賄えない時期に、結構高い頻度でソニーにプレスを委託していたようです。
71年の東芝御殿場工場新設後は委託も減少したようですが、第1回で報告しましたように、70年代中期以降も少ないですが委託は続いていたようです。ソニー設立当初のソニー盤のレーベルの溝径は69㎜ですが、第1回の報告では、80年のソニー委託盤の溝径は24㎜と報告しました。手持ちの盤で調べると、76年製作のプロモLP「ポピュラー.ベスト101-音のカタログ 第1<ロック&フォーク編>」(YAPC-77)では69㎜ですが、78年製作のこれもプロモ盤であるアース・ウィンド・アンド・ファイアの12インチ・シングル「ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」(YAPN-24)やLP「バングラ・デシュ」再々発盤(63AP-1292-4)では24㎜に変更となっているのが確認できます。特にLP「バングラ・デシュ」は、72年発売初回盤(SOPB-55055-7)、74年発売再発盤(SOPZ-76-8)の溝径は69㎜ですが、79年の再々発盤では24㎜に変更となっています。第1回報告の東芝のソニー委託盤LP「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」(EAS-80830)は77年の5月発売で溝径69㎜ですので、以上より、77年から78年の間にプレス・マシーンの変更等が行われたものと推測されます。
<LP「ポピュラー.ベスト101-音のカタログ 第1<ロック&フォーク編>」(76年:YAPC-77)(溝径69㎜)>
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<12インチ・シングル「ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」(78年:YAPN-24)(溝径24㎜)>
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<LP「バングラ・デッシュ」(722月:SOPB-55055-7)(溝径69㎜)>
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<LP「バングラ・デッシュ」(79年:63AP-1292-4)(溝径24㎜)>
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<LP「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」(775月:EAS-80830)(溝径69㎜)>
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<LP「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」PM7-4S>
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その後の80年代に発売されたソニー盤は、確認したものはすべて24㎜となっていました。東芝以外でも、ワーナー・パイオニアもソニーにプレスを委託していたようで、8811月発売のLP「トラヴェリング・ウィルベリーズ ヴォリューム・ワン」(23P1-2327)のレーベル溝径は24㎜で、盤のランオフ部(PMやマトリクス刻印部分)に「CS」の刻印が見られます。この「CS」は「CBS Sony」の略と考えられ、これにより80年代末期までソニーの溝径は24㎜であったことが推測できます。
ソニーだけで長くなってしまいましたので、日本グラモフォン~ポリドールは次回ということで・・・。
<LP「トラヴェリング・ウィルベリーズ ヴォリューム・ワン」(23P1-2327)(溝径24㎜)>
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<LP「トラヴェリング・ウィルベリーズ ヴォリューム・ワン」ランオフ部「CS」刻印>

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<ソニーの溝径変化>
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