エラー・レコード「この曲の作者は誰なんですか?」特集(第2回) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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毎年恒例初笑いエラー・レコード特集の第2回です。前回に続き、シングル・EPのカヴァー・レコードにおけるレーベルの作者名にミスがあるレコードの紹介「この曲の作者は誰ですか?」特集です。

前回は来日記念として、ポールの綴り間違いを中心に紹介しましたが、今回はまずはジョンを取り上げます。その前に前回の続きで、ポールの日本語名表記について考察します。前回、カヴァー・レコードについて標記間違いを取り上げましたが、本家の東芝さんにも表記違いが存在します。と言っても、64年のビートルズのレコード発売初期で、まだメンバーの日本語表記が確定していない段階での混乱の中での表記違いだと思われます。

まず、初期の2枚のシングル「プリーズ・プリーズ・ミー/アスク・ミー・ホワイ」と「抱きしめたい/こいつ」でのポールの名前は「ポール・マッカートニィ」と表記されています。さらに4曲入りEP1枚目でも同じこの表記です。
(シングル「プリーズ・プリーズ・ミー/アスク・ミー・ホワイ」(OR-1024))
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(シングル「抱きしめたい
/こいつ」(OR-1041))
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EP「ツイスト・アンド・シャウト+3」(OP-4016))
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シングルでは続く3枚目のシングル「シー・ラヴズ・ユー/アイル・ゲット・ユー」(OR-1058)以降は、「マッカートニー」と、現在の表記に統一されています。642月発売の初期2枚のシングルは日本デビュー間もないということで表記方法が決まっていなかったと思われますが、同年8月発売の1枚目のEPでも同じ表記がされたのは理解できません。いずれにせよ、もしこのまま「ニィ」で統一されていたら、現在も「マッカートニィ」表記のままであったかもしれません。ポール以外でもシングル「プリーズ・プリーズ・ミー」の解説でのリンゴの名前が「ロリンゴ」となっています。これは完全なる誤植でしょうが、どこから「ロ」が迷い込んだのでしょうか? このままこの表記が踏襲されていれば、リンゴも「ロリンゴ」と呼ばれていたのでしょうか?(そんなことはないですね)
さてジョンの標記間違いについてです。「John Lennon」と、ポールに比べて短く、間違えにくいとは思われるのですが、一部間違ったレコードが存在します。
 
■クール・キャッツ「プリーズ・プリーズ・ミー/恋のスペシャル・メール」(日本コロムビアSAS-264
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前回の最後に弘田三枝子のEPを紹介しましたので、今回もまずは日本代表です。グループ・サウンズ出現前の60年代前半にビートルズのカヴァー・シングルを発売したグループは、「抱きしめたい」のスリー・ファンキーズ、同じく「抱きしめたい」他の東京ビートルズ、そして、このクール・キャッツの「プリーズ・プリーズ・ミー」が3大グループになります。このクール・キャッツのシングル盤レーベルの作者が、「J.レエノン作曲」となっています。「レエノン」とは誰でしょうか? ローマ字読みをしても、「エ」が入る余地はないと思うのですが、どこから入ってきたのでしょうか。「Le」の「e」を二重読みしてしまったというような感じです。まあ、645月発売の最初期の国内カヴァー盤ですので、少々大目に見たいと思います。しかし、このレーベルではポールはどこに行ったのでしょうか? 「プリーズ・プリーズ・ミー」はジョン中心で作った曲ではありますが、オリジナル・クレジットにあるポールの名前を消さなくても良いと思うのですが…。この曲は、UKオリジナル盤では「McCartney-Lennon」と表記されていますので、マッカートニー作詞、レノン作曲と考えて、訳詞であるこのシングルではポールの名前を外したのでしょうか?
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ちなみに、このシングルのカヴァー写真は、ビートルズのポーズ(日本盤シングル「シー・ラヴズ・ユー」カヴァー写真)のパロディになっています。ビートルズの4人に対し5人と1人多いですが…()。彼らの「プリーズ・ミスター・ポストマン」収録のシングルも同様にパロディ・カヴァーです。今後、パロディ・カヴァー特集で取り上げたいと考えています。
 
■ザ・アップルジャックス「夢を追って/みんなダウン」(キングレコードHIT-384
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6211日に行われたデッカ・オーディションで歌われたポール作のオリジナル曲「ライク・ドリーマーズ・ドゥ」のカヴァー・シングルです。ビートルズとしてはレコーディングせず、アップルジャックスがカヴァーしました。国内発売では「夢を追って」という邦題が付けられています。ローリング・ストーンズの「彼氏になりたい」もそうだと思いますが、東芝(高嶋氏)以外が付けたレノン・マッカートニー・ソングの邦題ではないかと考えています。デッカ・オーディションで演奏されたオリジナル曲3曲のうち、他の2曲、ポール作「ラヴ・オブ・ザ・ラブド」、ジョン作「ハロー・リトル・ガール」も、他のアーティストがカヴァーしています。デッカ・オーディション・オリジナル曲カヴァー・レコード特集も考えています(今後の計画ばかりですみません)。
このシングルのレーベルの作者のジョンの表記が「Lenon」となっており、「n」が一つ足りません。まあ。ローマ字読みしても「レノン」と読めないこともないし、これも648月発売の国内最初期のカヴァー・シングルの一つですので、大目に見てあげましょう。
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■ジェイ・ベルリナーEP「ギター・ロマンス」(日本コロムビアLSS-690-N
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■ジェイ・ベルリナー「イエスタデイ/マック・ザ・ナイフ」(日本コロムビア45S-313-N
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ハリー・ベラフォンテのギタリストだったジェイ・ベルリナーが、超有名曲「イエスタデイ」をカヴァーしており、国内発売のシングル1枚、EP2枚が確認できています。まず、687月に「イエスタデイ/イパネマの娘/マック・ザ・ナイフ/500マイル」収録のEP「ギター・ロマンス」が発売されており、カヴァー裏の解説で、「ビートルズのポール・マッカートニーが作曲した美しいバラード」と書かれていますので、もしやと思い、恐る恐るレーベルを見ると心配が的中しました。「P. McCartney」とだけしか書かれていません。今度はジョンはどこに行ったのでしょうか? この曲はポールが単独で作曲した曲として有名ですが、クレジットまで勝手に変更することはないと思います。ジョンが可哀そうです。
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続くベルリナーの「イエスタデイ」収録EP6810月に発売されており、ここでもカヴァー解説にポール作曲と書かれてあるではないですか! これも…と思いレーベルを見ますと、ここでも「P. McCartney」単独表記です。
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さらに同じ月に4曲入りEP「イエスタデイ~ギター・ムード・ミニ・デラックス」(YSS-83-N)が発売され、今度こそはと祈る気持ちでレーベルを見ると…、やっと訂正されました。めでたく「J. Lennon-P. McCartney」と印刷されています。まさに三度目の正直ですね(二度あることは三度なく、良かったです)。
 
■モダン・ポップス・オーケストラEP「レット・イット・ビー(ポピュラー・ニュー・ヒット)」(日本グラモフォンKR-2126
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ビートルズ・カヴァー曲収録のシングル・EPを収集し始めると、イージー・リスニング系統のレコードまで手を出す羽目になってしまいます(トホホ…)。これもその1枚です。「レット・イット・ビー」収録のEPです。708月発売ですので、オリジナル発売後の比較的早い時期のカヴァーになります。今度は解説に問題があります。カヴァー裏にこの曲の解説が掲載されているのですが、なんとこの曲の作者が「ジョージ・マーティン」と書かれているのです!
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この曲は、実はマーティン作曲だったのですか! 知りませんでした。マーティンも寛大で、自分が作曲した楽曲を、無償でポールに渡していたのですね。偉大な人です。ちなみにレーベルは正しくレノン・マッカートニーとなっています。なお、そろそろマーティンが亡くなって1年になります。マーティン・プロデュース・ビートルズ・カヴァー・レコード特集も考えています(今回は計画の話ばかりで重ねてすみませんでした)。