自分の身長がずば抜けて高いわけではない。
かと言って、彼が特に低い訳でもない。
むしろほとんど変わらないのに。
ほんの少しだけ見上げるように話しかけてくるのも彼だけではないのに。
かと言って、彼が特に低い訳でもない。
むしろほとんど変わらないのに。
ほんの少しだけ見上げるように話しかけてくるのも彼だけではないのに。
「シウォン先輩って本当にかっこいいですね」
たまに言われることはあるけれど。
それは普段しないようなギャルソンエプロンのせいじゃないだろうか。
そう。
面と向かって言われるのは本当にたまになのだけど。
ワインのボトルを持ってバックヤードに帰ってくるたびに言われる彼のセリフに苦笑いする。
カジュアルダイニングと呼ばれる類の飲食店。
立派なソムリエは居なくても、ワインをグラスに注ぐくらいの給仕はアルバイトにもできる仕事の一つだ。
それは普段しないようなギャルソンエプロンのせいじゃないだろうか。
そう。
面と向かって言われるのは本当にたまになのだけど。
ワインのボトルを持ってバックヤードに帰ってくるたびに言われる彼のセリフに苦笑いする。
カジュアルダイニングと呼ばれる類の飲食店。
立派なソムリエは居なくても、ワインをグラスに注ぐくらいの給仕はアルバイトにもできる仕事の一つだ。
「…何もでないよ?」
「えぇ、残念」
「えぇ、残念」
あはは、と笑って綺麗に盛り付けられたパスタの皿を手にしてテーブルに向かう後姿は大型犬みたいで、思わず笑みがこぼれた。
「どうした?」
同じバイト仲間に声を掛けられる。
「んー。なんかあいつ犬みたいだなと思って」
「ああ。キュヒョンな」
「ああ。キュヒョンな」
同じように後姿を見て笑っているのは同意見の肯定なのだろう。
おもしろいのが入ってきたな、そう言って笑ったのは随分と前。
おもしろいのが入ってきたな、そう言って笑ったのは随分と前。
「ゴメン、ちょっと道開けてー」
店の裏口を大きく開けて、大きな箱を抱えて入ってきた彼の手に目を瞠る。
「ちょっ…キュヒョナっ!」
「え?」
「え?」
思わず叫んだ声にキョトンとこちらを見るキュヒョンの傍に、慌てて同じバイトの女子が駆け寄った。
「手、凄い血が出てるよっ!」
「あぁ、さっき荷物のバンドテープ切る時にちょっと切った」
「あと、任せていい?」
「あぁ、さっき荷物のバンドテープ切る時にちょっと切った」
「あと、任せていい?」
他のバイトに任せてそのままキュヒョンの手首を捕まえるとロッカールームまで引っ張っていく。
「え…あれ?」
「あれ、じゃないだろ!」
「あれ、じゃないだろ!」
洗面台で血を洗い流して、常備されている救急箱を掴んで乱暴に開けるとキュヒョンの指先に消毒液をたっぷりと注いでやる。
「…っ! 沁みるーっ!」
「当たり前だ」
「シウォン先輩、にこやかに笑いながら鬼みたいなことしないでくださいよっ」
「誰が鬼だ。おかしなこと言うな」
「当たり前だ」
「シウォン先輩、にこやかに笑いながら鬼みたいなことしないでくださいよっ」
「誰が鬼だ。おかしなこと言うな」
もうすでにちょっと滲むくらいしか出血していない傷口は指先だったせいで出血が多かっただけのようで深くもなさそうだ。
絆創膏を貼り付けて傷口を塞いで、ふと気づく。
ギターを弾く人特有の手の特徴。
絆創膏を貼り付けて傷口を塞いで、ふと気づく。
ギターを弾く人特有の手の特徴。
「…なぁ、ギター弾いてたりする?」
瞬きしたキュヒョンがこくりと首を縦に振った。
「趣味で、ちょっと」
「そっか、やっぱり」
「え?」
「指」
「そっか、やっぱり」
「え?」
「指」
ああ、とキュヒョンが納得したように笑う。
自分の手を見ながら握ったり開いたりを繰り返している彼の手をポンと軽く叩いて救急箱の蓋をしめた。
自分の手を見ながら握ったり開いたりを繰り返している彼の手をポンと軽く叩いて救急箱の蓋をしめた。
「それなら、もっと手は大切にしろよ」
照れたように笑って見上げてくるキュヒョンが礼を述べるのを聞いて、なんだかこちらが擽ったい気分になった。
「もしかして、シウォン先輩もやってます?」
「うん、好きでやってる」
「そっかー。じゃあ今度聞かせてくださいよ」
「…お前もな」
「うん、好きでやってる」
「そっかー。じゃあ今度聞かせてくださいよ」
「…お前もな」
途端に弾けるような笑顔になる、その表情の豊かさに驚かされた。
今までもキュヒョンの笑顔は見てきたけれど、これはまた格別だなとちょっと得した気分になる。
それ以来何かと二人で行動することが多くなった。
歌うこと自体が好きだというキュヒョンの歌声をカラオケで初めて聴いた時も衝撃だった。
伸びのある素直な歌声は全然自分とは違うタイプなのに、ハーモニーを奏でると不思議なくらいに馴染んで気持ちがいい。
いつからかバイトを辞めていく仲間に二人で作った曲をプレゼントするというのが送別会の恒例の一つになっていた。
思えば不思議な縁としか言いようがない。
自分の作る曲をキュヒョンは本当に楽しそうに奏で、歌う。
ストリートで歌い始めた時に決めたユニット名は「supple」
サプリメントのように心が疲れた時や栄養が足りない時に補えるような存在になれたらいいと、そう名付けた。
「supple」は自分にとっては奇跡のようなものだ。
歌いたい、奏でたい、一緒に居たい。
それはいつしか「希望」から「願い」に変わる。
最初からキュヒョンには歌うこと以外の夢があった。
今までもキュヒョンの笑顔は見てきたけれど、これはまた格別だなとちょっと得した気分になる。
それ以来何かと二人で行動することが多くなった。
歌うこと自体が好きだというキュヒョンの歌声をカラオケで初めて聴いた時も衝撃だった。
伸びのある素直な歌声は全然自分とは違うタイプなのに、ハーモニーを奏でると不思議なくらいに馴染んで気持ちがいい。
いつからかバイトを辞めていく仲間に二人で作った曲をプレゼントするというのが送別会の恒例の一つになっていた。
思えば不思議な縁としか言いようがない。
自分の作る曲をキュヒョンは本当に楽しそうに奏で、歌う。
ストリートで歌い始めた時に決めたユニット名は「supple」
サプリメントのように心が疲れた時や栄養が足りない時に補えるような存在になれたらいいと、そう名付けた。
「supple」は自分にとっては奇跡のようなものだ。
歌いたい、奏でたい、一緒に居たい。
それはいつしか「希望」から「願い」に変わる。
最初からキュヒョンには歌うこと以外の夢があった。
「歌っていけたらいいなとは思うけれど実際には難しいじゃないか。だから俺は教師の道を選ぼうと思ったんだよね」
ストリートで歌い始めるよりも前に。
「supple」で歌い始めるよりも先に。
そう言った彼の言葉はずっとこの胸にある。
そして実際に大学のカリキュラムもしっかり熟し、バイトも続け、音を紡ぎながらキュヒョンは確実に現実的な道を歩いている。
このままじゃいられない。
それでもこれを手放したくはない。
もう、こいつ意外にはあり得ない。
葛藤はいつでも胸にある。
「supple」で歌い始めるよりも先に。
そう言った彼の言葉はずっとこの胸にある。
そして実際に大学のカリキュラムもしっかり熟し、バイトも続け、音を紡ぎながらキュヒョンは確実に現実的な道を歩いている。
このままじゃいられない。
それでもこれを手放したくはない。
もう、こいつ意外にはあり得ない。
葛藤はいつでも胸にある。