【13日目】
窓の外の流れる景色を眺めるともなく見ていると、隣の運転席から派手な溜息が聞こえてきてそちらに視線を向ける。
「本当にこれでいいの?」
「…うん。迷惑かけてゴメン。逃げるみたいで申し訳ないけど…」
「…うん。迷惑かけてゴメン。逃げるみたいで申し訳ないけど…」
最初から二週間の約束だった。
それでよかった。
だから決めてたんだ。
それ以上はここに居られない。
それでよかった。
だから決めてたんだ。
それ以上はここに居られない。
「逃げるみたいじゃなくて、逃げてるよな?」
「…そうだね」
「まぁ…そうするってことも知ってたから今更言える義理でもないけど」
「うん、ごめん」
「…そうだね」
「まぁ…そうするってことも知ってたから今更言える義理でもないけど」
「うん、ごめん」
前を見たままのソンミンがもう一度小さく息を吐きだす。
今日「鍵」を置いて出ていくつもりだったのはシウォンの依頼を引き受けた時に決めていたし、決まっていた。
自分の我儘にソンミンや探偵事務所のみんなを巻き込んでしまったのは本当に申し訳ない気持ちだけれど。
それでも、これでやっと自分の中の区切りが付けられる。
予想外のことがありすぎて、区切りはついてもまだ多少の未練はあるのだけど。
それは時間がどうにかしてくれるだろう。
空港前のロータリーに滑り込んだ車が停車するとキュヒョンはシウォンの家へ来た時と同じボストンバックを抱えて降りる。
今日「鍵」を置いて出ていくつもりだったのはシウォンの依頼を引き受けた時に決めていたし、決まっていた。
自分の我儘にソンミンや探偵事務所のみんなを巻き込んでしまったのは本当に申し訳ない気持ちだけれど。
それでも、これでやっと自分の中の区切りが付けられる。
予想外のことがありすぎて、区切りはついてもまだ多少の未練はあるのだけど。
それは時間がどうにかしてくれるだろう。
空港前のロータリーに滑り込んだ車が停車するとキュヒョンはシウォンの家へ来た時と同じボストンバックを抱えて降りる。
「本当にありがとう。ソンミニヒョン、元気でね」
「お前も。何かあったらすぐ連絡しろよ」
「うん。大丈夫だよ、俺は」
「お前も。何かあったらすぐ連絡しろよ」
「うん。大丈夫だよ、俺は」
ソンミンが諦めたように微笑んだのに微笑み返すと、一歩。
やっと自分の一歩が踏み出せた気がした。
やっと自分の一歩が踏み出せた気がした。
休日の朝はいつもよりゆっくりと起き出す。
それが一番の贅沢で休日の醍醐味だ。
部屋を出て、違和感に気づく。
何故だかわからない胸騒ぎがした。
リビングのドアを開けてコンロの前に立つキュヒョンの姿がないことにとてつもない焦燥感を覚える。
違和感の正体はこれか。
二週間前はこの風景が当たり前だったのに、今はただキュヒョンが居ない事に違和感しかないのだ。
それが一番の贅沢で休日の醍醐味だ。
部屋を出て、違和感に気づく。
何故だかわからない胸騒ぎがした。
リビングのドアを開けてコンロの前に立つキュヒョンの姿がないことにとてつもない焦燥感を覚える。
違和感の正体はこれか。
二週間前はこの風景が当たり前だったのに、今はただキュヒョンが居ない事に違和感しかないのだ。
「キュヒョン?」
窓から入ってくる柔らかい陽射しとは対称的なほどシンと冷えた空気にその名前が溶けて消える。
テーブルの上には大きめの封筒に入った「報告書」とその上にメモが置かれていた。
そしてそのメモ紙を押さえるように置かれていたのは…。
テーブルの上には大きめの封筒に入った「報告書」とその上にメモが置かれていた。
そしてそのメモ紙を押さえるように置かれていたのは…。
「これ…」
キュヒョンのペンダント。
【シウォンさん 「鍵」をお返しします。報告書があなたの会社にとって大事な「鍵」になりますよう。 これで依頼調査終了です。ご迷惑をお掛けしてすみません。この鍵があなたの人生に幸運をもたらしますように キュヒョン】
「どういうことだ…?」
封筒の中の資料にざっと目を通してソンミンに電話をかける。
ほどなくして出た相手はシウォンの話に慌てたように「今すぐにそちらに向かいます」と告げて電話を切った。
あとは身内でもあるし、何かと顔の利くヒョクチェにだけは話しても大丈夫かと同じように呼び出す。
椅子に腰を降ろして今起きていることを整理しようとしてみるが一人では上手くいきそうになかった。
確かにこの内容が事実なら、会社の鍵であることは間違いない。
けれどこちらが依頼した「鍵」はこんなことではないのだ。
細いチェーンを持ち上げる。
忘れて行ったわけではないだろう。
いつでも身に着けていたものだ故意に置いていったとしか考えられない。
何故?
自分の顔の前で揺れているペンダントトップの小さなチャームはロケットになっているようだ。
掌に乗せてじっくりと眺めるとツタの模様だろうか、美しい彫刻の一部にシウォンは目を瞠った。
まるで彫刻に隠されるように刻んであるのは家紋だった。
それも自分の。
そしてその彫刻と似た装飾をされたものを思い出す。
ほどなくして出た相手はシウォンの話に慌てたように「今すぐにそちらに向かいます」と告げて電話を切った。
あとは身内でもあるし、何かと顔の利くヒョクチェにだけは話しても大丈夫かと同じように呼び出す。
椅子に腰を降ろして今起きていることを整理しようとしてみるが一人では上手くいきそうになかった。
確かにこの内容が事実なら、会社の鍵であることは間違いない。
けれどこちらが依頼した「鍵」はこんなことではないのだ。
細いチェーンを持ち上げる。
忘れて行ったわけではないだろう。
いつでも身に着けていたものだ故意に置いていったとしか考えられない。
何故?
自分の顔の前で揺れているペンダントトップの小さなチャームはロケットになっているようだ。
掌に乗せてじっくりと眺めるとツタの模様だろうか、美しい彫刻の一部にシウォンは目を瞠った。
まるで彫刻に隠されるように刻んであるのは家紋だった。
それも自分の。
そしてその彫刻と似た装飾をされたものを思い出す。
「まさか」
ロケットを開くと、中に折り返されたように鍵先が収められていて、鍵先を出して閉じるとそれは「鍵」になった。
細工した様子はないから元からこういう仕掛けになっていたようだ。
リビングを出て書斎に向かう。
会社から持ち帰っていた卓上の箱には四隅ツタらしき装飾が施されていた。
鍵を鍵穴に差し込んで回すと、当然のように解錠され、ゆっくりと蓋を開けると中はガラクタとしか思えない物ばかりが入っていて、これが父のものとは到底思えなかった。
数枚の紙きれ、キャラクターのマスコットキーホルダー、小さな貝殻。
カタカタと音を立てていたものの正体は紙で包まれたマーブル模様のビー玉だった。
そしてそれを包んでいた紙に覚束ない字で「キュヒョナのおほしさま」そう書かれていた。
細工した様子はないから元からこういう仕掛けになっていたようだ。
リビングを出て書斎に向かう。
会社から持ち帰っていた卓上の箱には四隅ツタらしき装飾が施されていた。
鍵を鍵穴に差し込んで回すと、当然のように解錠され、ゆっくりと蓋を開けると中はガラクタとしか思えない物ばかりが入っていて、これが父のものとは到底思えなかった。
数枚の紙きれ、キャラクターのマスコットキーホルダー、小さな貝殻。
カタカタと音を立てていたものの正体は紙で包まれたマーブル模様のビー玉だった。
そしてそれを包んでいた紙に覚束ない字で「キュヒョナのおほしさま」そう書かれていた。
「キュヒョナ…キュヒョン…?」
これはキュヒョンものだったということか?
彼がカギを持っていた事実から、同じ名前の誰かだとは考えにくい。
それなら「鍵」を返すという表現はおかしい。
そもそも彼は一体この箱とどういう繋がりがあるというのか。
何にしても彼に話を聞く以外に手掛かりはない。
けれど、この家にはすでにキュヒョンの気配は何一つ残っていなかった、このペンダント以外は。
彼がカギを持っていた事実から、同じ名前の誰かだとは考えにくい。
それなら「鍵」を返すという表現はおかしい。
そもそも彼は一体この箱とどういう繋がりがあるというのか。
何にしても彼に話を聞く以外に手掛かりはない。
けれど、この家にはすでにキュヒョンの気配は何一つ残っていなかった、このペンダント以外は。