【ミンホ】心音メロディー 4 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

「ユノ?」
「あ。ごめん。ぼーっとしてた」
「それはいつものことでしょ」
「酷いなぁ」
 
チャンミンは相変わらず仕事のない日には誘い出してくれる。
断ることもできるはずなのに、やっぱり一緒に居ると楽しくて自分でもどうしらたいいのか分からないんだ。
待ち合わせのカフェからチャンミンのお勧めの店に移動するのに並んで歩いていると、向かいから歩いてくる見覚えのある顔に、まいったなぁ…と他人事のように考えた。
 
「久しぶりだな」
「…」
 
以前コンビを組んでいた相方。
よくよく考えたら、公園で一人でいた時も、たまたま顔を合わせてしまった彼が俺に対する当てつけとか嫌味を言いだして、見るに見かねたボアが成り行きで相方になってくれたんだっけ。
それはそれで感謝すべきかな。
また新しくコンビを組んだのだと言った後から、彼はまたなんだか嫌味っぽいことを言いだした。
でも、もう、俺は前みたいに悔しいとも思わない。
だって、もう「元相方」だった彼に未練なんてないし、今なら自分らしくやっていけることにも多少の自信はついた。
それに今なら彼が俺に期待していてくれたからこそ、今でもこうしてうまくいかなかったことが悔しくてぶつけてくるのだと理解も出来る。
言いたいだけ言わせておけばいいんだ。
だから、俺はただ黙って聞いていた。
笑みすら浮かべて。
 
「…ちょっと…。さっきから聞いてればなんなんですか。勝手な事ばかり…。ユノ。なんですか、この人」
「俺の元相方」
「なんだよ、こいつ。お前の新しい相方か?」
 
彼の目がチャンミンを捕える。
 
「違うよ。…関係ない。だからお前も…」
 
自分でも不思議なくらいに落ち着いた気分だ。
 
「早く消えて。俺の前から」
 
自分の口元が弧を描く。
そんな俺を見たことがないからか少し驚いたような顔をして、気まずそうに去っていった。
うん。今まで自分に自信がなくてついつい言われるままだったから、向こうだってちょっと嫌味の一つや二つは言いたくもなったんだろうな。
そこはちょっと申し訳ないなとも思う。
でも。
どうでもいいと思ったら、こんなに楽なんだ。
なんであんなに囚われていたんだろう。
 
「ユノ」
 
チャンミンに呼ばれて、俺はようやく彼の顔を見る。
 
「…関係ないって、なんですか?」
「関係ないから、関係ないって言ったんだ。このことにチャンミンは全く関係ない。君が怒る必要なんてない」
「違うでしょ。友達がバカにされて怒らない訳がないでしょう!?」
 
友達。
そう。
友達でいればよかった。
チャンミンの事をただの友達で括れればよかったのに。
 
「関係、ないよ」
「ふざけないでください、ユノ!」
 
チャンミンの声が耳に届いた瞬間に駈け出していた。
最初から関係のない人だったと思えば辛くなんてない。
あのままで終わっていればよかったのに。
電車で助けられた時のままで。
神様はやっぱり俺にいい事はくれないんだ。
 
 
 
「関係ないって、なんだよ…」
 
ユノの背中が見えなくなってようやく口から零れる。
あの背中を追いかけられなかった理由。
背中全体で拒否しているくせに…
 
「関係ないなら、なんで泣きそうな顔してんだよ、あんた…」
 
なんだか急に腹立たしい気分になる。
やたらとユノを過小評価して嫌味を言っていた元相方とやらにも。
いきなり壁を作ってしまったユノにも。
そしてなにより、今、何もできない自分に。
 
「くそっ…!」
 
携帯を握りしめて、大通りへ出るとタクシーを拾う。
目的地を告げて、何度かユノの携帯にかけてはみるけど、応じる気配はない。
自分の中の苛立ちを落ち着けるように、ぐっと目を閉じる。
こんな時になって、やっと僕は自分が彼のことを何も知らないのだと実感する。
何も知らない。
けど、それでも…。
 
結局、僕が自分の目的を達成できそうな最短距離に居るのは彼だけだ。
店に着くと、乱暴に開けたドアの音に中に居た数人が驚いて振り返った。
その中に目的の顔を見つけて、近づくと周りの人間が潮が引くようにロッカールームから出ていく。
後からその時の事を「殺気が服をきて歩いてるみたいだった」とそこに居たホスト全員に言われたけれた。
 
「ちょ…ちょっと!チャンミニヒョン!?そんな人を殺してきたみたいな顔で近づかないでよ!怖いからっ!!」
「テミン…ユノの住所教えろ」
「…やーだよ」
「テミンっ!」
 
ふぅ、と一息ついてテミンは自分の髪をくしゃりと混ぜる。
 
「…チャンミニヒョンは違うかなって思ったんだけどな」
「何が!?さっぱり分からないんだけど!?」
 
寂しそうに笑ってテミンは顔を上げる。
 
「あのさ。もう放っておいて、ユノヒョンの事」
 
全く、どいつもこいつも。
どうして的確な言葉を寄越さないんだ。
 
「それが出来るならしてるんだよ!僕は自分が振り回されるのなんて死ぬほど嫌なんだからな!」
 
僕はユノの事が好きなんだと思う。
例え、何も知らないのだとしても。
あの笑顔は知っているし、素直で可愛くて、顔だって実はとんでもなく綺麗な造作をしていることは知っている。
恋愛に年上だとか、年下だとか、男だとか女だとか、そんなものが絡んでたたまるかクソ喰らえってんだ! 
ただ理屈抜きで、どうしようもなく傍に居たくて。
どうしようもなく愛しいのだから。
 
「テミン。あの人は一体何を抱えてるんだよ」
「…ユノヒョンはね。ちょっと前まで酷い対人恐怖症だったんだ。でもそれもきっかけはあったんだよ?それまでは屈託なく笑って本当にフレンドリーな人だった。多分人間が好きだったんだと思う。色々あったから仕方がないと言えば仕方がないんだけど。それは僕の口から話すことじゃないし、ヒョンの口からも語らせたくはない。でも、本当にそうなっても仕方がないくらいの事があったんだよ。ユノヒョンはそれでも必死に自分と戦って今があるんだ。あの人がやたら内向的なのはその後遺症みたいなものかな。だからどんなに褒め称えたところでその言葉を信じないし、自分には価値なんてないと思ってるところがある。それでも誰かを笑顔にしたいって芸人ってところを選んだんだ」
 
テミンは煙草を咥えると、火を点けて吐き出した紫煙を目で追いかけるように視線を向けた。
 
「それでも最近は自分からボアさんに話しかけたりしてたから、随分自分の壁を壊したんだなって思ってたよ。まぁ、ボアさんの場合パーソナルスペースの詰め方が上手なんだろうなって思うところもあったけど。極めつけはチャンミニヒョンだったんだよね」
 
煙草を持った手がこちらに向けられる。
 
「僕たちとユノヒョンが偶然あった時にチャンミニヒョンが眼鏡に触ったでしょ?眼鏡はね。ユノヒョンにとってシールドなんだ。対人恐怖の壁を壊すのに苦労したけど、やっぱり多少の恐怖は抜けなくて自分で作った壁が眼鏡って訳。だからヒョンは視力はそんな悪いわけじゃないのに眼鏡をかけてるんだ。普通知らない人とか会って間もないような人に眼鏡なんて触られるとね、過呼吸おこしちゃったり、軽くパニック状態になっちゃう。なのにチャンミニヒョンは平気だった」
 
だったらどうしてユノは僕から逃げたんだ?
一体、僕の何を怖がってる?
ユノが抱えているものはとんでもなく大きくて、それは僕には計り知れないものだって分かっただけだ。
 
「テミン。家、教えろ」
 
ふっと諦めたように笑ったテミンは辺りを見回して、見つけた紙切れに何かを書きつけて寄越す。
 
「あれだけ、手は出さないでねって言ったのに」
 
楽しそうにそういうから
 
「まだ手は出してないだろ」
 
そう笑って返した。
僕がユノの壁に触れることが出来たのなら。
…あとは壊すだけだ。